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2020年6月5日(金)
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米銀、不良債権増加の懸念 企業が融資枠に「駆け込み」

2020/3/17 0:43
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米銀の経営トップは資金繰り支援で協調(19年4月の米議会証言、ワシントン)=ロイター

米銀の経営トップは資金繰り支援で協調(19年4月の米議会証言、ワシントン)=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則】米大手金融機関が企業の資金繰り危機に警戒を強めている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、融資先企業の生産や販売が停滞しており、駆け込みで融資枠を活用する動きが広がっているからだ。大手8行は自社株買いの一時停止を決め、米連邦準備理事会(FRB)と共に企業を支える姿勢を前面に出す。だが、企業の信用力低下が止まらなければ融資は不良債権となり、損失計上が避けられない。

最大手JPモルガン・チェースなどが所属する業界団体「米金融サービシズ・フォーラム」は15日、大手8行が4~6月期まで自社株買いを停止し、個人や中小企業の資金繰り支援に取り組むと発表した。同日にFRBが利下げを決定したことに歩調を合わせ、企業の資金繰り不安を鎮める。異例の協調行動は米トランプ政権や米議会へのアピールに加え、米銀が業績の先行きを慎重に見始めたことを示す。

すでに融資の現場では緊張感が高まっていた。航空機大手のボーイングやホテル運営大手のヒルトン・ワールドワイドが融資枠の上限まで資金を引き出すなど、米企業が一斉に運転資金の確保に動き、銀行側も対応を迫られていたからだ。企業は業績悪化で融資契約が解除される「MAE(Material Adverse Effect)条項」に抵触するのをおそれ、前倒しの調達に動いた。低格付け債の発行が難しくなっていることも企業の背中を押している。

ブラックストーンやカーライル・グループといった大手買収ファンドが、投資先企業に融資枠の活用を指示しているとも報じられた。ブラックストーンは「投資先に対して全社的に引き出しを求めたことはない」と説明するが、ある米銀の担当者は同ファンドの投資先から最近、融資枠利用の連絡があったと明かす。かつて融資枠上限まで引き出した直後に、チャプター11(米連邦破産法11条)を申請した企業もあった。銀行側が企業の資金確保ラッシュを警戒するゆえんだ。

今後、融資先の債務不履行や経営破綻懸念が強まると、銀行は貸倒引当金の積み増しを迫られそうだ。特に金融界が警戒するのはシェールガス企業だ。産油国が協調減産で合意できず、原油先物価格が急落した。採算ラインを下回る1バレル30ドル前後で推移している。自社株買いの代わりに融資を増やし、最終的に不良債権の山になる――。これが米銀にとって最悪のシナリオだろう。

20年から新しい貸倒引当金基準(CECL)が適用となったことも重荷だ。新基準では今後発生しうる損失を合理的に予測し、前もって計上しなければいけなくなった。従来基準は損失がほぼみえてきた段階で計上していた。現時点で新型コロナの終息時期は誰にも分からず、原油価格の先行きも読みにくい。各行は引当額を巡って難しい判断を迫られる。

FRBは15日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、1.0%の大幅利下げに踏み切った。金融機関への貸出金利にあたる公定歩合の金利も引き下げた。銀行が企業や個人の資金需要を満たす助けとなる。一方、利下げは貸出金利の低下圧力につながる。米銀には今後、利ざや悪化と貸倒引当金の増加という二重苦が重くのしかかる。

米銀株はさえない。JPモルガン株は16日、一時19%安まで売られ、年初からの下落率も約4割に達している。バンク・オブ・アメリカ株も同4割安に沈む。調査会社ファクトセットによると、8行合計の自社株買い額は19年10~12月期の323億ドル(約3兆4200億円)に達し、11年以降で最高レベルに膨らんでいた。今後は自社株買いの停止で株価の下支え役を失う。再浮上のきっかけはみえない。

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