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2019年11月19日(火)
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世界で勝てる東京へ 森ビルが挑む五輪後の街づくり

Tokyo2020
2019/9/20 17:00
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高さ330メートルの「メインタワー」を含む3棟の超高層建築を2023年に完成させる(虎ノ門・麻布台プロジェクトの完成イメージ)

高さ330メートルの「メインタワー」を含む3棟の超高層建築を2023年に完成させる(虎ノ門・麻布台プロジェクトの完成イメージ)

東京は来夏、2度目の五輪によって、開催都市として世界の注目を集めるが、その後も都市としての新陳代謝が続く。2020年の先に東京は何を世界に提示できるのか。その答えの一つが森ビルによる東京都港区での再開発「虎ノ門・麻布台プロジェクト」だろう。事業費5800億円の大規模開発を企画した都市開発本部の大森みどり計画推進部長に街づくりの戦略を聞いた。

■東京、アジアの首都に

――東京がロンドンなど世界の主要都市との競争に勝ち抜くために、どんな仕掛けを考えたのでしょうか。

「インターナショナルスクールの『ブリティッシュ・スクール・イン・東京』を誘致したのは目玉の一つ。子供が郊外にバスで通うのではなく、都心で安心して緑に囲まれながら教育を受けられる環境を整備する。才能があって、事業の意欲に富む優秀な人材を海外から迎え入れるために、子供の教育も含め、安心して(東京に)赴任できるようにしたい」

「海外から集まる人が働いて、生活することを重視している一方で、文化施設として延べ床面積9000平方メートルのギャラリーとミュージアムをつくるので、遊びに来ても楽しい。ホテルもあるから海外からのお客も迎え入れられる。虎ノ門・麻布台の新しい街は、東京がコスモポリタンセンターというか、アジアの首都のように変貌するための魅力の一つになれたらよいと思う」

大森みどり計画推進部長は「街のコンセプトをゼロから考えるのは楽しみだった」と語る(東京都港区の森ビル本社)

大森みどり計画推進部長は「街のコンセプトをゼロから考えるのは楽しみだった」と語る(東京都港区の森ビル本社)

――巨大プロジェクトの企画を任されたとき、どのように発想したのでしょうか。

「それまで担当していた虎ノ門ヒルズの開発が一段落した14年に今回のプロジェクトを担当することになった。街のコンセプトをゼロから考えるのは楽しみだったが、計画には4~5年かかるし、その後に着工しても完成するのは10年近く先だから、10年後の未来を見据えて何を提案すべきかについては悩んだ。(英国発の情報誌)『モノクル』編集長のタイラー・ブリュレ氏にも相談し、15年秋ごろに『モダン・アーバン・ビレッジ』という開発コンセプトが固まり、『グリーン』と『ウエルネス(健康)』の2つの柱も明確になった」

■住み続けられる街に

――ウエルネスを柱のひとつに据えた理由は何でしょうか。

「40年代に東京都の高齢者は1.5倍の約412万人になると予測されている。東京は今後も人が集まり続けるだろうが、高齢化は地方都市よりも顕著になる可能性がある。高齢化する東京の中で、ずっと住み続けられる街づくりに必要なものは何かを考えた結果だ」

――健康に関するメンバーシッププログラムを検討しているようですが。

「就業者2万人、居住者3500人という街の中で生活習慣病などを予防し、自然に健康になって、健康寿命が延びる仕組みをつくる研究をしている」

「具体的には医療施設や健診施設、フィットネスクラブ、スパなどを誘致するほか、商業施設の中につくるフードマーケットではウエルネスを意識した食材を手に入れられるようにする。これらの施設はデジタル技術を使った情報プラットフォーム(基盤)でつながるようにして、バイタルデータなどをとって健康を管理する」

麻布台・虎ノ門プロジェクトの商業施設の外観(写真は完成予想イメージ)

麻布台・虎ノ門プロジェクトの商業施設の外観(写真は完成予想イメージ)

――商業施設はロンドン五輪の聖火台などの作品で世界的に著名なトーマス・ヘザウィック氏のデザインを採用しました。どんな経緯だったのですか。

「最初に見たヘザウィック氏の作品は10年の上海万博での建築『種の聖殿』。斬新だと感じた。11年に改装した香港の(高級ショッピングモールの)『パシフィックプレイス』も見た。施設内のトイレもユニークだった。最後のとどめは12年ロンドン五輪の聖火台。(たくさんの炎がせり上がりながら、中央に集まり、1つにまとまっていく演出の)開会式をテレビで見ていた。こんなことを誰がしたのかと思っていたら、これもヘザウィック氏。何度も彼の作品に出合って驚かされた」

「でも、すぐにヘザウィック氏にデザインを依頼しようと決めたわけではない。過去の作品をみれば、実際の設計が非常に難しい作業になるとわかっていたから。辻慎吾社長がヘザウィック氏のスタジオを訪問した段階で『難しい設計になる』と説明した。それでも社長が『ぜひ、チャレンジしたい』と決断し、起用が決まった」

――曲線が強調された外観の商業施設は街のシンボル的な存在になりそうですが、すぐにデザインはまとまったのですか。

「街のコンセプトをヘザウィック氏に説明した後、最初に提案されたデザインには『ちょっと、これは違うな』と思った。アラブの市場みたいなデザインだったから。『東方のイメージというが、ロンドンからみて、東京は東だけど、東京からみれば、(アラブの市場は)西ですよ』といった議論もした。その後、竹林や石庭のようなデザイン案も出てきたが、『これは京都でしょ、東京ですから』と却下。『なぜ、採用できないのか』を説明をしながら、半年ぐらい作業をしているうちに、『これをやろう!』というデザインがまとまった」

報道陣に虎ノ門・麻布台プロジェクトについて説明する森ビルの辻慎吾社長(8月、東京都港区)

報道陣に虎ノ門・麻布台プロジェクトについて説明する森ビルの辻慎吾社長(8月、東京都港区)

――ロンドン五輪後にロンドンは都市としての世界的な評価が高まりました。東京が来年以降、都市としての魅力を高めるためのポイントは何でしょうか。

「タイラー・ブリュレ氏の協力を得て、今回の企画を練っていた段階で、ロンドン、ニューヨーク、パリなどと東京を比較し、都市の特徴などをリサーチしたうえで東京の独自性を出そうとした。東京は(都市インフラなどの)機能が優れているし、体験の多様性もある。東京にはいろいろな街があって、個性があるのは面白い。虎ノ門、麻布台、六本木も、それぞれ土地の持つ歴史や地形は違う。丸の内や渋谷もそれぞれ違う。これらの街がデジタル基盤でつながり、多面的な魅力が合わさっていけば、もっと東京は魅力的になる」

森ビルの虎ノ門・麻布台プロジェクト
森ビルが主導する東京都港区の虎ノ門と麻布台の市街地再開発事業。区域面積は約8ヘクタール。2019年8月に着工し、23年3月に完成する予定。3棟の超高層建築や商業施設が入る低層棟のほか、中央広場などを整備する。30年かけて約300人の地権者との交渉を続け、小規模な木造住宅などが密集していた街を新しくする。
大森みどり
1985年(昭60年)早大理工卒、森ビル入社。六本木ヒルズの設計業務や森アーツセンターの開設準備などを経験した後、タウンマネジメント事業室副室長として、再開発した街のプロモーションやマーケティングを担当。虎ノ門ヒルズの開発では、開業準備室部長として事業計画の指揮をとる。現在は「虎ノ門・麻布台プロジェクト」をはじめとした新規プロジェクトの事業企画・計画を担当。東京都出身。

(聞き手は山根昭)

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日経からのお知らせ 日本経済新聞社は9月24、25の両日、スポーツを軸にした経済の活性化について議論するシンポジウム「チャレンジニッポン」を日経ホール(東京・大手町)で開催しました。24日のテーマは「TOKYOの価値を高める 2020年の先に」。森ビルの辻慎吾社長らが基調講演し、「神宮外苑から考えるスポーツと街づくり」と題したパネル討論も実施しました。25日は「スポーツテック新時代のビジョン」について議論。KDDIの高橋誠社長らが登壇しました。シンポジウムの内容は10月に日経朝刊や電子版の特集などで報道します。

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