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ひっそり静かに輝く「月型」女優が人気のわけ
日経エンタテインメント!

2013/4/1 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 太陽の光のようにまぶしく輝くのではない。感性の演技によってひっそりと輝く、「月型」女優が今、テレビドラマを席巻している。その背景には、先の見えない社会状況下で、悩みながら一歩ずつ前進していくヒロイン像が共感を得ているといった事情もあるのかもしれない。

1990年代、テレビの連ドラが全体的に高い視聴率を獲得し、キャスティングが重視されていた時代の主演女優には、大衆に強いインパクトを与え、押しの強い存在が求められた。そのため、山口智子、藤原紀香、広末涼子、内田有紀など、華やかでその人自身が光を放つ、いわば「太陽型」とも言うべきタイプの女優が多かった。

だが現在は、人気を集めている女優の特性が、かつてとは大きく変化してきている。

2000年代に入って、シネコンの増加とともに日本映画が上昇気流に乗り、公開作品数が増えると、日本映画の特徴であるシリアスな物語で内省的な性格のヒロインを演じるのがうまい蒼井優や宮崎あおいらが脚光を浴びた。彼女たちは、共演者や監督に照らされて輝く、「月型女優」と呼ぶことができる。

最近は映画で脚光を浴びた「月型女優」が、注目度の高さを買われてテレビドラマでも活躍するようになった(下図を参照)。

例えば、近年、映画にCMに引っ張りだこの吉高由里子や、2013年4月スタートのNHK連続テレビ小説のヒロインを演じる能年玲奈、陰のある美少女役がはまる橋本愛などは、ドラマより先に映画界がその才能に注目した女優たちで、「月型」タイプの持ち味を魅力とする。

NHK朝ドラは、以前は前向きに頑張る「太陽型」のヒロイン像を描くことが多かった。しかし、2012年上半期の「梅ちゃん先生」の主演には、ブレイク作の「野ブタ。をプロデュース」以来、「月型」の魅力で活躍してきた堀北真希を起用。今日(2013年4月1日)から始まる「あまちゃん」では、映画「カラスの親指」で詐欺師を演じ、マイペースなキャラクターの中に秘めた「月型」の豊かな感性が高く評価された能年玲奈が主演する。

■「あまちゃん」で月型女優が競演

NHKドラマ番組部の訓覇圭
チーフ・プロデューサー。『あ
まちゃん』のほか、『ハゲタカ』
『外事警察』などを担当。

NHKドラマ番組部の訓覇圭
チーフ・プロデューサー。『あ
まちゃん』のほか、『ハゲタカ』
『外事警察』などを担当。

「あまちゃん」を手がけるNHKドラマ番組部の訓覇圭(くるべけい)チーフ・プロデューサーは、ヒロインのオーディションを前に「明るいけれど、根っこのところで内向的…という作家の宮藤官九郎さんが描くヒロインを具体化するのはとてつもなく難しい」と悩んでいた。

だが、「能年さんがオーディションの部屋に入ってきた瞬間に、"イメージ通りの子がいた!"と飛び上がるほど驚いた」という。「彼女は今まで会ったことのない独特の存在感。ちょっと既存の言葉では表現できないオリジナリティー。"能年ちゃんぽい"としか言いいようがないんです」と語る。

さらに、「あまちゃん」には、自ら「影のある役が得意」と言う橋本愛も出演。「感性で演技をする女優としての"橋本愛像"を既に確立しているので、そのイメージから一番遠いところにある朝ドラで、かわいらしさや、新しい魅力が出てくることを期待しての起用」と訓覇氏は話す。

訓覇氏はこの二人について、「全くタイプは違うが、素顔は謎めいていた、かつての時代の映画スターのような存在になってほしい」と言う。

2013年1月クール(1月~3月)には、「月型女優」の上昇株の代表と言える剛力彩芽が、人気ノベルシリーズをドラマ化した「ビブリア古書堂の事件手帖」(フジ系)で月9(フジテレビ月曜9時枠)初主演を果たした。剛力は、極度の人見知りをする、観察眼の鋭い美人古書店主を演じた。

不況が続く社会も反映して、先が見えない状況下で悩みながら前進するヒロイン像を得意とする「月型女優」のニーズは、ますます高まりそうだ。

(ライター 高倉文紀)

[日経エンタテインメント!2013年2月号の記事を基に再構成]


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