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【国内生産主体】第3のエコカーで巻き返し。海外生産拡充を急ぐ。

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マツダ、高級路線の行方 「マツダ3」不振で不協和音

2019/9/14 5:00
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マツダの商品戦略が正念場を迎えている。中堅メーカーとして生き残るため、走り心地やデザインを追求し、価格を上げても独自の価値で売り込む「高級路線」を行く。だが新たな商品群の第1弾、小型車「マツダ3」は予想外の苦戦を強いられた。「良いクルマ=売れる」と言わんばかりの姿勢に、部品各社や販売店には危機感が広がる。近年は好調だったマツダだが、再び負の局面に転じる岐路に立っている。

強気な価格設定が裏目に出た(5月に開いた国内向けの新型マツダ3発表会)

強気な価格設定が裏目に出た(5月に開いた国内向けの新型マツダ3発表会)

営業利益が8割減――。8月1日、マツダの2019年4~6月期の決算発表を受け、系列の部品メーカーが集積する広島に衝撃が走った。主な要因は先代モデルに比べて約1割値上げした新型マツダ3(中心価格は250万~270万円)の不振だ。

車体やエンジンを刷新した新しい商品群の先頭バッターとして投入したが、主力の米国市場を中心に苦戦。米国では3月に新型を投入したが、1~6月のマツダ3(旧型も含む)の販売台数は前年同期比20%減だった。

マーケット全体の需要が多目的スポーツ車(SUV)にシフトしている影響もあるが、強気な価格設定が裏目に出た。米国向けに生産するメキシコ工場では、新型マツダ3の生産台数がすでに計画を下回っている。

今回の全面改良から国内向けの名称「アクセラ」を廃止し、海外向けだった「マツダ3」に統一した。マツダは新型車を7年程度のまとまりで一つの「世代」と定義している。今後発売する新型車についても新型マツダ3と同程度の値上がりが見込まれるとしている。

商品刷新と同時に、ブランド力を高めるための改革も進めてきた。12年ごろまでは車両価格の値引きでアピールする安易な販売手法が染みついていた。現在はブランド向上のため、安売りでなく車両本体の性能・価値を売り込む方針に転換し、徹底している。だが、各メーカーによる競争が激しい米中では、値引きを抑制したことで販売が大きく落ち込んでいる。

マツダは足元の販売不振について、ブランド改革の完遂に向けた「我慢の時期」(同社)とする。24年度までの中期経営方針などを念頭に、長期でブランドを浸透させていく考えだ。だが車両製造を支えるサプライヤーからは悲鳴の声が上がる。

「殿様商売だ」。広島県のある部品メーカーの幹部はマツダの減益決算を受け、こう言ってため息をついた。「各車種があまりにも似ているにもかかわらず、価格を上げて値引きもしない。普通の商売をすればいい」

マツダ経営陣はブランド改革の目標としてドイツの高級車メーカー、BMWをあげている。世界で自動車のコモディティー化が進むなかで、生き残るために強い特徴は必要だ。ただ別の部品メーカー幹部は「プレミアム路線を急速に進めすぎて、顧客がついてこられない」と指摘する。

最終製品である自動車の販売減少は、部品メーカーの経営を直撃する。完成車メーカーに比べて経営体力のないサプライヤーでは、ブランド改革の完了まで待てる時間軸の認識が異なる。

車両性能や高級感を追い求めれば、マツダが部品メーカーに要求するスペックも高くなり、部品の単価も上がる。だがサプライヤーには常に強いコスト圧力がかかっており、部品1つあたりの利幅は大きく変わらない。

マツダはさらに、今後の商品戦略の要として、直列6気筒の大型エンジンを搭載した新型車を開発すると発表している。部品各社によると「ラージ」と呼ばれるこの新型車の第1弾は、SUV「CX-5」の次期モデルで、21年の投入に向けて準備している。

ラージ商品では、車両価格は今よりもさらに上がる公算が大きい。サプライヤー幹部らは「高級路線を行くのは結構だが、販売台数を確保してくれないと持たない」と口をそろえる。

自動車部品は運搬コストの面から、完成車メーカーの工場の近くに生産拠点を持つのが基本原則。そのため大きくて重い部品ほど、1社への取引依存度は高くなりがちだ。広島でもマツダ向けの売り上げが9割以上を占めるサプライヤーが多く存在する。

電動化や自動運転などの激変が襲う自動車業界。マツダは世界で生き残るためのブランドの確立と、広島の「城下町」を率いる責任のはざまで難しいハンドルさばきを迫られる。

米市場「CX-X」に託す

マツダはトヨタ自動車と組んで米国に新工場を建て、2021年から米国専用の多目的スポーツ車(SUV)を生産する。開発コードは「CX-X」だ。米国はマツダの世界販売の約2割を占める最重要市場の一つ。値引きを抑えてブランド価値を高める姿勢を貫くが、改革は道半ばだ。その中で「CX-30」や「CX-5」なども含め、多車種のSUVを売り分けつつ販売を伸ばす難題に挑む。

値引きをやめても売れるブランドを目指す(米国フロリダ州のマツダ専売店)

値引きをやめても売れるブランドを目指す(米国フロリダ州のマツダ専売店)

米南部に建てる新工場では、マツダとトヨタそれぞれ年間15万台の生産能力とする。年産約160万台のマツダにとって、フル稼働すれば生産台数が約1割上乗せされる大きな投資だ。

部品メーカーなどによると、米国専用の「CX-X」は「CX-30」と「CX-5」の中間のサイズ感で開発を進めているという。マツダは需要が伸びており、1台あたりの利幅も大きいSUVで集中攻勢をかける。

年内には主に北米市場向けに、メキシコ工場で新型SUV「CX-30」の生産を始める。米国ではこれに加えて主力の「CX-5」、大型の「CX-9」、新工場でつくる「CX-X」など、SUVだけで多くの車種がそろうことになる。

現状、マツダのSUVはサイズは違えど、それぞれのデザインは似通っている。他メーカーもSUVの品ぞろえを増やすなか、マツダとして各SUVをどう売り分けるのかが焦点になる。

英調査会社、IHSマークイットの西本真敏マネージャーは「これまでは大衆向けのポジションだったが、より的を絞って特徴を出す必要がある」と話す。

SUVは細かく分けて走行性能を重視した「スポーツ」、高級感に特化した「ラグジュアリー」、悪路などでの走行に強い「オフロード」といった分類がある。西本氏は「マツダに可能性があるのは、スポーツとラグジュアリーの中間だ」とみる。

米国では08年に起きたリーマン・ショック後の買い控えの反動が、新車市場を押し上げてきた。回復傾向にあった巨大市場でシェアを伸ばそうと、各社の値引き競争が激しくなった経緯がある。

マツダもかつて激しい値引きによって、下取り価格が大きく下がる悪循環を経験した。安売りイメージの定着がブランド価値の毀損につながった反省を踏まえ、今は辛抱強く値引きを我慢している。

ただ足元では厳しい状況が続く。1~6月の米国での販売台数は前年同期比16%減の13万台だった。3月に投入した新型マツダ3などが不振だった。マツダは「量販価格帯の販売が想定を下回ったが、(値引きを抑える)価値訴求販売を継続していく。目先の台数を稼ぐのではなく、将来をみている」(同社幹部)とする。

マツダ関係者は「米国では価格の割に車両性能が高い『コスパの良いブランド』として見られてきた。他社が値引きするなかで、値引きをやめた差額分の価値が伝わっていない」と話す。

値引きを抑えれば、一時的に販売が落ちるのは仕方ない部分もある。値引き幅の大きい他メーカーから乗り換える際、下取り額が安くなり顧客の負担額は大きくなりがちだ。中古価格の高いマツダを売ってマツダの新車を買えば、負担感は薄れる。好循環の確立にはもう少し時間がかかりそうだ。

ブランド向上のため、販売面の改革も急ピッチで進める。米国では複数のメーカーを扱う併売店が一般的だが、マツダはマツダ車のみを扱う「専売店」への切り替えを進めている。試乗などを通じ、マツダの開発方針や車両本来の価値を認めてくれるファンを増やす考えだ。

21年までに現在より約4割多い年40万台を売れる体制にするという。しかし米新車市場の回復は頭打ちを迎えたとの見方が多く、その中で販売を伸ばすのは容易ではない。

ブランド価値を地道に高めながら、米国人の好みを分析して専用車種をどう味付けするか。米国市場の成否は、開発・生産・販売が一体となった改革にかかっている。

ヒット「2周目」つかめるか

マツダのブランド戦略でモデルケースと見られてきたのが国内販売だ。走り心地やデザインにこだわるイメージが浸透し、輸入車との競合が増えるなど顧客層が上がった。ただクルマにお金をかける目の肥えた顧客は1台の保有期間が短く、他社に流出するリスクもそれだけ高くなる。新たに獲得した顧客にマツダ内で継続的に乗り換えてもらえるかが焦点になる。

黒を基調とした高級感のある店舗への切りかえも進めている(東京都内の店舗)

黒を基調とした高級感のある店舗への切りかえも進めている(東京都内の店舗)

「デミオ」は「マツダ2」、「アクセラ」は「マツダ3」、「アテンザ」は「マツダ6」に――。マツダはこのほど、セダンやハッチバックで使ってきた国内向けのペットネーム(愛称)を廃止し、海外で使ってきた「マツダ+数字」に統一した。

新たな車名では、数字が増えるほど車体が大きくなりランクも上がる。ドイツのBMWやアウディが採っている形式と同じだ。個別の車種名よりもブランド名を真っ先に想起する輸入車のような存在を目指す。

長く親しまれてきたペットネームをあえて捨てたのは、それでも顧客が離れないとの自信があったからだ。実際に販売会社からは「輸入車の形式に慣れている顧客が多く、違和感なく受け入れてもらえている」との声が多い。

マツダによると、今では来店客のうち輸入車ユーザーが2割を占めるという。値引きに頼らず、性能などに納得して買ってもらうことを重視したことで、クルマにお金をかけるこだわりの強い層をつかんだ。

目の肥えた顧客は乗り換え頻度が高く、「マツダは保有期間が少しずつ短くなっている」(福原和幸常務執行役員)という。速まるサイクルはマツダにとって販売を伸ばす好機だが、他社に流出するリスクとも隣り合わせだ。

マツダは2012年に発売した「CX-5」以降の新型車がヒットし、業績を急回復させた経緯がある。今のマツダを支えるのは、主にCX-5以降に獲得した顧客だ。

西日本のマツダ販売店幹部は「これまでのヒットはほとんどが売れ筋のSUVで、しかも新規導入車。正直、売れて当たり前だった」と振り返る。国内のSUV人気に乗る形で販売を伸ばしてきたが、「大事なのは一過性のブームでなく、2周目以降も買ってもらえるかだ」(同)。

一連のヒットに伴う反動の兆しも出てきた。1~6月の国内の販売台数は、前年同期比13%減の10万台だった。マツダは「各車種の新型車効果が薄れたことが大きい」とするが、別の販売会社幹部は「デザイン面で大きな変更がなく、さすがに飽きられてきた」と指摘する。

2周目以降の乗り換え需要を喚起する大きな起爆剤としてマツダが期待するのが、燃費を改善して走行性能を高めた新型エンジン「スカイアクティブX」の導入だ。ただこの新技術を巡ってもやや不透明な動きが出ている。

5月に国内発売した新型「マツダ3」で、当初は10月に新型エンジン搭載車を初投入する予定だった。ところが8月になって突然、2カ月延期すると発表された。国内向けにはレギュラーガソリン推奨仕様で用意していたが、加速や静粛性の面で優れるハイオク仕様に切り替えるためだという。

もともと燃費の良さを一つの売りにしていたにも関わらず、そもそもの燃料代が高いハイオクに変わるのはどうしてなのか。マツダ関係者は「国内販売部門はレギュラーを希望していたが、最終的に開発部門に押し切られたようだ」と話す。

株式市場も現在の戦略を評価しかねている。中国の景気悪化や円高など外部要因もあるが、マツダの現在の株価は1年前に比べて約3割安い水準で推移する。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の竹内克弥アナリストは「低調な販売台数が上値を押さえている。台数を優先させる形で価格戦略を見直す必要もあるだろうが、今の利益率の水準からみると、値下げをする財務の余力もない。株価反転の材料に乏しい」と話す。

世界シェアが2%程度のマツダは、2%のファンに強く刺さる、突き抜けたクルマを開発することで生き残りを狙っている。将来は自動運転やライドシェアの普及により自動車の所有意義が薄れることも予想される。際立った特徴を育てる方針には説得力があるが、行き過ぎれば空回りは避けられない。今後はよりユーザーの納得感を得られるバランスを探っていく必要があるだろう。

(この連載は河野真央が担当しました)

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