日本経済新聞社

記事利用について
印刷 印刷

iPhone・iPadで施工管理、始まる現場改善 大成建設

2011/11/30付
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 「失われた20年」。建設現場が、低水準の労働生産性にあえいでいる。建設業の生産性は1990年代以降に低下し、いまや製造業の5割程度の水準に落ち込む。生産性向上に必要な解決策の一つが、ITの活用だ。急速に浸透するスマートフォンやタブレット端末を起点とする現場の業務改善が始まった。

首都圏のとある建設現場。大成建設の職員が操作するタブレット端末を、作業員がのぞき込む。画面には図面が映し出された。

大成建設は、米アップルのiPad(アイパッド)やiPhone(アイフォーン)を活用し、建設現場の業務改善に着手した。三菱商事などと組んでアプリケーション「FieldPad(フィールドパッド)」を開発。専門工事会社などと図面を共有するシステムを立ち上げた。4カ所の中規模現場で、配筋検査などを試行している。

大成建設は、大成建設は、工事現場に米アップルのタブレット端末「iPad」を導入。4カ所の中規模現場で「フィールドパッド」を使った業務効率化や省力化を試行している(写真:日経アーキテクチュア)

大成建設は、大成建設は、工事現場に米アップルのタブレット端末「iPad」を導入。4カ所の中規模現場で「フィールドパッド」を使った業務効率化や省力化を試行している(写真:日経アーキテクチュア)

写真は、iPhoneで配筋の施工状況を撮影している様子。現場での図面閲覧を可能にして、専門工事会社などとの情報共有や検査での活用を進め、品質向上につなげる狙いがある(写真:日経アーキテクチュア)

写真は、iPhoneで配筋の施工状況を撮影している様子。現場での図面閲覧を可能にして、専門工事会社などとの情報共有や検査での活用を進め、品質向上につなげる狙いがある(写真:日経アーキテクチュア)


狙いは、時間や場所に左右されずに図面情報を扱えるようにすること。ネットワーク経由でシステムやソフトウエアを利用するクラウドコンピューティング・サービスを活用。サーバーに図面を保管して、iPadやiPhoneと連携する。

■端末1台で図面閲覧から記録作成まで

iPadに着目した理由は、その携帯性と起動速度、操作性にある。回線速度によるが、図面のダウンロードはおおむね10秒以内に完了し、ストレスを感じない。画面を指で操作するだけで、表示された図面が拡大、縮小。全体の俯瞰的な状態から詳細な寸法までスムーズに表示される。

フィールドパッドの画面イメージ。図面上にピンを刺し、写真や動画、音声などの電子ファイルを添付する機能も盛り込んだ。コクヨS&Tがオプションで提供する帳票化サービスを利用すれば、検査記録の自動作成も可能になる。年内に米アップル社が運営する「AppStore(アップストア)」で販売する予定。1500円を支払えば、誰でもアプリの基本機能を使える(写真:大成建設)

フィールドパッドの画面イメージ。図面上にピンを刺し、写真や動画、音声などの電子ファイルを添付する機能も盛り込んだ。コクヨS&Tがオプションで提供する帳票化サービスを利用すれば、検査記録の自動作成も可能になる。年内に米アップル社が運営する「AppStore(アップストア)」で販売する予定。1500円を支払えば、誰でもアプリの基本機能を使える(写真:大成建設)

撮影した工事記録写真を図面と関連付けることも容易だ。報告書を自動作成する機能を使えば、事務所に戻る間に書類を作成できる。事務所に戻ってからの作業から解放され、入力ミスも防げる。

フィールドパッドはまさに"現場の電子文房具"。開発に携わる大成建設建築本部建築部の田辺要平課長は、「特別な研修をしなくても簡単に使えるのが売り」と語る。

■セキュリティーを確保して情報共有

大成建設は2003年から、三菱商事が提供するクラウドサービス「建設サイト」を利用し、図面や書類を支店や現場事務所で共有する環境を整えてきた。だが、工事現場にノートパソコンを持ち込むのは難しく、現場の情報化は遅れていた。

開発プロジェクトを立ち上げたのは3年前。システムの開発・運営には同社のほか、三菱商事、コクヨS&T、フェンリル、ソフトバンクテレコムが参加した。「最新版の図面を、セキュリティーの確保された状態で関係者と共有できる環境整備が不可欠だった」(田辺氏)

設計図や計画図、施工図、製作図など閲覧対象となる図面は、それぞれアクセス権の設定で制御し、各担当者が情報を更新する。最新の図面を表示するため、端末ではデータを保存せず、キャッシュファイル(一時ファイル)で閲覧する仕組みとした。元データが更新されれば、再度、ダウンロードするよう促す。地下や高層階など電波が届かない現場でも閲覧できる。

セキュリティー対策には細心の注意を払っている。アプリ起動時にパスワードを5回連続で間違えて入力した場合、ダウンロードした図面を削除する。端末紛失時にも遠隔操作で図面などを削除できる。

フィールドパッドは年内に販売する予定だ。大成建設の社員や、取引関係がある約5500社の専門工事会社に加え、建設業界全体にも利用を呼びかける。

建設現場の業務改善は待ったなし。品質やスピードを求める発注者の要請は日増しに強まっている。刻々と変わる情報をどう共有していくか。ITを駆使すれば、複雑化する現場業務の生産性を高める余地は大きい。その起点となりそうなのが、急速に普及するスマートフォンやタブレット端末といったデバイスである。

[注]日経アーキテクチュア2011年11月25日号の特集「現場改革にITを」に、本記事の関連情報を掲載。

(日経アーキテクチュア 佐々木大輔)

[ケンプラッツ 2011年11月29日掲載]


本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。