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世界と共創、京都・大阪・奈良またぐ「けいはんな」

2019/7/11 6:01
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京都、大阪、奈良の3府県にまたがる関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)。1987年施行の関西文化学術研究都市建設促進法に基づき整備が進み、今や企業や研究機関など140超の施設が立地する。革新的なビジネスを生み出すイノベーションの動きが目立ってきた。

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島津製作所は学研都市内の基盤技術研究所(京都府精華町)で、人の感情を数値化しようと取り組む。運動をしたり、食事をしたりしている時の口角や眉を動かす表情筋の電気信号を読み取る。どういった感情なのかを客観的にリアルタイムで計測する。

この研究はスポーツマン向け測定機器開発のプロキダイ(精華町)などとの連携だ。感情計測を活用したBtoBの新ビジネスへの期待が高い。「どのような環境で集中力が上がるか、どのような環境下で食事をすると心地よくなるかなど、需要は幅広い」(島津製作所)という。

従来、行動時の感情を調べるには、アンケートで把握していた。ただ行動を振り返って主観的に表現したものにすぎず、客観性に乏しかった。

異業種や異分野が持つ技術やアイデアなどを組み合わせ、革新的なビジネスを生み出すオープンイノベーション。学研都市に立地したり、研究開発で交流があったりする企業で成果が出始めている。

空調機メーカーの木村工機(大阪市)もその一つ。イスラエルのスタートアップ企業、エレガント・モンキーズ社との実証実験が今年3月に始まった。温度や湿度だけでなく、天井や壁の照明をどのように調整すれば室内で作業する人の集中力をより高めることができるかを調べる。

イスラエル企業が開発した、人の緊張度合いなどを測れるリストバンド型機器

イスラエル企業が開発した、人の緊張度合いなどを測れるリストバンド型機器

エレガント・モンキーズ社は、心拍数や血流から人がリラックスしているかどうかを調べる、リストバンド型の測定機器を開発しており、実験に生かす。木村工機は照明設備と連動する空調機器の製品化を目指す。

両社を結びつけたのが、学研都市にある国際電気通信基礎技術研究所(ATR、精華町)。NTTなどが出資する情報通信分野の研究機関で、都市全体の活性化の役割も担う。

近年、オープンイノベーションが目立つ背景には、技術者や研究者らの交流が活発化してきたことがある。自由に参加できる勉強会を通じ、コア技術を自社に残しながら、外から必要な技術を持ち込む「オープン&クローズ」の発想を徹底させてきた。

海外提携については、学研都市の研究開発支援に取り組む関西文化学術研究都市推進機構、ATRが一役買う。イスラエルのイノベーション庁やカナダ国立研究機構などと相次いで連携協力で合意。海外スタートアップの先進的な技術を取り入れたイノベーションを後押しする。

関西文化学術研究都市推進機構の柏原康夫理事長「民の力 AIや脳科学に」

学研都市がオープンイノベーションの拠点として存在感を強めている。推進役の関西文化学術研究都市推進機構の柏原康夫理事長に聞いた。

関西文化学術研究都市推進機構理事長の柏原康夫氏

関西文化学術研究都市推進機構理事長の柏原康夫氏

――けいはんなの強みはどこにありますか。

「筑波研究学園都市(茨城県つくば市)と並ぶ研究開発の拠点だ。筑波は宇宙航空研究開発機構(JAXA)など大規模な国の研究機関が立地する。けいはんなは、島津製作所やサントリーなどの研究・開発部門が進出し、民の力が強い。脳科学や人工知能(AI)、ロボットといった現代的なテーマの研究も見るからに活発だ」

「今後は製品化の一歩手前の基礎研究をしっかり商品に結びつけることが必要だ。例えば、けいはんなに事業所を持つライトタッチテクノロジー(大阪市)が開発したレーザー光線を使う血糖値測定機器は、早ければ2021年度にも製品化を見込む」

ライトタッチテクノロジーは、センサー(右)に指をかざすと血糖値が測定できる機器を開発=同社提供

ライトタッチテクノロジーは、センサー(右)に指をかざすと血糖値が測定できる機器を開発=同社提供

――今年に入って、イスラエルやカナダなど海外との連携が相次いでいます。

「今になって突然始まったわけではない。基礎研究を30年積み重ねてきて、海外が注目するレベルに達した。条件が整ったということだ」

「従来は、けいはんなに立地する民間の研究機関同士でも、秘密保持のため交流が難しかった。それが数年前からオープンイノベーションの気風が根づいてきた。そうなればいずれは国内だけでなく海外との交流が必要になる」

――今後の課題は。

「海外との共同研究などに領域が広がり、機関同士を結びつける事務方の業務も大幅に増えた。これまでのように、府や企業の手弁当でやっていくには限界がある。研究費の助成などだけでなく、都市運営の組織も強化する必要がある」

■京都市、ベンチャーの都 復権へ

京都の「起業シーン」が新たな段階に入ろうとしている。かつて京セラ村田製作所日本電産など世界的な企業を生みだし「ベンチャーの都」と呼ばれたが、近年は有望なスタートアップの勢いに欠ける。復権を目指そうと、地元経済界を中心とした手厚い支援が始まった。

6月下旬、京都リサーチパーク(KRP、京都市)の交流施設に多くの学生らが集まった。KRPが立ち上げた「miyako起業部」だ。九州大学の教員を迎え入れ、京都発のスタートアップ創出を狙う。

財務など基礎的な知識からビジネスアイデアの構想までを支援し、3年をメドに起業を促す方針だ。KRPの中沢遼さんは「既存の企業支援だけでなく、京都発スタートアップの創出にも貢献したい」と話す。

京都大学の正門から徒歩5分のインキュベーション施設「toberu」。居住スペースも完備するその施設で、大手企業の社員に起業を促す国内初めてのプログラムが始まった。

オムロンNISSHAなど京都企業のほか、味の素富士フイルムなど国内大手企業計7社から社員が派遣され、約4カ月間泊まり込みで起業を準備する。

提供するのは起業支援のフェニクシー(京都市)。米国で起業支援を手がける社会起業家、久能祐子氏や元メリルリンチ日本証券社長の小林いずみ氏らが創業メンバーに名を連ねる。

起業支援の動きはほかにもある。米起業支援大手のプラグ・アンド・プレイ(PnP)が11月からヘルスケアやものづくりに関連するプログラムの提供を始める。京都経済界を中心に3月に開業した「京都経済センター」での提供も視野にいれる。

有望なスタートアップの創出が滞ったという危機感が徐々に京都の起業支援シーンの充実につながり始めた。今後は京都府市や経済界を中心にオール京都で成功モデルをつくり出すことが求められる。

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