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相場急落に備え 株取引のリスク管理
自動売買ツール 賢く使う

2011/5/2付
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊

東日本大震災後、株式相場が急落して損失を被った投資家も多いだろう。一般投資家は一日中相場を見ているわけにもいかず、売却するタイミングが遅れることもある。こうした相場の急変に対処するため、あらかじめ条件を設定し、値動きに応じて自動的に売買を執行する方法を使えば一定のリスク管理は可能だ。証券会社が設けている自動売買ツールの種類やその活用法を点検する。

外国為替証拠金取引(FX)では、含み損が一定額を超えた場合に自動的に反対売買して損失を確定する「ロスカット」機能が一般的だ。株式売買でも同様のしくみがある。

株式の自動売買ツールはインターネット証券各社で違いがあるが、「基本は逆指し値を使うこと」(ファイナンシャルプランナーの横山利香さん)。一般的な株式の売買では、銘柄と数量だけ指定して値段は指定しない「成り行き注文」と、あらかじめ値段を指定して「何円以上で売り」あるいは「何円以下で買い」といった注文を出す「指し値注文」がある。

逆指し値は指し値とは逆に、「何円以下になったら売る」あるいは「何円以上になったら買う」という注文方法。特に、保有する株式の価格が想定を超えて下落したとき、株を売却して損失を確定する「損切り」に便利な機能だ。自動売買ツールは設定した段階では手数料はかからず、約定した時に所定の売買手数料がかかる。

逆指し値を設定

自動売買ツールは、数日から数カ月程度で売買するような、比較的短期で取引をする投資家が利用するように思われがちだが、ネット証券各社は「長期保有目的の投資家も利用したほうがいい」と口をそろえる。

例えば、株価の変動が小さく、景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄の代表格といわれてきた東京電力株。福島第1原子力発電所の事故後、3週間ほどで株価は震災前の5分1程度まで急落した(グラフ)。配当狙いで長期保有する個人投資家が多かったが、今では多額の含み損を抱えたまま売るに売れないという人も多い。

こうしたときに備えて、仮に「株価が1500円を下回ったら売る」といったふうに逆指し値の設定をしていたら、株価がここまで下落する前に売却できていた可能性が高い。

もちろん、逆指し値を設定したからといって希望する価格で売却できるとは限らない。中堅・新興企業など株式市場での取引の少ない銘柄は、注文を出しても買い手が現れない可能性がある。東京電力株のように通常は市場での取引量が多い銘柄でも、注文が殺到してストップ安になった場合などは、注文の多くが約定せずに残ることもある。

自動売買の場合、ストップ安になったときでも、少しでも早く注文が出せるので約定する可能性は高くなる。大量の注文が残ったままその日の取引時間が終わった場合、その時点の注文数に応じて証券会社ごとに売買が配分され、売買割り当てを受けた証券会社は先着順で投資家に割り当てをすることが多いからだ。

マネックス証券では、市場で売買が成立した「約定値」だけではなく、売り注文に対して買い注文が極端に少ない時など、すぐに売買が成立しないときに出る「特別気配」でも逆指し値注文が執行される。損切りの注文をできるだけ早く出したい人には便利な機能だろう。

2つの注文同時に

損切りだけでなく、株価が上昇した時には利益確定もしたいという場合は、2つの注文を同時に出す機能もある。「W指値」(カブドットコム証券)、「逆指値付通常注文」(楽天証券)など、証券会社によって名称は違うが、株価が一定価格以上に上昇した時の売り注文と、逆に一定価格以下に下落した時の逆指し値注文を同時に出せる機能だ。カブコムではさらに、株価が上昇するにつれて、逆指し値の価格を自動的に引き上げ、損失確定の価格水準を高くする「トレーリングストップ」という機能もある。

自動売買ツールを利用する場合は、「注文が失効していないかどうか、注文状況を定期的に確認した方がいい」(横山さん)。注文の有効期間は数日から1カ月程度と、証券会社によって異なるので注意しよう。また、FPの藤川太さんは「株価が下落しているときに、弱気になって逆指し値の価格を引き下げるのはやめるべきだ」と指摘する。含み損が膨らんでくると冷静な判断ができなくなり、当初想定した以上に損失が拡大してしまうことになりかねないためだ。

自動売買ツールは、個別株のほか、上場投資信託(ETF)や先物、オプション取引などで使える。東日本大震災後の3月14~15日に日経平均株価が急落した際、オプション取引で多額の損失を出した個人投資家が相次いだ。「逆指し値を使わずに放置した人が多かった」(カブドットコム証券の臼田琢美執行役)ためという。先物やオプションなどは、証拠金の数十倍に損失が拡大することもあるので、逆指し値で早めに損切りできるようにしておくことが欠かせない。

自動売買ツールとは異なるが、個別銘柄の株価や日経平均などの指数が一定水準に達するとメールで通知するサービスもある。カブコムの「カブコール」は、株式のほか一般の投資信託も対象だ。自動売買ツールのように機動的に売買注文を出すことはできないが、保有する投信などが一定水準を超えて値下がりする場合などに備えて設定しておけば、いざというときのリスク管理に役立つだろう。

(小国由美子)

[日本経済新聞朝刊2011年5月1日付]


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