日本経済新聞社

記事利用について
印刷 印刷

浅草で外国人旅行客取り込め
ゲストハウス5社がネットワーク

2013/5/3付
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 東京の浅草を中心とする隅田川流域は、低予算で旅を楽しむバックパッカーのための宿が集まる場所。宿泊料金は1泊3000円台が多く、長期滞在者も多い。ここに立地するホステルやゲストハウスが「東京ホステルネットワーク」を立ち上げた。それぞれの宿が持つ海外からの個人客受け入れノウハウを集め、サービスの向上を目指す。アジア各国とのLCC(格安航空会社)路線の増加が追い風となり、ホステルを利用する外国人旅行客が目立つ。彼らの心をつかみ、リピーターを増やそうとしている。

東京ホステルネットワークの小澤弘視代表

東京ホステルネットワークの小澤弘視代表

■役立つ情報まとめた観光地図

 「個人の旅行客にとってプラスアルファの価値をどれだけ提供できるかが、旅の醍醐味になる」。東京ホステルネットワークの代表で、「Khaosan Tokyo Kabuki(カオサン東京 歌舞伎店)」などゲストハウスを経営する万両(東京・墨田)の小澤弘視社長は話す。

 最初に取り組んだのがバックパッカー向けの観光情報をまとめた「Sumida River Backpakers Map」の制作。ネットワークに参加する浅草や蔵前、墨田区西部の隅田川沿いの9つの宿がフロントで宿泊客に勧めて好評だった飲食店のほか、宿を起点にしたツアーやイベント詳細、Wi-Fiスポットの情報など役立つ情報を掲載している。それぞれの宿や墨田区の観光案内所で配布している。

 2011年3月の東日本大震災直後に外国人客が急激に減ったのがネットワーク設立のきっかけだ。小澤さんは自社の例をあげながら当時を振り返る。4月末まで9割以上が予約で埋まっていたが、震災直後からキャンセルが相次ぎ、日によっては稼働率が2割を下回る日まであったという。国内の旅行客を掘り起こそうとするなか、自然に情報共有の輪が広がり、宿同士の横のつながりができた。

 12年5月、墨田区に東京スカイツリーも開業。モバイル端末でネットに接続する観光客向けにWi-Fiスポットを地図にまとめる企画が持ち上がった。その発行元として今年3月に東京ホステルネットワークを設立した。

 割安な料金で宿泊できるバックパッカー向けの宿。外国人旅行者の利用が多い(東京都台東区のカオサン東京 歌舞伎店)

 割安な料金で宿泊できるバックパッカー向けの宿。外国人旅行者の利用が多い(東京都台東区のカオサン東京 歌舞伎店)

 NTTドコモのギャラクシーノートを活用、外国人向け観光端末の貸し出しも始める。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレットを利用する観光客も多いが、Wi-Fiスポットだけで隅田川を挟んだ広い観光エリアをカバーするのは難しいためだ。テザリングもできるタブレット端末を貸し出し、ツイッターやフェイスブックで地域の情報をリアルタイムで発信してもらう。「現地からのリアルタイムの情報は拡散しやすい」(小澤さん)。端末は「カオサン東京歌舞伎店」など4店で貸し出している。プリペイド式の格安電話アプリ「Brastel」(英、仏、韓国語など対応)、墨田区や台東区の街歩きアプリ「Sora Walker」(英語対応)など、外国人向けに便利なアプリをインストールしている。料金は1日500円。

■円安も追い風に

 円安を追い風に日本を訪れる外国人の増加が続いている。日本政府観光局(JNTO)が発表した3月の訪日外国人客数は前年同月比26%増の85万7000人。単月では過去2番目となった。小澤さんの経営するカオサングループの宿の4月の稼働率も95%を超える。LCCを利用すれば韓国やタイ、マレーシアから片道1万円以内で日本に旅行できるようになったことが追い風となり、「震災前よりも勢いがある」(小澤さん)。LCCを利用する観光客はパッケージツアーに頼らず、自分で格安の宿を手配し旅を楽しむという。

 観光庁は東南アジアからの訪日客数を13年に100万人へ12年比28%増やす計画だ。バックパッカーは若く、学歴の高い人が多い。観光だけでなく、将来はビジネスでも深く日本にかかわってくれる期待もあり、アジアの若者を取り込む意義は大きいとみている。各宿が地域の人を巻き込んで開いているまち歩きなどのイベントへの参加も積極的で、地域活性化にも一役買っている。墨田区観光協会の友野健一さんは「大きなホテルと違い、小さい宿は中は狭いが現地とのつながりが濃い。イベントの企画も豊富だ」と指摘する。バックパッカーは滞在時間も長く、「墨田区の伝統工芸に触れる機会も増えるなど、親和性が高い」と期待する。今回の取り組みを土台に小澤さんは「外国人観光客との交流のビジネスモデルを作りたい」と話している。

(村野孝直)


本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。