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「新国立」整備計画に新たな目付役

2015/8/21付
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日経アーキテクチュア

2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の整備計画がゼロベースから再検討となったことで、政府は2015年8月14日に関係閣僚会議を開き「施設の機能を原則、競技機能に限定」「屋根は観客席の上部のみ」といった見直し案の基本方針を示した。

新国立は2020年春までの完成を目指す。政府は競技場の設計・施工を一体化することで、整備に必要な期間を圧縮。2016年1月を目途に基本設計に着手する考えだ。

政府は8月中にも競技場の機能や整備費の目標額を盛り込んだ新しい整備計画を示す予定だ。この計画に基づいて、事業主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)は、9月初め頃に公募型プロポーザル方式(設計交渉・施工タイプ)による公募を開始する。

設計交渉・施工タイプでは、技術提案によって設計・施工に関わる優先交渉権者を選定。設計段階、施工段階の2段階に分けて契約する。

日本スポーツ振興センターは9月初めをめどに、公募型プロポーザル方式による公募を開始する

日本スポーツ振興センターは9月初めをめどに、公募型プロポーザル方式による公募を開始する

ザハ・ハディド・アーキテクツのデザインによる新国立競技場の整備計画では、JSCによるコスト管理が不十分だったため、整備費が大幅に膨らんだ経緯がある。

そこで政府は建築の各分野の専門家が参画する「新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会」を8月14日にJSC内に設置。8月17日に委員会の初会合をJSC本部で開催した。

■専門家の視点でコストや工期を検証

委員会は7人で構成。委員長を務めるのは建築環境が専門の村上周三・東京大学名誉教授だ。

このほか、建築家の香山壽夫・東京大学名誉教授と工藤和美・東洋大学教授、鉄筋コンクリート構造など建築構造が専門の久保哲夫・東京大学名誉教授、景観やランドスケープに明るい涌井史郎・東京都市大学教授、建築生産が専門の秋山哲一・東洋大学教授がメンバーとなっている。

東洋ゴム工業の免震偽装問題に関する国土交通省の第三者委員会で委員長を務める深尾精一・首都大学東京名誉教授も加わった。

準備段階では諸条件を審議、選定ではコストや技術について検証する

準備段階では諸条件を審議、選定ではコストや技術について検証する

技術提案等審査委員会の果たす役割は3つ。まずは8月中の公募準備段階で、政府の作成した見直し案の基本方針に基づいて、公示内容や業務要求水準書といった募集条件を審議・作成する。

次に9月上旬から優先交渉権者を募集・選定する期間には、応募者からの技術提案を審査・評価する。優先交渉権者が決定し、基本設計や実施設計に取り掛かった段階では、価格の妥当性などを検証する。専門家の視点から工期が間に合うか、コストが膨らまないかに目を光らせる役割だ。

優先交渉権者の選定の主体はあくまでJSCとなるが、技術提案等審査委員会の検証を通じて決定する。委員会での審議内容は透明性を確保するために極力公開する方針だ。もっとも、政府が検討する整備計画についても時間が限られているため、技術提案等審査委員会のメンバーは内閣官房に設置された「整備計画再検討推進室」にオブザーバーとして参加しているという。

村上委員長は会合後の会見で、「工期に間に合うよう保証したい」と述べた。そのため「デザインは自由だが、どうやって工事を進めるかを検討した提案をしてもらう」と説明した。

(日経アーキテクチュア 江村英哲)

[ケンプラッツ 2015年8月21日掲載]


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