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プラごみ汚染 どう防ぐ(複眼) ブリュヌ・ポワルソン氏/淡輪敏氏/磯辺篤彦氏

時論・創論・複眼
2019/8/1付
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身の回りのプラスチックが深刻な環境汚染を引き起こしている。6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では、海洋に流れ出るプラスチックごみを2050年までになくすことで合意した。生活を支えるプラスチックをどう使いこなすのか。様々な立場の専門家に聞いた。

◇ ◇ ◇

■「大胆な削減」へ法整備 仏環境副大臣 ブリュヌ・ポワルソン氏

Brune Poirson 2009~11年に仏開発庁勤務、11~14年に水処理世界大手の仏ヴェオリアで持続可能な発展などに関わる。17年国民議会(下院)初当選、環境副大臣に。36歳。

Brune Poirson 2009~11年に仏開発庁勤務、11~14年に水処理世界大手の仏ヴェオリアで持続可能な発展などに関わる。17年国民議会(下院)初当選、環境副大臣に。36歳。

欧州は廃プラスチック処理の方法の一つとして、これまでアジアに輸出してきた。しかし豊かな国が、まだ豊かでない国にごみを送るというこの解決策をいつまでも続けられるとは思わない。

また仏国内のリサイクル状況をみると、プラスチックなどの包装の26%、容器の55%しか実施できていない。満足できる数字とは言えない。廃プラ政策では例えば北欧各国が先を行っている。

フランスは新法(通称・反浪費法)を審議中だ。消費するプラスチックの量を大胆に減らすのが目的で、例えば不要なプラスチックを多く使った製品を作る企業はペナルティーを受ける(結果的に製品の値段が高くなる)仕組みを作る。逆に環境に良い製品を作る企業は恩恵を受ける。

また欧州連合(EU)で2008年に決まった方針に基づき、仏政府は19年末までに海洋の汚染についての情報をEUと共有する。

例えば地中海は汚染が進んでいるが、フランスは生態系、生物多様性、微細プラスチックの量、汚染の種類などを調べて共有できる。そうすることでEUの他の加盟国とも海洋汚染の監視、追跡、分析を定期的に実施できるようになる。

今は欧州レベルでの情報共有だが、世界レベルに持っていきたいと考えている。その意味で、6月下旬のG20サミットで、国際レベルの合意ができた意味は大きい。8月に南仏ビアリッツで主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれるので、継続したテーマとして取り組みたい。

廃プラスチックの処理を巡っては、燃やして発電する考え方もある。確かに投棄するよりはいいかもしれない。

だが地球上の資源には限りがある。やはり最初の一歩はプラスチック包装などを減らすことだ。次に使ったプラスチックを再利用できないか、リサイクルできないかと考えるべきだ。焼却はその後だ。フランスも焼却はしているが、規模を減らす方向だ。

対策として、生分解性プラスチックも注目されている。だがいい考えだとばかり思ってはいけない。生分解性プラスチックのレジ袋が分解しても微細な物質となって自然界に残る。こうした物質が生き物に与える影響について、分かっていない部分がある。

堆肥を作るコンポストで分解できるプラスチックにも関心が集まるが、一定の圧力、温度でしか分解しないなど制限がある場合がある。こうしたプラスチックの袋は、何年間も水の中を漂い、通常の製品と変わらないくらい自然に悪影響を及ぼしかねない。

廃プラスチック問題で大切なのは、対策に向けて進む勢いだ。対策を取っていない国がある一方、動き出した国もある。日本は(レジ袋有料化などを進めており)後者だと思う。

フランスでは若者を中心に廃プラスチック問題に関心が高い。環境対策が欧州の価値観に合っていること、フランスは温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が合意された国で環境問題に特別の関心を持っていることが理由だ。

(聞き手はパリ=白石透冴)

◇ ◇ ◇

■熱利用も選択肢 日本化学工業協会会長 淡輪敏氏

たんのわ・つとむ 1976年早稲田大学卒、三井東圧化学(現三井化学)入社。14年三井化学社長。18年5月に日本化学工業協会会長。同9月に海洋プラスチック問題対応協議会長。67歳。

たんのわ・つとむ 1976年早稲田大学卒、三井東圧化学(現三井化学)入社。14年三井化学社長。18年5月に日本化学工業協会会長。同9月に海洋プラスチック問題対応協議会長。67歳。

海洋に流れ出たプラスチックごみの問題は、データで実証されていない例が多い。海中で細かく砕けたマイクロプラスチックも、人間や魚の体に影響を及ぼすのかどうか不明な点ばかりだ。

とはいえ、海洋プラスチックごみが相当量に上る現実は直視しないといけない。クジラなどの死骸をみて、胃に詰まったごみが原因で死んだのではないかという報道がある。事実ならば、手を打たなければ被害は拡大していく。

業界としても海洋プラスチックごみの実態を調べ、対策に乗り出したいと考えている。化学業界が中心になり、2018年に「海洋プラスチック問題対応協議会」を立ち上げた。

日本の化学業界はこれまで「レスポンシブルケア」と呼び、製品の開発から製造、消費、廃棄、リサイクルの一連の過程に責任を持つ取り組みを続けてきた。海洋プラスチックごみの問題でも、同じ姿勢で対応していく。

ストローやレジ袋など使い捨てのプラスチック製品は減らしていけると考えている。ただプラスチック全体のボリュームを考えると、ストローやレジ袋のウエートは大きくない。残りのプラスチックは発電燃料に使う熱利用を含めたリサイクル率をあげるのが大事だ。

海への流出が多いといわれる東南アジアで、リサイクル体制を整えることが重要だ。日米欧などの化学関連企業が15億ドル(1620億円)規模の基金をつくる計画がある。日本からは三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学の3社が参加を表明した。使途はまだ決まっていないが、東南アジアを中心に調査などを検討している。

プラスチックは優れた素材だ。うまく使えば衛生面や耐久性で利点も多い。食べ物を入れる容器は食品ロスの軽減や流通の効率化に役立っている。車体の軽量化にも欠かせない。燃費の改善、ひいては地球温暖化対策にも貢献する。医療現場でも大事な役割を果たしている。一方的にプラスチックを減らし、何かを犠牲にするのでは意味がない。

プラスチックに替わる素材をすぐに実現するのは難しい。自然環境で分解する生分解性プラスチックの開発も手がけている。土壌中の微生物が分解できれば、ビニールハウスの素材に使える。ごみ袋であれば、生ごみを入れて一緒に堆肥にできる。

ただ、生分解性プラスチックは、まだコストや性能が劣る。概念や定義も曖昧だ。海で溶けるのなら、そのまま捨ててよいか、というとそうではない。生分解性のために耐久性に欠ければ、自動車や電気製品に使えない。

プラスチックを燃やして熱を回収する「サーマルリサイクル」は、温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)が出る。しかし、プラスチックごみを減らすという視点では有用な方法だ。発電効率のよい炉を使えば、環境負荷も減るのではないかと思う。プラスチックごみの処理は国によって事情が違う。埋め立てる土地もないとなると、熱回収して処理する選択が有力になる。

(聞き手は塙和也)

◇ ◇ ◇

■根拠ある目標必要 九州大学教授 磯辺篤彦氏

いそべ・あつひこ 1988年愛媛大学大学院修了、東大博士。生物に影響を及ぼすプラスチックごみ「マイクロプラスチック」研究の第一人者。2014年から現職。55歳。

いそべ・あつひこ 1988年愛媛大学大学院修了、東大博士。生物に影響を及ぼすプラスチックごみ「マイクロプラスチック」研究の第一人者。2014年から現職。55歳。

世界の研究者が海洋プラスチックごみの問題に注目し始めたのはこの5~6年くらいだ。海洋でも海岸でも大量のプラスチックが目に付くようになった。未知の研究テーマとして、同時多発的に興味が高まった。

私が研究を始めた2009年ごろは世界でも関連の研究論文が年に1本出るかどうかだった。ところが3年ほど前には週に1~2本出るようになった。現在は12時間に1本のペースだ。論文が指数関数的な伸びを示し、1990年前後に世界で気候変動問題が脚光を浴びた時に似ている。

6月のG20サミットで、50年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにする数値目標を決めたことは評価できる。プラスチックごみの流出量の多い新興国も加わり、削減への姿勢を世界に示したことは問題解決のために大事なことだ。

ただ「50年まで」という期限に科学的な裏付けはまったくない。根拠なき数値目標だ。この数値目標は今後の科学調査をもとに見直されるべきだ。期限ばかりにとらわれると、まるで先に減らした方が勝ちというような風潮になりかねない。肝心なのは持続的に削減していくことだ。

科学界にも責任がある。汚染状況は分からないことだらけだ。科学界として、国際社会で削減が必要だという合意形成のための根拠を出すことが求められている。

プラスチックが普及したこの50年で、海に流出した量は約2.5億トンと考えられる。しかし、これまでの海面の調査では、証拠がまったく見つかっていない。沈んでいるのか細かく砕けて海を漂っているのか分かっていない。調査はまだ基礎データを調べている段階だ。

この「ミッシング(失われた)プラスチック」を突き止めることが研究者の大きな課題だ。汚染状況がはっきりしなければ対策も打てない。

プラスチックをすべて社会からなくせばいいとは決して思っていない。途上国では安いプラスチックがあるからこそ衛生状態のよい食事や水がとれたり、文化的な生活ができたりすることを知っているからだ。地球環境のためなら(生活水準で劣る国の)弱者を切り捨てていいということにはならないはずだ。

新たな汚染をなくすというが、現実にはできないと思っている。処理体制の優れている日本は年約900万トンのプラスチックごみを、リサイクルも含めてほぼ完璧に処理している。それでも10万トンくらいが処理から漏れている。日本ですらこうなのだから、他国でも処理できずに漏れ出ることを前提に対応を考えるべきだ。

全廃ではなく、社会全体が使うプラスチックの量を減らすことにまず取り組むべきだ。使用量が減れば処理が行き届かない量も少なくなる。

プラスチックごみの流出量が多いのは東南アジアだ。地理的に近く影響も受けやすいのだから、日本はお手本を示さなければならない。市民にも働きかけ、プラスチックに頼らない社会づくりをリードしていくことが大切だ。

(聞き手は安倍大資)

◇ ◇ ◇

<アンカー>賢い利用へ国際連携を

プラスチックは自動車や航空機を軽量化し、燃費を改善して温暖化対策につながる。食品容器や医療製品へ応用し、衛生管理にも役立つ。全廃は現実的な選択ではない。

一方で適切に処分されなかったプラスチックは生態系を脅かす。レジ袋を飲み込んだクジラや鼻にストローが刺さったウミガメの姿は衝撃的だった。

毎年900万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているとの推計もある。調査や回収はそれぞれの国や業界だけでは難しい。

世界共通の環境問題に、地球温暖化がある。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、先進国と途上国が共に危機に立ち向かう。

プラスチックを賢く使い続けるには、ごみ問題を新たな脅威と受け止め、国際社会が連携すべき時機にきている。

(塙和也)

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