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点滴や錠剤を「貼り薬OKに」 米企業が新投与技術

日経産業新聞
2019/11/18 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

点滴や錠剤の形でしか使えなかった薬を貼り薬にし、患者の痛みや薬を飲む負担を軽くする――。米パスポートテクノロジーズ(カリフォルニア州)が薬の新たな投与技術を開発した。飲み忘れや誤えんを防げ、入院医療を在宅に切り替えられる。糖尿病やうつ病、統合失調症など幅広い病気に使える見通しだ。米国で2024年の発売を目指し、日本でも事業を展開する。

手のひらサイズの装置を肌に押し当てて使う

手のひらサイズの装置を肌に押し当てて使う

パスポートテクノロジーズは今年7月、日東電工から独立して創業した。事業化を目指すのは、皮膚から吸収させることが難しいタイプの薬を貼り薬に変える技術だ。テープ薬剤の大手でもある日東電工から関連する人員や特許を引き継いだ。

対象となるのは主に、ペプチドや核酸などの「中分子」や、たんぱく質などの「高分子」をベースとする薬だ。近年、画期的な新薬が相次ぎ登場しているが、これらの薬は油に溶けにくい性質がある。脂質を豊富に含む皮膚表面のバリアー(角質層)を透過できず、そのため点滴で投与している。

パスポートテクノロジーズの技術は、この限界を突破する可能性を秘める。手のひらサイズの小型装置とテープ状の薬を使って、使い方もシンプルにした。患者が自宅などで自ら使う。

テープ状の薬と装置に取り付けて使うフィラメント

テープ状の薬と装置に取り付けて使うフィラメント

まず、装置を上腕部などに押し当ててボタンを押す。肌と接触した部分の金属製フィラメントに瞬間的に大きな電流が流れて発熱する。この熱でフィラメントが当たった部分の皮膚の角質層が蒸発する。角質層に深さ20~50マイクロメートルの穴が数百個あく。フィラメントの温度は700度にも達する。ただ、電流は数ミリ秒しか流れず、熱が加わる深さもごく浅いため痛みを感じないという。

皮膚表面に穴をあけた後、その部分を覆うように1センチメートル角のテープ状の薬を貼る。すると薬の有効成分が角質層にあいた穴から体内に染み込み、やがて血管に達して全身に行きわたる仕組みだ。

装置は繰り返し使用でき、取り付け式のフィラメントとテープ状の薬は使い捨てにする。1回に投与できる薬の最大量は30ミリグラム程度。1日1回貼り替えるような使い方を想定する。

「用途に応じて薬を効かせる速度を調整できる」(パスポートテクノロジーズの安達博敏最高執行責任者)のも大きな特長だ。皮膚表面にあける穴の数や深さはフィラメントの設計次第で調整が可能だ。テープ状の薬に添加剤を加えることで、吸収速度を変えることもできる。

こうして薬をどのような速度で吸収させるかをコントロールできる効果も見込める。即効性が求められる薬は速く吸収させ、血中濃度を徐々に高めた方がいい薬はゆっくり吸収させる。痛みを感じさせない注射器を開発する試みもあるが、こうした吸収速度の調整は難しいとみられる。

同社の技術が医療や介護の現場にもたらすインパクトは大きい。点滴や注射でしか投与できなかった薬をこの方法で投与できれば、患者は痛みを感じなくて済む。自宅で治療しやすくなるのも大きなメリットだ。

錠剤を貼り薬に変えることで、薬を服用していることが医師や家族にも分かりやすくなる。統合失調症、認知症など、本人が決められた量の服薬を続けることが難しい病気でも効果を発揮しそうだ。物を飲み込む力が衰えた高齢者にも使いやすく、薬が胃などを通らず吸収されるため、内臓への負担が軽くなる。

まずは錠剤が販売されている片頭痛薬にこの技術を適用し、20年春に米国で治験を始める。数百人の患者で効果を試し、国の承認を得たうえで、24年にも装置とテープ状の薬をセットにした発売を目指す。

テープ状の薬の製造は日東電工に委託する考え。糖尿病薬などの治験にも取り組み、自社開発のほか製薬企業への技術供与も検討する。

日本でも使えるようにしていく。既に国内の製薬企業数社と技術評価を始めた。北海道大学とは認知症治療薬を開発するプロジェクトに取り組む。

この10月には、武田薬品工業から独立した創薬支援企業のアクセリードドラッグディスカバリーパートナーズ(神奈川県藤沢市)とも提携した。日本での顧客開拓を進めるとともに、アクセリードが持つ新薬候補物質に今回の技術が使えないかを検討する。製薬企業にとっては「過去に開発に失敗した薬を、投与方法を変えることで新薬として復活させられる可能性も出てくる」(アクセリード)。

パスポートテクノロジーズの藤沢朋行社長は「データビジネスや健康支援にも応用したい」と話す。テープ状の薬にセンサーや無線通信タグを取り付ければ、服薬の時刻や量をスマートフォンアプリで管理したり、血糖値を測定したりするといった応用も見えてくる。化粧品業界などからの引き合いも見込んでいるという。

(企業報道部 大下淳一)

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