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【迷惑電話フィルター事業】携帯キャリア各社にサービスを販売。

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さらば「寄らばトヨタ」 東海企業のIPOが急増

コラム(ビジネス)
スタートアップ
自動車・機械
中部
2019/7/5 4:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

スタートアップ企業の誕生が少なく「新規株式公開(IPO)不毛の地」とまで呼ばれてきた愛知・三重・岐阜の東海3県で、異変が起きている。これまで20年近くにわたって日本全体の年間IPO件数に占める東海企業の割合は5%前後にすぎなかったが、今年1~6月には18%に跳ね上がった。「どえりゃあ事態」の背景を探った。

■平成最後のIPOは愛知の2社

「平成最後の国内IPO」を果たしたのは、実は愛知県の2社だった。ともに上場日は4月25日。携帯電話などに振り込め詐欺をはじめとする迷惑電話が掛かってくると警告を発するサービスを手掛けるトビラシステムズと、中古車販売のグッドスピードだ。

「電話を使う特殊詐欺の被害は減っておらず、十分なニーズが見込める」。トビラシステムズの明田篤社長は東京証券取引所内で開いた記者会見で、こう語った。愛知の2社の上場セレモニーが相次いで開かれ、まるで兜町が名古屋になったような雰囲気だった。

2010年~18年にIPOした東海企業は合計で24社。年間では最も多かった17年でも5社にとどまる。ところが今年は1~6月だけで7社が上場し、過去10年の最多記録をすでに超えている。7月以降もさらに上場企業が生まれる見通し。

■優秀な人材は自動車産業に就職

これまでIPOが低調だった理由は何か。あずさ監査法人の鈴木智博IPOサポート室長は「優秀な人材ほどトヨタ自動車デンソーといったトヨタグループ各社を志望する傾向が目立ち、起業を目指す人は限られていた」と内情を明かす。

スタートアップを設立したがIPOには動かず、未上場を貫く場合も多かったという。証券大手の担当者は「カラオケ『JOYSOUND』のエクシングや工作機械のヤマザキマザックといった未上場の有力企業が東海に多く、IPOの必要性を感じない起業家が多かった」と振り返る。

かつて名古屋には10社以上のベンチャーキャピタル(VC)が存在したが、現在は5社程度。今年IPOした自動車制御の基本ソフト(OS)を開発するヴィッツなどはVCから資金を調達せず、自前で賄っている。

VCは資金回収を急ぐため投資先に早期の上場を促すことが多く、内部管理体制の整備など必要な支援もする。上場への「旗振り役」に乏しいこともIPOが低調な一因となっていた。

エイチーム上場で風向きに変化

そんな風向きが変わるきっかけは何だったのか。「12年のエイチーム上場が転機になった」。東海3県のIPO事情に詳しいセレンディップ・コンサルティング(名古屋市)の高村徳康会長は、こう言い切る。

00年に創業したエイチームは12年に東証マザーズへ上場し、7カ月後には早くも東証1部へくら替えを果たした。IPOで得た資金をスマートフォンゲームの開発などに有効活用し、モンスターバトルゲーム「ダークサマナー」や競走馬育成ゲームの「ダービーインパクト」といったヒット作を連発している。

上場1年目の12年7月期に63億円(単独ベース)だった売上高も急拡大し、19年7月期には370億円(連結)と約6倍の水準を見込む。

これに東海3県の各社が続いた。13年には中古車販売会社のネクステージが上場し、着実に成長。上場時点で50億円程度だった時価総額は現在、800億円台にのぼる。15年に上場したカーコーティングのKeePer技研の時価総額も200億円弱と、上場直後の2倍強となっている。

今年1~6月に上場した東海の7社のうち5社はエイチームやネクステージと同じ90年代から00年代に創業した。トビラシステムズで財務を統括する後藤敏仁取締役は「エイチームなどの上場には我々も刺激を受けた」と明かす。「同期生」たちが上場で得た資金で急成長する光景がIPOの呼び水となった。

■熱を冷まさない努力を

これを受けて東海の証券各社も動き出す。地元の大手である東海東京証券は16年にIPO予備軍を発掘する部署として「名古屋企業開発部」を設立した。当初は3人で始まったが段階的に増やし、18年からは5人体制で活動している。手応えも毎年良くなっている。

同様にIPO開拓部隊を名古屋に置いた野村証券も東海3県を積極的に回る。公開引受部の中丸達也次長は「東海企業の上場意欲は確実に高まっている」と強調する。今後はIPOの主幹事争いも激しくなりそうだ。

東海企業のIPOは今後も続くのか。東海東京証券の市川昌広・名古屋企業開発部長は「20年には3県で20社程度まで増える」とみる。しかも今年はステーキ店のあさくまや中古車店のグッドスピードなど流通系企業も目立ったが、来年は名古屋大発スタートアップなど技術系企業のIPOが予想されるという。

東海は日本のものづくりを支える地域だ。経済産業省中部経済産業局によれば東海3県の製造品出荷額等は全国の2割を占め、三大都市圏で最も多い。自動運転など「未来のクルマ」に必要な技術を開発するスタートアップも生まれている。

トヨタのように強い企業でも将来戦略としてオープンイノベーションを打ち出し、他社との連携を模索し始めた。東海のスタートアップがIPOを目指すことは、内部管理体制の強化につながる。大手企業は財務実態などを見極め、提携に踏み切りやすくなる。

東海3県で盛り上がるIPO熱は自動車大手と技術系のスタートアップが協力し、新たな化学反応を起こす契機になる潜在力を秘めている。スタートアップや証券会社などには、この熱を冷まさない努力が求められる。

(企業報道部 高橋徹)

[日経産業新聞 2019年7月4日付]

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