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手作業残る銀行に「RPAとアーム型ロボ」ブーム

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2020/2/4 2:00
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三菱UFJ信託銀行が導入したプリンターへの給紙などを自動化する仕組み。アーム型ロボットやネットワークカメラを組み合わせた

三菱UFJ信託銀行が導入したプリンターへの給紙などを自動化する仕組み。アーム型ロボットやネットワークカメラを組み合わせた

日経クロステック

「一連のパソコン作業のなかで、どうしても無くせない手作業がある。これをどう自動化していくか」。定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入している企業のなかで、こんな課題が浮上している。

この課題をアーム型ロボットやネットワークカメラを駆使して解決したのが三菱UFJ信託銀行だ。同行は4年前の2016年からRPAの社内普及を進めてきた。19年12月に、それまでRPAで自動化していたパソコン作業について新たにアーム型ロボットなどを採用し、プリンターの給紙などの手作業を含めて全自動化した。

同行に先がけ、りそな銀行が19年6月からアーム型ロボットを用いて入力作業などを自動化しており、導入ブーム到来とも言える状況になっている。

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■証跡は紙 無くせない印刷作業

三菱UFJ信託銀行が全自動にしたのは、定期預金や投資信託、信託商品などを利用している顧客の担当営業の情報を、ホストコンピューター上で変更する作業だ。三菱UFJ信託銀行は顧客ごとに営業担当者を割り当てており、ホストコンピューターで管理している。営業担当者が異動すると、別の担当者に名前を変更する必要があるため、変更作業は欠かせない。

この変更の処理は従来、各営業拠点で作業していた。その処理を17年3月に事務センター1カ所に集約。合計で年33万件に上る変更処理をRPAで自動化した。

しかし課題が残されていた。ホストコンピューター上で担当者の情報を変更する処理についてはRPAで自動化できていたが、専用のプリンターで変更結果を紙に印刷する作業が自動化できないでいた。担当者情報を変更した証跡は紙で残す必要があり、プリンターで印刷する作業は省けない。そこで事務センターの担当者が手作業で対応していた。

この手作業を自動化するために、アーム型ロボットやネットワークカメラを導入した。具体的にはプリンターに印刷用紙をセットしたり、印刷済みの用紙を取り出したりする給紙・排紙作業を自動化した。これにより1年でおよそ600時間分の手作業を自動化できると見込んでいる。

「証跡を残すやり方を見直すにも、ホストコンピューターを変更する必要があり膨大なコストがかかる。ロボットでこの手作業を自動化できないかと考えた」と同行の田中経太郎業務IT企画部業務ITソリューション室FinTech企画グループ課長は説明する。

■人と協働できるロボットを採用

特徴は、安全柵なしで人とともに作業ができるデンソーウェーブ(愛知県阿久比町)のアーム型ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を採用していること。COBOTTAは重さが約4キログラム、アームの長さが約35センチメートルと、産業用ロボットに比べて小型だ。

このCOBOTTAを、キヤノンの画像処理ソフトウエア「Vision Edition(ビジョンエディション)」やネットワークカメラと連携させて動かしている。ネットワークカメラはパソコンのディスプレーに表示されたホストコンピューターの画面を捕捉。画面には変更作業の進捗に応じて、プリンターへの給紙や排紙などの指示が出る。

ネットワークカメラがパソコンディスプレーに表示された画面を撮影する

ネットワークカメラがパソコンディスプレーに表示された画面を撮影する

その指示をVision Editionで画像として認識することで、COBOTTAがその指示通りに給紙や排紙の作業を自動でするようにしている。給紙するときには、いったんプリンターのトレーに紙を置いてから、トレーの奥へ静かに送り込み、用紙の上辺が印刷位置に当たるような配慮もしている。

システムの画面に給紙の指示が出ると、COBOTTAが印刷用紙の束の上から1枚だけを取って、プリンターのトレーに置く。印刷が終わり画面に排紙の指示が出るとCOBOTTAがプリンターのトレーとは別に用意した文書トレーに用紙を移す。COBOTTAのアームの先端には複数の吸着パッドが付いており、印刷用紙の平面を維持した形で吸着できるようにした。

プリンターにはトレーが上下2つあって、それぞれのトレーに1枚ずつ印刷用紙を置いてから印刷する。1件の変更につき、上下のトレーの紙それぞれに異なる内容を印刷するための仕掛けだ。システムの画面には上下のどちらに給紙するか指示が出るので、COBOTTAはその指示に合わせて給紙するように動く。

■しわや折り目を付けずに用紙を取る

三菱UFJ信託銀行の竹田博美業務IT企画部業務ITソリューション室FinTech企画グループ調査役は「印刷用紙の束の上から1枚だけを取るという動きを実現するのが難しかった」と苦労点を明かす。

当初はアームの先端に、紙の表と裏から挟んでつまめるようなハンドを付けて試した。しかし「束から1枚を取る動きを実現するのが難しかったり、取ることができても印刷用紙にしわや折り目が付いたりした。印刷用紙にしわや折り目が付くとプリンターの紙詰まりを起こす恐れがあったので、きれいなまま用紙を取るようにする必要があった」(竹田調査役)

そこで同行は、COBOTTAとVision Editionを組み合わせた装置の開発を担当した松浦電弘社(石川県野々市市)と連携して解決策を探った。松浦電弘社とはデンソーウェーブから紹介を受けて組むことになった。同社はロボットなどのハードウエアと、画像認識のソフトウエアを組み合わせたシステムインテグレーションなどを手掛けている。

印刷用紙にしわや折り目が付くのを防ぐため、COBOTTAの先端にハンドの代わりに吸着パッドを取り付けることにした。吸着パッドにしてからも「印刷用紙の束から2枚取ってしまうことがあった。どのようにして1枚だけ取れるようにするかが課題だった」と松浦電弘社の中尾圭志計測設計部計測設計課課長は振り返る。

試行錯誤の結果、COBOTTAの先端に複数の吸着パッドを取り付けて、しわや折り目が付かないように平面を維持したまま印刷用紙を取れるようにした。印刷用紙の束から1枚だけ取れるように、吸着パッドの一部から空気を吹き出すようにして2枚目以降の紙が吸着しない工夫を凝らした。1枚だけを取った後、すべてのパッドに紙を吸着させるようにアームの先端を傾ける工夫もした。

アーム型ロボットの先端に取り付けた吸着パッドが紙1枚を取った瞬間

アーム型ロボットの先端に取り付けた吸着パッドが紙1枚を取った瞬間

このほか印刷用紙の束を置く場所やプリンター、印刷した後に格納する文書トレーの位置をできるだけ近づけた。COBOTTAを効率よく動かしたり、COBOTTAや文書トレーなどをコンパクトに事務センター内に配置したりするためだ。結果として1.5人分のオフィスデスクのスペースに収められた。

印刷後の用紙を置く文書トレーは、COBOTTAを挟むように配置。そのうえで、トレーそのものに傾斜を付けることで2つある文書トレーの置き場をコンパクトに抑えた。文書トレーに傾斜を付けているので、COBOTTAが紙を置くと、文書トレー内で他の紙と自然にそろうようにもなっている。

■最初の試作は安全柵必要に

三菱UFJ信託銀行がロボットを使ってプリンターの給紙・排紙作業の自動化を検討し始めたのは18年春ごろだった。ある産業ロボットメーカーに試作を依頼したものの、産業用ロボットがベースになっていることもあり、数メートル四方のスペースや安全柵の設置が必要な仕組みができあがった。

実現に数千万円がかかる見込みもあり、田中課長が「もっとコストを抑えてコンパクトな仕組みができないか」と検討していたところ、同時期にデンソーウェーブがオフィスで人と協働できるアーム型ロボットのCOBOTTAを開発したと知る。そこで田中課長はデンソーウェーブに問い合わせて、18年6月から12月にかけてPoC(概念実証)に取り組んだ。

当初はCOBOTTAのアームの先端にカメラを付けて紙を取る方式を検討したがうまくいかなかったという。そこで開発者がアームを動かして動作を記憶させるCOBOTTAのダイレクトティーチング機能を採用した。

印刷用紙の束を1枚だけCOBOTTAが取れるように、当初は印刷用紙よりも厚い用紙などの使用も検討していた。しかし、最終的には一般の印刷用紙を使えるめどが立った。「COBOTTA専用の紙を、一般の印刷用紙とは別に購入する」手間や、「専用の紙ではない印刷用紙をセットしたことでロボットがうまく動かない」といった事態を無くせたわけだ。

その後19年秋から本格的に開発を始めた。3カ月の開発期間を経て、同年12月に稼働できた。開発コストは非公表だが、基幹システムを改修した場合に比べて、大幅にコストを抑えられたとみられる。社内では他の業務担当者から「部門内で残っている紙を扱う手作業を自動化できないか」といった問い合わせがFinTech企画グループに寄せられているという。

「社内にはまだアーム型ロボットが適用できそうな手作業があるとみている。今回の事例を動画で公開することで、新しい社内ニーズを発掘していきたい」と田中課長は見通しを語る。

(日経クロステック/日経コンピュータ 西村崇)

[日経クロステック2020年1月27日付の記事を再構成]

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