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【製薬大手】スイスのロシュ傘下。がん領域など新薬候補は充実。

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不遇の感染症薬、一躍エース 変わる製薬の評価軸

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2020/5/13 2:00 (2020/5/13 5:18更新)
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新型コロナ禍の影響で製薬会社の「S」への取り組みへの関心が高まっている=ロイター

新型コロナ禍の影響で製薬会社の「S」への取り組みへの関心が高まっている=ロイター

新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発に取り組む製薬業界。これまで新興国の問題とみられていた感染症の世界的流行(パンデミック)をきっかけに、製薬会社の「評価軸」そのものを見直す動きが出始めている。新たなものさしは、ESGのS(社会)への貢献度だ。

■コロナ薬の開発、採算より社会意義

「事業の中心に感染症を据えている企業には価値があると注目している」。SOMPOアセットマネジメントの角田成宏責任投資推進室長はいう。

国内の製薬大手は近年、抗がん剤やアルツハイマー病などの精神疾患といった領域に注力してきた。こうした分野は有効な治療薬が少なく、開発に成功すれば患者のメリットは大きい。製薬会社にとっても、高い薬価がつくことが期待できる「もうかる薬」といえる。このため新薬の開発が進展するたびに株式市場での評価も高まる、というのが常だ。

その一方で、感染症の治療薬は多くの製薬会社で中核事業ではなくなっていった。感染症分野はエイズ・結核・マラリアといった「三大感染症」に限らず新興国を中心に問題となっており、ESG(環境・社会・企業統治)の「S」の観点から見た価値は高い。ただ「(高い薬価が望めないなど)経済的価値が低すぎるために、製薬会社の関心が集まりにくい状況にある」(SOMPOアセットの角田氏)という。

こうした中で起きた新型コロナのパンデミックは、感染症がひとたび世界に広がると経済的損失が計り知れないことを多くの投資家に印象づけた。「感染症対策で中心的役割を担えるのは製薬業界だけ」(三菱UFJ信託銀行の兵庫真一郎チーフファンドマネジャー)と確認されたことで、製薬会社がどれほど感染症対策に真剣に取り組んでいるかに投資家の注目が集まっている。

ある国内運用会社の運用担当者が注目するのは塩野義製薬(4507)だ。塩野義製薬は、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」など感染症分野での実績を積み重ねている。4月27日には新型コロナの予防ワクチンを開発すると発表。「感染症のスペシャリスト」(ゴールドマン・サックス証券の植田晃然アナリスト)との見方が強まっている。

国内で新型コロナ治療薬として初めて承認を受けた米ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」や、富士フイルムホールディングス(4901)の「アビガン」はもともと、それぞれエボラ出血熱や新型インフルといった別の感染症の治療薬だ。これらの治療薬について臨床試験(治験)を素早く進めたことで、両社は今回のコロナ禍で脚光を浴びることとなった。

新型コロナなど感染症対策を素早く進めるためには、製薬会社の短期的な利益を度外視してでも薬価を抑えることも求められる。「より脆弱な国や社会に住む人が(新型コロナの治療薬やワクチンを手に入れられないまま)置き去りにされてはならない」。「医薬品アクセス」の向上に取り組む国際非営利組織「アクセス・ツー・メディシン(ATM)財団」はこう訴える。

医薬品アクセスとは、新興国を中心に貧困や医療制度の課題を克服して医薬品が人々に利用されやすくなることを指す。ATM財団はグローバルに事業を展開している製薬大手20社を対象に、新興国での販売価格の決め方やガバナンス体制など医薬品アクセスへの取り組みを評価し定期的にランキングを作成している。

18年のランキングで首位になったのは英グラクソ・スミスクライン。実に6回連続で首位に入っており、研究開発への評価の高さが背景にある。2位はスイスの製薬大手ノバルティスで、19年にアフリカ事業の経営指標を売上高や利益から、医薬品アクセス向上や医療制度の確立に切り替えた。

日本勢では、武田薬品工業(4502)が5位にランクイン。医薬品の価格を途上国でも手に入れやすい水準に定めた点が評価された。8位に入ったエーザイ(4523)は熱帯地域で流行する感染症の治療薬を無償で提供している。

同財団の取り組みに賛意を表明していている投資家は100を超えており、運用資産額は合計で約1500兆円にのぼる。18年にATM財団に賛同した第一生命保険は「医薬品アクセスの取り組みがその企業の強みと相まって企業価値を向上させることに期待している」(責任投資推進部の本多勇一次長)とする。ATM財団は今回の新型コロナを受け「中期的に感染症対策についての研究開発に再投資する製薬会社はESGの観点から高い評価を得られる」と強調する。

製薬会社はもともと研究開発に時間をかけ新薬という形で成果を出す。新型コロナがあぶり出した感染症対策という課題についても、投資家は息の長い取り組みを求めている。三菱UFJ信託の兵庫氏は「社会的課題への取り組みと成長の両立に愚直に取り組む製薬会社は評価できる」と話す。

■「アビガン」増産体制の構築急ぐ

新型コロナウイルスを抑え込むため、国内外の製薬会社の研究開発に注目が集まるが、その進捗状況はどうなっているのか。時間との闘いであるため、既存薬の転用やこれまで培ってきた医療技術の応用による治療法など、様々な方法が試されている。

米ギリアドのレムデシビルは7日、国内初の新型コロナの治療薬として薬事承認された。富士フイルムのアビガンも5月中には承認される見通し。政府はアビガンの備蓄を2020年度中に現在の3倍にあたるコロナ患者200万人分に増やす方針で、富士フイルムは増産に向け宇部興産(4208)やカネカ(4118)などと「オールジャパン」体制でのぞむ体制を構築している。

重症状態の改善に期待されているのが、中外製薬(4519)が開発した関節リウマチ治療薬「アクテムラ」だ。重症の肺炎患者で起きている過剰な免疫反応を抑え、炎症を抑える効果があるとされる。親会社のロシュも含め国内外で治験を始め、中外薬は年内の製造販売申請を目指す方針だ。

武田は既存技術を応用し、コロナ向け新薬の開発を目指している。19年1月に6兆円以上の資金を投じて買収したアイルランドの製薬大手シャイアーが得意とする、病気から回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)療法」だ。コロナを排除する免疫(抗体)を取り出して重症患者に投与することで体内のウイルスを排除する。4月にはライバルでもある米CSLベーリングと治療薬開発で提携し、血液収集のネットワークを広げる考えだ。

米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、風邪のウイルスである「アデノワクチン」を活用してワクチンを開発し、9月にも治験を始めるとしている。21年早期に供給を始め、年産10億本ほどを生産する見込みだ。

こうした取り組みが評価され、関連企業の株価は市場全体に比べると堅調だ。ただ、売り上げ規模が数兆円にも達する製薬大手にとって、コロナ関連の新薬の業績への寄与度は大きくはなく、アナリストからはコロナ収束後の負担を懸念する声も出ている。

それでも対コロナ開発を通して得られたノウハウは他の新薬の開発にも生きるほか、予想できない社会・環境の変化への対応力を蓄積することにもなる。持続性の向上で、投資家にも長期的な恩恵をもたらしそうだ。

(ESGエディター 松本裕子、坂部能生、大鐘進之祐)

「みんなのESG」は日経ヴェリタスとの連動企画。世界的に関心が高まるESGについて、知っておきたい最新トレンド、投資マネーの動き、先進企業など様々な観点から取り上げます。

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