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マツキヨとココカラ、統合協議に潜む「落とし穴」
グロービス経営大学院の嶋田教授が解説

ビジネススキルを学ぶ
コラム(ビジネス)
2019/9/13 4:30
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ドラッグストア業界7位のココカラファインが、経営統合の相手として、業界6位のスギHDではなく、業界5位のマツモトキヨシHDを選び、経営統合の協議に入ったことが話題になりました。結論は年明けに出すもようですが、実現すれば最大のドラッグストアチェーンが誕生します。統合でコスト競争力が高まるなどメリットがある反面、期待した効果が出ない「落とし穴」もありそうです。グロービス経営大学院の嶋田毅教授が、ビジネススクールで学ぶフレームワーク「規模の経済性」の観点から考察します。

【解説ポイント】
・両社のブランドを絞り込めるか
・組織文化をどこまで融合できるか

【関連記事】マツキヨ選んだココカラ社長、ネット処方薬に備え

規模の経済性とは、企業の売り上げ規模(正確には販売数量)が大きくなると、製品・サービスの単位当たりのコストが下がるという事業経済性です。同業種によるM&A(合併・買収)の多くは、この規模の経済性を実現し、コスト競争力を高めることを大きな目的としています。

規模の経済性が生じる1つの理由に、固定費や固定的投資の分散があります。たとえば銀行でオンラインシステムを構築しようとすると、銀行の大小にかかわらず一定額のシステム投資が発生します。それを1行で負担しようとすると売り上げに対するコストが増えてしまうので、経営統合をした方が有利になるのです。

もう1つは、バイイングパワーの向上です。たとえば、小売業界ではイオングループやセブン&アイグループの企業はライバルに比べて低価格で商品を提供できますが、これは規模(取引数量)を生かしてメーカーからの仕入れ価格を安くできるからです。

今回の経営統合の目的には、さらに密度の経済性も関係してきます。これは、地理的に集中出店した方がコスト的に有利になるというものです。その理由は、配送効率が増す、店舗が集中することで広告効果が増すなどです。店舗そのものが広告塔となる小売業においては特に重視されている事業経済性であり、コンビニのドミナント出店などもこれを意識しています。

話を規模の経済性に戻しましょう。記事にもあるように、ドラッグストア業界は変革期にあり、業界内、あるいは業界を超えた競争激化が予想されています。そしてそれを乗り切るためには、さらなるシステム投資や製品開発投資が必要となるでしょう。またコスト競争力も必要です。そうした中、業界7位のポジションではさらにじり貧に陥るというのがココカラファインの課題意識でした。

統合効果が生まれやすいケースだが…

このような投資は、合併による規模の経済性の効果が最も効きやすいものの一つです。システム投資は先述の通りですし、製品開発も固定投資的意味合いが強く、店舗数や販売数量が増えれば分散が効きやすくなるからです。

ノウハウの共有も、ノウハウを獲得するための投資やコストを分散できると考えれば、規模の経済性の一部です。たとえばココカラファインはドラッグストアの中でも調剤の比率が高いことで知られています。マツモトキヨシ側が調剤分野を強化する上でそのノウハウを生かせば、コストの低減にもつながるでしょう。あるいはプライベートブランド(以下PB)開発については、マツモトキヨシは二千数百万人の会員情報を活用していることでも有名であり、そのノウハウが得られることはココカラファインにとって大きな魅力でしょう。

このように考えると、両者の経営統合は非常に理にかなったもののように見えます。しかしそこに落とし穴はないのでしょうか?

規模の経済性を妨げるもの

規模の経済性はメカニズムがシンプルなので、「くっつければ効くはず」と考えがちですが、しばしば効かない、あるいは効きが弱いケースもあります。典型的なケースを2つ紹介します。

1つ目は、店舗ブランドが多いケースです。規模の経済性が最も効くのは、同じブランドで展開するケースです。たとえばセブン-イレブンは、コンビニという業態についてはこのブランドに完全にフォーカスをしています。全国のどこに行っても、多少の品ぞろえの差はありますが、同一のフォーマットで展開してきたからこそ、ノウハウ獲得やPB製品の開発コスト比率を下げることに成功し、業界の中でも圧倒的な収益性を実現したのです。

一方、ドラッグストアのブランドは必ずしも1つではありません。マツモトキヨシについて言えば、化粧品などが多く、若い女性をメインターゲットとする「マツモトキヨシ」ブランドもあれば、調剤や日用品販売をメインにする「どらっぐぱぱす」も展開しています。美と健康に特化した実験的ブランドの「BeautyU」なども存在します。

仮に、マツモトキヨシが開発した化粧品のPB製品を、統合後のココカラファインの店舗で大々的に置けないとなると、経営統合の効果がそがれてしまいます。中小ドラッグストアの経営統合で大きくなってきたココカラファインやマツモトキヨシが、店舗ブランドをどこまで絞り込めるか、つまりフォーマットをどこまで絞り込めるかは、規模の経済性を考える上で大事なポイントです。

2つ目は、コミュニケーションや調整コストが大きいケースです。特に経営統合の結果生まれた組織では、組織の壁が高く残り続け、無駄やダブりが発生することも少なくありません。その結果、思ったほど規模の経済性が効かず、コストが高止まりするということも生じるのです。

記者会見で握手するココカラファインの塚本厚志社長(右)とマツモトキヨシHDの松本清雄社長(東京・丸の内)

記者会見で握手するココカラファインの塚本厚志社長(右)とマツモトキヨシHDの松本清雄社長(東京・丸の内)

どこまで「マツキヨ化」できるか

1つ目の課題については、ココカラファインがどこまで「マツモトキヨシHD」化できるかが一つの鍵になりそうです。ドラッグストア業界は、顧客ニーズにあわせて複数のブランドを使い分けてきました。ただ、両社の間で重複するブランドを残すことは、コスト的にも見合いません。この部分は、「のみこまれる側」のココカラファインの経営陣がどこまで割り切れるかがカギになりそうです。

2つ目の課題は、いわゆるPMI(M&A成立後の統合プロセス)の問題です。これについては組織文化の融合が大きなポイントとなりますが、現段階では未知数です。ただ、伝統的にドラッグストア業界はM&Aで企業が大きくなってきたという経緯があり、比較的それに対する心理的ハードルは低いとされています。

そもそも、1994年以来20年以上にわたって業界首位だったマツモトキヨシがここ数年で5位にまで業界順位を下げたのは、業績が低迷したからではなく、他社が大胆な経営統合に走る中、マツモトキヨシが小ぶりなM&Aしかしなかったからという背景もあります。先述のブランドの問題などが適切に処理されれば、PMIも比較的にスムーズにいくのではないかというのが筆者の見立てです。

ドラッグストア業界は激変期にあります。価格競争はますます激化し、一方で新たな差別化も図られていくでしょう。企業によってどちらをより重視するかのスタンスも分かれそうです。今回の経営統合の成否は、業界再編の行方を占う上でも注目されそうです。

規模の経済性」についてもっと知りたい方はこちら

https://hodai.globis.co.jp/courses/82dab3ac(「グロービス学び放題」のサイトに飛びます)

しまだ・つよし
グロービス電子出版発行人兼編集長、出版局編集長、グロービス経営大学院教授。88年東大理学部卒業、90年同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経て95年グロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。動画サービス「グロービス学び放題」を監修
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