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10万円給付、手書き申請を自動処理 AI・ロボ活躍

新型コロナ
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2020/5/25 2:00
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10万円給付金の申請書を自動処理する製品・サービスが自治体に広がっている

10万円給付金の申請書を自動処理する製品・サービスが自治体に広がっている

日経クロステック

新型コロナウイルス対策で火の車になっている自治体の現場を救え――。膨大な書類処理の効率化支援策を打ち出すIT(情報技術)企業が相次いでいる。人工知能(AI)を組み込んだ光学式文字読み取り装置(OCR)である「AI OCR」の技術を持つ企業や、定型のパソコン作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを提供する企業だ。

■AI OCRで申請書の全項目読み取り

政府は新型コロナの緊急経済対策として、国民に一律10万円の「特別定額給付金」を配る。その受付窓口は自治体が担う。そこでAI OCR企業は、職員が申請書類の内容をパソコン入力する手間を省き、AI OCRの読み取り結果を確認・修正だけをすれば済むように支援する。

AI OCRソフト「AIRead(エーアイリード)」を手掛けるアライズイノベーション(東京・中央)は5月11日、特別定額給付金の申請書の読み取りに特化した「AI OCR(AIRead)特別定額給付金申請書 OCR読取パック」の提供を始めた。AI OCRサービス「Tegaki(テガキ)」を提供するCogent Labs(コージェントラボ、東京・港)も4月30日、申請書の内容をTegakiで自動的に読み取れるようにした。いずれも申請書の全項目を、手書き文字を含めて読み取れるようにしている。

OCR用の給付金申請書

OCR用の給付金申請書

Tegakiによる読み取り結果(一部)

Tegakiによる読み取り結果(一部)


申請書をAI OCRサービス「Tegaki」で読み取る(出所:Cogent Labs)

AI OCRを手掛ける企業が特別定額給付金の申請書を読み取る製品やサービスを相次ぎ提供している背景には、政府が申請方法に紙文書(郵送申請)を採用した点が大きい。マイナンバーカードを使ったオンライン申請も可能だが、マイナンバーカードの交付率は4月1日時点で16%にすぎない。

紙の申請書の受付業務については、職員が書類の内容をパソコンに入力する作業を人手で進めていくと想定される。自治体の職員の多くがオフィスの一角に集まる「密」な状態が起こりやすくなり、職員が新型コロナに感染するリスクも高まってしまう。

AI OCRを使うと、紙の申請書に住民が手書きした文字を高い精度で読み取って、データに変換できる。手入力の手間を省けるわけだ。

特別定額給付金を所管する総務省は申請書の見本を示しているため、AI OCR提供企業は申請書の読み取るべき項目などをあらかじめ設定したAI OCR製品やサービスを提供し始めた。「自治体のオフィスで密な状態になるのを避けながら、職員のデータ入力の手間を減らし、給付までの時間を短縮できるよう支援する」(Cogent Labs)ことが狙いだ。

Cogent LabsのTegakiは、インターネットとは隔離された自治体専用のネットワーク「LGWAN(総合行政ネットワーク)」を介したソフトの期間貸し(ASP)サービスでも利用できるようにしている。具体的には京都電子計算(京都市)がTegakiを採用したうえでLGWAN-ASPサービス「AI手書き文字認識サービス」を自治体向けに提供している。このサービスで、特別定額給付金の申請書を自動的に読み取れるようにした。

特別プランを設けて、最短で申し込み当日から利用できるようにする。「業務効率化につなげられるように導入支援も手厚くしていく」(Cogent Labs)考えだ。また申請書の数が少ない自治体でも利用しやすくするため、申請書の数などに応じた従量課金の料金でも利用できるようにする。

一方のアライズイノベーションの場合は、自治体のパソコンにインストールしたうえで、スキャナーや複合機と組み合わせて使うソフトである。購入後3カ月間は読み取り枚数に制限をかけないサブスクリプション(定額課金)型で提供する。

これにはAI OCRに加えて、読み取ったデータを加工したり変換したりするETL(抽出、加工、ロード)ツールも含めている。ライセンス費用(税別)はパソコン1台目が80万円、2台目以降は40万円で、従来価格の6分の1に設定したという。「使う予定の未記入の申請書をPDFで当社に事前に送ってもらえば、1回限り無償で読み取り設定をする」(清水真社長)

■RPAで後処理を自動化

自治体への支援策はRPAツールを提供する企業も相次ぎ打ち出している。「WinActor(ウィンアクター)」を手掛けているNTTデータや、「BizRobo!(ビズロボ)」を提供しているRPAテクノロジーズ(東京・港)は、自社が手掛けるRPAツールに、AI OCRを組み合わせて自治体支援策を展開している。2社に共通するのはAI OCRで読み取った申請書の内容を基に、「申請者に郵送する文書を作成する」といった読み取り後の処理をRPAで自動化できるようにした点だ。

NTTデータは5月1日、同社が提供しているAI OCRサービス「NaNaTsu AI-OCR with DX Suite(ディエックス・スイート)」をWinActorやRPAのeラーニングサービスと合わせて無償提供すると発表した。自治体に5月1日から7月31日まで無償提供する。申し込みは6月30日まで受け付ける。

NTTデータが無償提供するAI OCRサービスとRPAを適用する前の業務と後の業務の違い(出所:NTTデータ)

NTTデータが無償提供するAI OCRサービスとRPAを適用する前の業務と後の業務の違い(出所:NTTデータ)

NaNaTsu AI-OCR with DX Suiteは2019年10月から提供を始めたLGWAN-ASPサービスである。AI OCRエンジンにはAI insideの「DX Suite」を採用している。NTTデータはこのサービスをWinActorと合わせて無償提供する。

併せて、AI OCRとWinActorを利用しやすくする設定ファイルや、業務を円滑に進めるための申請書類の帳票レイアウトも無償で提供する。具体的には、総務省が見本として示している申請書を読み取れるようにするNaNaTsu AI-OCR with DX Suite用の帳票定義ファイルを提供する。

WinActorで自動化するパソコン作業の設定データである「シナリオ」のサンプルも提供する。「申請データを申請受付用のファイルに入力する」「AI OCRを使って申請書の内容を読み取る」「申請受付ファイルと、別に用意した給付台帳ファイルの内容を、自動的にチェックする」「金融機関への振り込みに向けた処理を進める」などだ。自治体職員は必要に応じてシナリオを変更できる。

さらに受け付けた申請書がどの住民から届いたものなのかをすぐに識別できるように、識別コードを印刷できる申請書の帳票レイアウトのデータも提供している。無償にもかかわらず手厚い内容が奏功して、「発表から2日間で約100の自治体から申し込みや問い合わせがあった」(NTTデータ)という。

■中小企業向け協力金、愛媛県を支援

AI OCRとRPAを使い、既に自治体の支援に乗り出しているのがRPAテクノロジーズだ。5月1日、愛媛県をBizRobo!とAI OCRサービスで支援すると発表した。

支援の目的は「新型コロナウイルス感染症対策推進事業者協力金」などの受付業務の効率化である。同協力金は愛媛県が、「フィルムや間仕切りを設けて飛沫を防ぐ」といった感染拡大の防止策を講じている飲食店・小売店を手掛ける中小企業に向けて独自に県が支給するものだ。

支援の主体は、RPAテクノロジーズと、グループ会社でAI OCRサービスを組み込む「事務ロボ」を手掛けるオープンアソシエイツ(東京・港)、伊予鉄グループ(松山市)のIT子会社である伊予鉄総合企画(同)の3社だ。各社は共同して、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)拠点で、AI OCRとRPAを組み合わせて、愛媛県庁の業務の一部を代行している。

BPO拠点での一連の流れはこうだ。まず愛媛県から協力金の申請書のPDFで受け取ると、事務ロボに申請書類の手書き文字を認識させてテキストデータを作成する。このテキストデータをBPO拠点の担当者が確認し、誤字などを修正。さらに、このデータとBizRobo!を使って、中小企業の名前や住所などを含めた送付文書の文面データを自動作成する。認識したテキストデータを含む編集ファイルと合わせて愛媛県に納品する。

RPAテクノロジーズなどは AI OCRとRPA を組み合わせて活用することで、処理の効率化を図る考えだ。BPOによる分業によって、県の職員が申請書類の審査や中小企業からの相談に専念できるようにしていくという。一連のBPOの仕組みで、最大1万5000件の申請書類を処理できると見込む。

親会社のRPAホールディングスによると、他の自治体や、自治体を支援する企業から多くの問い合わせがあるという。今後は他の自治体にも各種の申請書類の読み取り作業や読み取り後作業の自動化を広げていきたいとする。

このほか、RPAツール「UiPath(ユーアイパス)」を手掛ける米ユーアイパスの日本法人が京都電子計算と連携している。5月11日、京都電子計算はUiPathを使ったRPAの開発や運用管理ができるLGWAN-ASPサービス「自治体向けRPA配信サービス」の提供を始めた。

京都電子計算は「RPAの導入時に必要な管理サーバーの構築が不要で、短期間で始められる」とメリットを説明する。ユーアイパス日本法人は「京都電子計算が提供するAI手書き文字認識サービスといった他のLGWAN-ASPサービスと組み合わせて、自動化できる」としている。

新型コロナ感染拡大に伴う営業自粛により、家計が厳しい家庭や事業運営が難しい中小企業は多い。給付金や協力金を迅速かつ効率的に届けるため、AI OCRやRPAといったデジタル技術の活用が自治体で広がりそうだ。

(日経クロステック/日経コンピュータ 西村崇)

[日経クロステック2020年5月18日付の記事を再構成]

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