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天然のサプリメント「大豆」、いま再評価される理由
日経BPヒット総研 黒住紗織

2014/6/19 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。いまを象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のヒットワードは「大豆のパワー再発見」。有効成分の「損失を防ぐ食べ方」と、より「効かせる」商品が登場しています。

長寿国・日本を支える食生活を考えるとき、絶対にはずせないのが大豆の存在。欧米に比べ、日本で乳がん患者や更年期障害が少ないのは大豆消費量が多いおかげ――。こうした研究が進み、「健康食材」として広く知られるようになって久しい大豆。最近そのパワーを"再発見"する製品エビデンスや事例が相次ぎ登場、再び大豆への注目度が高まっている。主な2つの事例を紹介しよう。

■「丸ごと」食べられて、栄養価・うまみの損失が少ない「蒸し大豆」

アミノ酸スコアは100、ビタミン、ミネラルも豊富、栄養素的に足りないのはビタミンCくらいのもの――。「天然のサプリメント」といわれるほど、栄養価の評価が高い大豆。実は栄養面だけでなく、(1)丸ごと大豆なら野菜以上に効率よく食物繊維がとれる、(2)大豆たんぱくには、メタボの原因となる内臓脂肪を減らす作用を持つβコングリシニンという成分が多く含まれ、女性の健康維持に役立つ大豆イソフラボンなど、大豆ならではの機能性成分が含まれる点でも、"有用成分の宝庫"と言っていい。

人気急上昇中の「蒸し大豆」
(写真:松本祥孝)

人気急上昇中の「蒸し大豆」
(写真:松本祥孝)

こうした豊富な有用成分を、なるべく損失させず、より多く食べるにはどうしたらいいのか――。そこで人気急上昇しているのが「蒸し大豆」だ。蒸し大豆製品の千人当たりの金額でみた市場拡大率は、5年前の2009年に対して425%、2013年に対し、1月から4月までの4カ月ですでに138%の伸びだという(KSP-POS調査)。

食物繊維まで丸ごととれるものといえば、納豆や水煮大豆もあるが、納豆は食べるシーンが限定される。一方の水煮は、調理用の食材という点で同等に思われがちだが、実は水に有用成分が溶け出て減ってしまっているのだ。そこで「蒸し大豆」というわけだ。

市場でのトップシェアを持つ「蒸し大豆」「納豆」「水煮大豆」製品の100グラム中に含まれる栄養素を調べた結果が表1。「水煮大豆」と比べ、栄養素や健康成分の量は「蒸し大豆」が多いのが一目瞭然。たとえば、大豆イソフラボンは1.26倍、ストレス緩和効果のあるギャバは7.67倍、塩分調節に役立つカリウムは2.57倍、脂質代謝に働き、ダイエットに欠かせないビタミンB1やB2は1.56倍、1.8倍という具合。

身近な大豆製品 100グラム中に含まれる栄養素はどれくらい?
蒸し大豆水煮大豆納豆
たんぱく質15.5g11.4g15.9g
ビタミンB10.14mg0.09mg0.08mg
ビタミンB20.09mg0.05mg0.23mg
ビタミンE1.4mg1.3mg1.2mg
ビタミンK9μg8μg759μg
カルシウム81.0mg110mg84.9mg
マグネシウム107mg62mg94.0mg
2.52mg2.09mg2.55mg
カリウム704mg274mg699mg
食物繊維6.7g6.7g7.1g
大豆オリゴ糖1.42g0.79g-
レシチン572mg575mg864mg
ギャバ23mg3mg2mg
葉酸76μg44μg160μg
イソフラボン78mg62mg51mg

表1 日経POSでのトップ商品での比較(データ:日本食品分析センター)

実は、水煮大豆の含有量に勝っている成分はみな水溶性。その点、蒸し大豆は栄養素の損失が少なく済む。しかも、食べ比べてみるとすぐ分かるが、蒸し大豆のほうが水煮に比べてうまみが濃い。これはうまみ成分のグルタミン酸も水溶性で、水煮大豆に比べて2.86倍(日本食品分析センター)も多く残っているから。ほくほくして素材の味も、うまみも濃いので、調理せずそのままおつまみとして食卓に出してもいい。

おいしく、しかも健康成分の量が多いとなれば放っておかれるはずがない。2014年2月にはNHK『あさイチ』でこうした点も取り上げられ、「とても反響が大きかった」と話すのは、蒸し大豆製品トップシェアをもつ小倉屋柳本の広報担当者。ただ、テレビで取り上げられた食品は一過性のブームに終わることも多いが、「蒸し大豆は一過性ではなく、出荷数も高止まりしている点が違う」(同社)。

蒸し大豆の効用を知ったある女性経営者は、おやつや残業時の一時的な空腹を満たすための間食用に事務所に蒸し大豆を常備、スタッフに好評だという。「糖質制限をしたい男性は、蒸し大豆は腹持ちがよく、たんぱく質も食物繊維も多い点が特に気に入っているよう。若い女性は、ちょっと何かつまみたい時にお菓子を食べるより安心感があるうえ、普段の食事の栄養バランスの偏りを改善してくれるという一石二鳥のメリットを感じているようだ」と話してくれた。

小倉屋柳本でも、社員の間食用に「蒸し大豆」を推奨。そのうえで健康診断の結果の変化を調べ始めているという。現時点で、内臓脂肪が減った、血液検査の数値が改善したなど、生活習慣病予防の効果が出ている社員もいるという。

これまで「蒸し大豆」そのものの存在や、その有用成分の豊富さを知らなかった消費者が、「どうせなら、より体にいいものを」と、水煮の代わりに蒸し大豆にスイッチしたり新しい食材として活用し、"出荷数の高止まり"を支えているに違いない。

「やわらか蒸し大豆」
(120グラム、132円。マルヤナギ 問0120-15-1456)

「やわらか蒸し大豆」
(120グラム、132円。マルヤナギ 問0120-15-1456)

「ポクポク蒸かし豆鶴の子大豆」
(140グラム、320円・編集部調べ。杉野フーズ 問011-214-1008)

「ポクポク蒸かし豆鶴の子大豆」
(140グラム、320円・編集部調べ。杉野フーズ 問011-214-1008)


■大豆イソフラボンの"進化形"成分「エクオール」

「エクエル」は通販のほか、調剤薬局などで販売を開始。112粒入り4000円(税別)

「エクエル」は通販のほか、調剤薬局などで販売を開始。112粒入り4000円(税別)

「蒸し大豆」は大豆"全体"の有効成分を丸ごととることを訴求する商品とすれば、こちらは大豆ならではの有効成分「イソフラボン」にフォーカスし、その効き方を徹底的に追求した、いわば"部分"にこだわった商品だ。それが「エクオール」。エクオールは、大豆イソフラボンがより強く効く形に進化させた成分なのだ。

冒頭で紹介したように日本人の乳がん罹患率や女性の更年期症状の程度が欧米に比べて低いのは、女性ホルモンのエストロゲンのように作用する大豆イソフラボンの効果。ほかにも、閉経後の骨粗しょう症を予防したり、月経のある女性の月経前症候群(PMS)を改善する、男性の前立腺がんも予防するなど、大豆イソフラボンは性ホルモンのバランスを整え、健康維持に寄与する。

そこで、こうした病気予防のためにも大豆食品の摂取が推奨されているのだが、実はイソフラボンを食べたとき、その「効き目が出やすい」人と「効きにくい」人がいることが分かっていた。「効き」を左右するのは、その人の腸内細菌叢の状態だ。食事でとったイソフラボンは腸の中である種の細菌に代謝され、「エクオール」になって吸収される=効果を発揮する。つまり、エクオール産生菌が腸の中に多い人はイソフラボン効果が得やすいということが分かってきたのだ。

ちなみに、欧米では約3割の人しかエクオール産生菌を持っておらず、日本では年配者では約5割が産生菌をもっているが、若年者は2割程度しか産生菌をもっている人がいなかったという。

大塚製薬は18年前から研究を開始。エクオール産生に関わる腸内細菌を探しだし、大豆を乳酸発酵させて「エクオール」を作ることに成功した。サプリメントとして欧米で先行発売し、今年春、ようやく国内での発売にこぎつけた。エクオールのサプリは、女性ホルモンに関わる不調の解消にホルモン製剤を使いたくない人や、大豆食品そのものや、イソフラボンを摂っても効果を得にくい人を助ける成分として医療関係者からも期待が高い。

「ソイチェック」 
 エクオール産生者かどうかが、尿検査で10日ほどで簡単に結果が分かる郵送検診キット(4104円・税込、ヘルスケアシステムズオンラインショップ問03-5281-9811)

「ソイチェック」 
 エクオール産生者かどうかが、尿検査で10日ほどで簡単に結果が分かる郵送検診キット(4104円・税込、ヘルスケアシステムズオンラインショップ問03-5281-9811)

「ソイチェック」の内容物

「ソイチェック」の内容物


そうなると、自分がエクオールを作れる菌を持っているかどうかを知りたくなるだろう。ご安心あれ。エクオール産生能が高いか低いかを調べる検査(尿検査)も登場している。この検査の結果、万一、イソフラボンが効きにくい腸内環境だとわかったなら、エクオールサプリを試してみる人も出てくるだろう。

おなじみの素材や食品でも、その調理法や成分の徹底的な追求によって、マーケットは新しく開拓できるのだ。

黒住紗織(くろずみ・さおり)
 日経BPヒット総合研究所主任研究員。日経BP社ビズライフ局プロデューサー。サンケイリビング新聞社を経て、90年、日経BP社入社。『日経レストラン』『日経ベンチャー』などの記者を経て、2000年より『日経ヘルス』編集部。その後『日経ヘルスプルミエ』編集部 編集委員など。女性の健康、予防分野の中で、主に女性医療分野を中心に取材活動を行う。

[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。


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