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ぺんてる、突然のコクヨとの「縁談」 反発の理由
日経ビジネス

2019/6/18 4:30
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日経ビジネス電子版

筆記具大手のぺんてるが、望まぬ相手との「縁談」に反発している。その相手とはコクヨ。両社を結び付けたのは、ぺんてるの筆頭株主である投資会社だ。株主としてガバナンスを利かせる狙いがあったというが、とても一緒になれる状況にはない。株主ガバナンスの難しさが浮かび上がる。

ぺんてるがコクヨに反発。その事情とは(写真:スタジオキャスパー)

ぺんてるがコクヨに反発。その事情とは(写真:スタジオキャスパー)

2019年5月半ば。筆記具大手、ぺんてるの和田優社長は急きょ、従業員を集めて、こう宣言した。「(今回の)一方的な行いは極めて遺憾。青天の霹靂(へきれき)だ。会社としての独立性を今後も維持する」

一方的な行い、とは何なのか。

ぺんてるの筆頭株主は東証1部に上場している投資会社のマーキュリアインベストメントが運営するファンド(37%を出資)だ。そのマーキュリアは2018年、ぺんてるの創業一族から保有株を譲り受け筆頭株主になった。

このファンドに同業のコクヨが5月10日に101億円を出資、間接的とはいえ事実上、ぺんてるの筆頭株主になった。これが和田社長の言う「一方的な行い」だ。

ぺんてるが反発するのは、未上場の同社の株式には、売買時に取締役会の承認が必要な譲渡制限がついているためだ。ファンド側は「ファンドへの出資者が変わっただけで、ファンドがぺんてる株を持っている状態に変わりはなく違法ではない。大手弁護士事務所のお墨付きももらっている」とするが、ぺんてる側は「当社取締役会の承認が必要な株式譲渡につながるような、当社株式を保有する組合出資持ち分の譲渡を決定、しかも公表直前に当社に連絡があった事実は大変遺憾」とし、脱法行為だと反論する。

和田社長が怒る理由はほかにもあった。実は水面下で文具大手のプラスとの資本提携協議を進めていたからだ。「プラスとの交渉をつぶされ、突如、コクヨと組まされるなんて」。これが和田社長の思いだろう。

マーキュリアは社外取締役をぺんてるに送り込んでいるため、プラスとの提携協議の中身も把握していたという。だがマーキュリアは「プラスとの提携内容はぺんてるにとって不利な内容が多かった。一緒に立ち上げるとされた共同出資会社も株のマジョリティーはプラス側だったし、ぺんてるが利益を上げるには相当な売り上げ増を必要とする無理な計画に見えた」と判断した。

■「プラスと組むと企業価値が毀損する」

マーキュリアがコクヨを引き込んだのは「今の計画でプラスと組むとぺんてるの企業価値が毀損する」と感じたからだ。そしてコクヨは「一緒に成長できる」と判断した。ぺんてるが今後も成長が期待できる中国事業に強みを持つためだ。

投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明する。

経営陣が画策した提携話に筆頭株主がノーを突き付け、代わりの提携先をあてがった。今回の話を一言で言うとこうなるだろう。仮にプラスとの提携が本当にぺんてるにとって利益を生まないのであれば、今回の動きは筆頭株主によるガバナンスが利いた事例となる。

もちろん、コクヨと組めばぺんてるの企業価値が上がるという保証もない。現経営陣がコクヨに反発している現状ではなおさら、そのハードルは高い。

ぺんてるは「コクヨと業務提携について協議を行っている事実はない。本件取引が当社との一切の協議なく実行された背景・真意等について確認をさせていただいている状況。いかなる場合においても企業間の関係構築は相互の信頼感が基盤となるべきだ」とコメントしており、現状ではなかなか実のある議論に入ること自体が難しそうな状況だ。

ぺんてるは18年3月期の連結売上高が409億円。一方でコクヨは18年12月の連結売上高が3151億円と企業規模では大きな開きがある。独立性を盾に態度を硬化させている和田社長の心の中には、このままだと将来、コクヨに飲み込まれてしまうのではないか、という思いがあるのかもしれない。

いずれにしろこの事例は、非公開企業も今や株主ガバナンスとは無縁ではいられない、という教訓と同時に、株主ガバナンスを行使した結果、経営陣とのあつれきで企業価値向上どころではない泥沼に陥るリスクもある、という副作用にも気づかせてくれる。ガバナンスは使い道を一歩間違えると、劇薬にもなりかねない、極めてさじ加減の難しい処方箋なのだ。

(日経ビジネス 奥貴史)

[日経ビジネス電子版 2019年6月17日の記事を再構成]

日経ビジネス2019年6月17日号の特集「正しい 社長の辞めさせ方」では、株主ガバナンスの最新の動向を追った。
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