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2020年7月3日(金)
8301 : 銀行
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 日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない

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FRBのパウエルさん、マイナス金利に反対のワケ
編集委員 小栗太

小栗 太
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コラム
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2020/6/3 2:00
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「どうやらパウエルさんはマイナス金利が嫌いらしい」。最近、こんな報道をよく耳にします。パウエルさんとは、米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長のことです。FRBは9~10日に次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く予定です。

パウエルFRB議長はマイナス金利政策に対し、「有用でも適切でもない」という姿勢をとっている(3月の記者会見で)=ロイター

パウエルFRB議長はマイナス金利政策に対し、「有用でも適切でもない」という姿勢をとっている(3月の記者会見で)=ロイター

新型コロナウイルスの感染拡大から米国の経済を守るため、FRBは3月に世の中の金利の基準になる政策金利を0%にするゼロ金利政策を始めました。資金繰りに苦しむ米国の企業がお金を借りやすくするためです。するとトランプ米大統領はさらに経済を押し上げようと、日銀や欧州中央銀行(ECB)が実施しているマイナス金利政策の導入をFRBに求めました。ところがパウエル議長の返答はこうでした。「それは有用でも適切でもない」。日欧が採用するマイナス金利政策。FRBはなぜ強く反対したのでしょうか。

マイナス金利政策とは、銀行が中央銀行にお金を預ける際の金利(政策金利)をマイナスの金利にする政策です。銀行は中央銀行にお金を預けると逆に金利を取られるため、企業や個人に積極的に貸し出すようになるというわけです。仕組みを聞けば、効果的なコロナ対策のようにも思えます。でも通常は実施しない異例の政策。やはり問題点もたくさん抱えています。

FRBが反対したのは、マイナス金利政策が大きな効果を見込める半面、副作用を招く恐れも大きいからです。とくに心配するのが、銀行の経営が悪化することです。

政策金利は市場金利の基準になるので、マイナスになれば、企業への貸出金利や個人の住宅ローン金利、国債利回りなど様々な金利が下がります。資金繰りに苦しむ企業や個人が助かる半面、割を食うのが銀行です。銀行は貸出金利と預金金利の差(利ざや)が主な収益源ですが、貸出金利が0%近くに下がっても、預金者は預けたお金が減ってしまうマイナス金利に強く反対するため、預金金利を大きく下げることはできず、利ざやが縮みます。国債の運用で賄おうとしても、国債利回りも0%やマイナスに下がってしまいます。

実際、マイナス金利政策を採用している日本では、すでに深刻な影響が表れています。日本経済新聞が3月に全国の地方銀行と第二地方銀行を対象に実施した調査では、収益の悪化で約2割の銀行が支店網を縮小することが分かりました。マイナス金利が長引けば、経営体力の弱い地域金融機関から経営がどんどん悪化していきます。銀行の経営が悪くなれば、コロナ危機で最もお金が必要な企業や個人への貸し出しが滞ってしまいます。

パウエル議長は感染第2波を避けられれば「米国の経済は7月から回復に向かう」と期待していますが、その前提条件として「銀行部門に耐久力がある」ことを挙げています。過去の大恐慌やリーマン・ショックでは、金融機関の破綻で世の中にお金がうまく回らなかったことが経済の回復を遅らせる原因になりました。だからこそ銀行の経営を悪化させるマイナス金利政策は「現時点で適切な政策と考えていない」と訴えるわけです。

もう一つ、パウエル議長がマイナス金利政策に反発する裏には、米国特有の事情もあります。個人資産の預け先が預金中心の日欧と違い、米国では短期国債で運用するMMF(マネー・マーケット・ファンド)が4.7兆ドル(約500兆円)規模と広く利用されていることです。日欧は、銀行が預金金利がマイナスになるのを抑えてくれますが、MMFの場合は市場金利である短期国債の利回りがマイナスになることを防げません。大切な資産の預け先であるMMFが減ったら、米国社会は大混乱に陥りかねないわけです。

トランプ米大統領はFRBへの圧力を強めている=AP

トランプ米大統領はFRBへの圧力を強めている=AP

それではなぜトランプ大統領はマイナス金利を要求するのでしょうか。ツイッターでは「ほかの国がマイナス金利の利点を得ているのであれば、米国もそのギフトを受け取るべきだ」とつぶやきましたが、理由は定かでありません。市場関係者の間では「コロナ対策の財政負担を減らすために国債利回りを下げたいのでは」「ドル安に誘導してコロナ後の輸出回復を手助けしてほしいのでは」などと様々な臆測が出ています。

金融政策に詳しいBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんは「マイナス金利政策の弊害を考えれば、FRBが導入する可能性はほぼゼロに近い」と指摘しますが、はたして結果やいかに。

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