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おいしいマンゴー、AIで 東洋インキ×新興

コラム(ビジネス)
2018/7/27 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

東洋インキSCホールディングスは農業関連システムのスタートアップ、ルートレック・ネットワークス(川崎市)と共同で、人工知能(AI)を使ったマンゴー栽培の実証試験を始める。栽培が難しい果実で、高品質かつ高収量を実現するのが狙いだ。2020年までの実用化を目指しており、仕組みを生育システムとして海外販売することも視野に入れている。

埼玉県川越市。機能性塗料など東洋インキの工場が集まる主力拠点の近くに建つビニールハウスは、その風景の中で異彩を放つ。中に入るとマンゴーの収穫がラストスパートを迎えていた。

栽培が難しい果実でもAIの活用で作業を軽減できる

栽培が難しい果実でもAIの活用で作業を軽減できる

目を引くのは一般的な露地栽培と異なり、マンゴーの木がそれぞれ鉢で育てられてズラリと並ぶ光景だ。「ボックス栽培」という方法で、根の伸長を抑えることで、糖度が高くなるだけではなく、成長の期間を早められるという。

そもそも、なぜインキの老舗企業がマンゴーなのか。東洋インキSCホールディングスは2018年からの長期構想で食や地球環境への課題解決を掲げており、農業はその一環だ。食品包装向けのインキや食品添加剤向けの顔料を製造しており、小売りや外食産業、食品メーカーとの取引関係も深い。

数ある農作物からマンゴー栽培を選んだのは、単価が高く、意外性があるからだ。農業子会社、東洋ビーネットは14年に農業法人の資格を取得。甘さをこえる甘さという意味から「あまみごえ」ブランドでマンゴーを販売し、16年には川越市から「川越セレクション」に認定された。

これからチャレンジするのはスタートアップとのコラボによる生産改革だ。マンゴー栽培にAIを取り入れる理由を東洋ビーネットの高木新社長は「木がストレスを抱えると翌年は果実が育たないから」と説明する。

ストレスフリーの生育環境を整えるため、今シーズンの収穫が終わる8月にも、ハウス内にセンサーを設置して日射量や土壌の状態といった栽培データを蓄積。AIがマンゴーに与える水や液肥の量を調整する取り組みを始める。

導入するのはルートレックの養液土耕システム「ゼロアグリ」。13年から中小農家向けに販売をしており、国内だけではなくタイやベトナムなど100拠点の納入実績がある。ただ、トマトやイチゴ、ナスなどが中心で、マンゴーは今回が初めて。ボックス栽培での導入も初となる。

ゼロアグリは1時間に1回、日射量や土の水分量や温度、土壌に含まれる養分の状況を調べて、AIが「今、何をすべきか」を判断する。これまで経験や勘が求められた水や堆肥を自動的に与えられ、労働力だけではなく無駄な堆肥も減らせる利点がある。

栽培の状況は遠隔地からもスマートフォンやパソコンなどで逐次確認することが可能だ。これまで導入した施設では収穫量が3割向上した実績もあるだけに高木社長はマンゴーへの応用に期待を寄せる。

東洋インキは「あまみごえ」ブランドでマンゴーを栽培、1個2000~3000円で販売している

東洋インキは「あまみごえ」ブランドでマンゴーを栽培、1個2000~3000円で販売している

実証試験ではマンゴーの生育にあわせた水やり、土壌環境の見える化を進めて栽培の効率を高め、安定して収穫できるようにする。両社による試験は20年まで。短期集中で結果を出す予定だ。

東洋ビーネットでは今回の取り組みが実用化でき次第、一連の仕組みをゼロアグリを組み込んだパッケージとして販売するアイデアも暖めている。ルートレックにとっても、大手企業の販路で主力製品が拡販されることになるため、魅力的だ。

ボックス栽培だと鉢を動かせば自由にレイアウトを決められるほか、需要にあわせて鉢の量を調整しやすいので、企業向けに遊休施設などを活用する新規事業として提案。ハウスを含めたリース契約などにも対応していく方針だ。

海外展開も視野に入っている。東洋インキSCホールディングスでグループ経営部の伊藤崇倫氏は「グループが展開するグローバルのネットワークは強み。東南アジアでも栽培できる」と事業拡大に意欲を見せる。

収穫したマンゴーの販路開拓でも、コラボが生きる可能性がある。東洋ビーネットはすでに直売施設などを確立済み。一方、ルートレックは野菜宅配大手、オイシックス・ラ・大地から出資を受けているため、同社の電子商取引(EC)サイトを活用することが可能だ。「マンゴーのような高級フルーツはECと相性がいい」(ルートレック)

大手企業とスタートアップが知見を寄せ合い、互いの成長を加速させる取り組みはネットや通信、エレクトロニクス企業を中心に広がっているが、素材や材料系企業の事例はまだ少ない。インキの老舗×スタートアップが新たな果実を生めば、協業の裾野は広がっていく。 (世瀬周一郎)

[日経産業新聞 2018年7月27日付]

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