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マイナンバー法成立 民間・医療での利用先送り

2013/5/25付
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

国民一人ひとりの年金などの社会保障給付と納税を1つの個人番号で管理する「共通番号(マイナンバー)法」が24日、成立した。税の申告や年金の給付申請などで書類添付が要らなくなり、手続きが簡単になる。政府は2018年10月をメドに今回は認めていない民間や医療への利用拡大を検討する。実現すれば医療の効率化や住宅ローン手続きの簡素化などにつながる。

行政分野に限定

マイナンバー法は24日に参院本会議で可決、成立した。15年10月に12ケタの個人番号の通知が始まる。16年1月から番号情報が入ったICチップを載せた顔写真付きの個人番号カードを市町村が希望者に配布し、個人番号で年金の照会などができるようになる。

17年1月には行政機関が個人番号を使って個人情報をやりとりするシステムが稼働する。行政窓口で介護サービスや母子家庭給付金などの手続きが、段階的に添付書類なしで可能になる。自分専用のインターネットサイト「マイ・ポータル」で自分の所得や年金情報を確認でき、添付書類なしで税の確定申告をできる。

ただ、今回のマイナンバー法では個人番号の利用は社会保障や税など行政分野に限定した。医療など他分野は施行後3年をメドに利用範囲の拡大を検討すると法律の付則で定めるにとどめ、先送りした。

医療は、11年6月に民主党政権がまとめた社会保障・税番号大綱では個人番号が医療サービス向上に役立つとしていた。しかし、医師会などが医療の個人情報は別に扱うべきだと反対したため見送った。診療履歴の透明性が高まることへの不安も背景にある。民間での利用には情報漏洩への懸念が強いため先送りした。銀行口座などに個人番号を割り振ることには個人情報の国家管理が強まるとの反発もある。

「今回の制度は役所の効率化だけ。利便性を高めるには施行3年後にどれだけ用途を広げられるかが重要だ」と三菱総合研究所情報通信政策研究本部の中村秀治本部長は指摘する。

効率治療に期待

例えば、医療分野で電子化したカルテを個人番号で管理すれば、どこの病院でも過去の治療歴を確認でき、検査や投薬の重複を減らせる。東日本大震災では被災した病院でカルテが消失し、治療に遅れが出た。個人番号で過去の治療歴を把握できる仕組みがあれば、避難先の病院でも適切に治療できる。

民間分野は本人が了解した範囲で企業が個人番号から顧客情報を得て、公的機関などと情報をやりとりすることが想定される。例えば、所得証明などの添付書類なしにネットで住宅ローン審査に申し込める。本人が同意すれば保険会社が病歴などの情報を番号から得て「個人の事情に合わせたきめ細かな保険商品を作ることができる」(三菱総研の中村本部長)。

税分野でも銀行口座を個人番号で管理して名寄せできるようにすれば、脱税の防止につながる。

反対を乗り越えて利用範囲拡大の検討を進めるには、政府はまず個人情報保護のシステム対応を急ぐ必要がある。

消費増税時の低所得層対策の1つとして検討されている給付付き税額控除も実施にはマイナンバーが不可欠だ。税率が10%に上がる予定の15年10月には間に合わないため、当面は軽減税率の導入を軸に検討する。給付付き税額控除は所得に応じて負担を軽減でき、低所得層対策として軽減税率より効果的とされる。


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