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競争率20倍 タカラジェンヌになる秘訣ってあるの?

2013/9/29 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 来年、創立100周年を迎える宝塚歌劇団。タカラジェンヌが華麗なステージで夢の世界へいざなう。舞台に立つ方法はただ一つ、宝塚音楽学校(兵庫県宝塚市)を卒業するしかない。入試倍率は約20倍の難関だ。合格の秘訣やノウハウはあるのだろうか。受験事情を探った。

宝塚音楽学校の受験に向けレッスンを受ける生徒(兵庫県宝塚市のスタジオ・トップハット)

宝塚音楽学校の受験に向けレッスンを受ける生徒(兵庫県宝塚市のスタジオ・トップハット)

■OG経営の教室、全国に

まず音楽学校の学校案内を開く。2014年度の募集人員は約40人。応募資格は「容姿端麗で、卒業後宝塚歌劇団生徒として舞台人に適する方」とある。試験は3次まであり、面接のほか、歌唱や舞踊も見る。中学卒業時から高校卒業まで受験機会は4回。独学では難しそう。

元タカラジェンヌの知人から「歌劇団OGが運営する受験スクールに通っていた子が多かった。全国に何十校とあり、関西で有名なのはトップハット」と聞いた。早速、スタジオ・トップハット(同)に向かう。1991年設立、元タカラジェンヌの日比野桃子さんが主宰する。花組トップスターの蘭寿とむさんらを輩出した業界の草分けだ。

「目をイキイキさせましょう! 黒目でA、B、Cと書いてみて」。日曜午後、表現力を磨く「表現クラス」の真っ最中だ。レオタードにお団子頭の女子が11人、懸命に目を動かす。ボイストレーニング、バレエなど週6日のレッスン全てを受講すると月謝は約3万円。高校・大学受験の塾と大差ない。宝塚の舞台に憧れ、親を説得して準備を始める人が多い。

■合格者の共通点「前のめりで、輝いている人」

幼い頃からバレエを習う高校1年生の鈴木美佳さん(仮名)。中学2年から同校に通い、2013年度は2次試験まで突破した。足がスラリと長く整った顔立ち。「次は絶対合格したい。宝塚に入ったら、芯の強い娘役を目指します」

「家族が一丸にならないと受験は難しい」と彼女の母親は話す。低カロリーでたんぱく質豊富な食事を作り、娘が3キロ減量するのを支えた。「試験後、半月ほど落ち込んだが、自らレッスンに戻りたいと言い出した。できる限りしてあげたい」。自身も宝塚ファン、合格は家族の夢だ。

日比野さんによると、合格者の共通点は「前のめりで、輝いている人」。だが、「誰が受かるか、最後まで予測できない」

「探しているのは原石」
岩崎校長は「技術は入学後に教えるので意欲と素質を見たい」と語る(宝塚音楽学校)

「探しているのは原石」
岩崎校長は「技術は入学後に教えるので意欲と素質を見たい」と語る(宝塚音楽学校)

■探しているのは原石、技術より意欲や素質

求める人材を聞くため音楽学校に向かった。岩崎文夫校長は「探しているのは、スターの原石。技術は入学後に教えるので、意欲と素質を見たい」ときっぱり。元月組トップスターの剣幸(つるぎ・みゆき)さんのように、入学時の技術は低くても、才能が花開く例もままあるという。「大切なのは好奇心や向上心。運動神経が良く、素直な子が伸びる」と岩崎さん。

実は、ここ10年で東京、近畿を中心に受験スクールが急増。受験競争の過熱が選考基準に変化をもたらした。「原石」となる人材の受験機会を奪いかねないという危機感が学校側に生まれたからだ。09年に初の入試改革を実施。従来は1次、2次ともあった歌唱と舞踊の実技を2次だけに改め「面接重視」を打ち出した。「以前なら技術が足りず受からなかったかもしれない生徒の中に、頭角を現す人が出てきた」と岩崎さんは改革の手応えを語る。

■2~3回目の受験で合格する人が多い

試験では歌劇団の演出家ら、のべ数十人が面接する。身長制限はないが、13年度の合格者の平均身長は167センチメートル。「容姿端麗」とは「あえて言えば、顔や身体のバランスがとれていること」(岩崎さん)。2~3回目の受験で合格する人が多いという。

音楽学校の時間割を見せてもらうと、バレエや声楽、演劇などの授業がびっしり。「前向きに努力を続けられる人が、舞台の上で輝くんだ」と納得した。華やかさの奥にある宝塚歌劇の原点を見た思いで、音楽学校を後にした。

(大阪・文化担当佐々木宇蘭)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年9月25日付]


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