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コロナ禍、3つの「2」に揺れる市場

2020/10/20 12:58
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欧米での新型コロナウイルス感染が日々悪化するなかで、トランプ米大統領のコロナ対応が市場の不透明感を醸成している。

コロナ第1波の際には、政権内にコロナ対策チームを設置。ペンス副大統領をリーダーに指名。いまや国民英雄的存在となったファウチ国立アレルギー感染症研究所長もメンバーとなった。連日、記者会見も開催され、ニューヨーク(NY)株価が、その時間帯に反応する事例も珍しくなかった。

ところが本格第2波が欧州から米国へ転移の兆しを見せるなかで、同チームの記者会見は一切行われていない。「ファウチは災厄(disaster)だ。彼の言うことを聞いていたら、死者は50万人になったであろう」とまでトランプ氏は言い切る。新たにチームの顧問に任命されたのが神経放射線科医のアトラス氏だ。感染を放置して集団免疫獲得を目指す戦略を標榜する人物である。トランプ氏も遊説先で、マスクを着用せず、コロナ感染を克服したとの強者のイメージを訴求して、マスク依存は弱者のごとく語る。それに対する批判が高まるほど、トランプ支持者は団結を強め、感染リスクなどに関わらず実際に投票行動する確率が非常に高い集団となっている。

かくしてコロナ感染第2波の衝撃で景気二番底の可能性もちらつき始め、経済支援策第2弾発動が喫緊の課題となってきた。米国では、国民1人あたり1200ドルの給付金、失業保険週600ドルの上乗せ、そして中小企業への給与保護プログラム(PPP)がすでに終了しており、その再発動を巡り議会で瀬戸際の交渉が続いている。経済対策が後手にまわれば、必要な財政支出は増えるばかりだ。今日なければ明日はない、との緊迫感も漂う。ペロシ下院議長は週末に48時間以内という具体的目標を明示して共和党に決断を迫った。その期限がNY時間の本日にくる。NY株式市場も、週明け19日には、ムニューシン財務長官とペロシ氏との話し合いが継続していることを好感して、寄り付きは米ダウ工業株30種平均は100ドル強の上昇で始まった。しかし、ワシントン・ポスト紙が同交渉に悲観的な記事を流すや、一転ダウはマイナス圏に沈み、結局前日比410ドル安で引けた。ところが、日本時間の午前4時から「53分」にわたり両氏の電話会談が行われ、ギリギリでの合意の可能性も浮上するや、時間外でダウ先物は100ドル超反発している。

マーケットは包括的合意に至らずとも、部分的合意案が成立すれば良しとする。しかし現実的には溝がなかなか埋まらない。例えば、ウイルス検査と感染者追跡調査費用を巡り両党の見解のすり合わせに時間を要している。言葉の問題なのだが、民主党がshall(する)と表現する箇所を共和党はmay(するかも)にこだわる。さらに、「必要だ」か「望まれる」かの差も譲れない一線となっている。

追加財政支援の総額も民主党案の2.2兆ドルに対して、共和党が徐々に歩み寄り1.8兆ドルに多少「色を付ける」姿勢だが、それ以上の妥協は党内で反発が強い。

なお、共和党が過半数を握る上院では、再開する学校への援助、失業保険上乗せ、中小企業支援(PPP第2弾)に絞り5千億ドルの部分的支援案が議論されているが、民主党は包括合意にこだわるスタンスだ。

結局、コロナ対策財政支援という経済政策が選挙戦の材料として扱われている。劣勢のトランプ陣営から見れば、事前投票も記録的なペースで進むなか、大統領選挙前の追加的財政支援策決定も賞味期限を過ぎた印象がある。民主党の視点でも、すでに支持率でかなり水をあけたので、ここであえて共和党と妥協する姿勢を見せる必要性も薄まっている。

もはや、こだわっているのは市場。そして、なんといっても、失業者や中小企業にとっては死活問題となる。

米大統領選も最後の幕でエンディングのシナリオが見えない。

豊島逸夫(としま・いつお)

 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)
  • 日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

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