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女性と働く…意思疎通に壁 男女差踏まえ対話を

2015/4/18 6:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 「女性管理職を増やそう」との掛け声のもと、今春は様々な職場で女性の新人や新任管理職の姿が目立つ。一方で女性社員とうまく意思疎通できず「女性とは働きづらい」と悩む声が聞こえる。

 「女性社員に支持されるリーダーに必要なこと」。4月9日、化学大手の宇部興産は山口県宇部市でこんな題のセミナーを開いた。

 対象は係長以上の管理職だ。女性講師が「女性と男性の脳の違い」を説明し、男女の発想の仕方の違いを解説した。「もやもやしていたが、多少整理できた」「もう少し遠慮しないで女性社員と接してみたい」と好評だったという。

 同社は2013年度から、新卒総合職に占める女性比率を2割以上にする目標を掲げた。全社の女性比率は6%とまだ低いが、今年4月に入社した46人のうち、女性は12人。新卒に限れば26%となった。

 総合職女性は研究所などへの配属が中心だったが、07年に初めて女性の新入社員を工場に配属。以降、毎年1人は女性新人を工場に配置する。「現場の戸惑いは正直あった」(坂本靖子ダイバーシティ推進室長)。セミナーは男性の意識改革を狙った。女性社員の割合が低かった業界では、男性向けにコミュニケーションギャップを埋める取り組みが重要になってきた。

■「働くなら男性」4割

 一緒に働くなら異性である女性よりも、同性である男性との方がよい――。4月中旬、日経電子版の会員を対象に調査(有効回答数405)したところ、男性の43.8%からこんな回答が返ってきた。女性との方が働きやすいと答えた男性は、5.7%どまり。

 なぜなのか。調査では「男性との方が気を使わない」(52歳)、「男性の方が上下関係をわきまえており、お互いに対処しやすい」(58歳)などの理由が寄せられた。男性中心の職場で女性と働くことに慣れておらず、過去のビジネス慣習が通じる相手と働きたい、と考える人が多いことがうかがえた。

JFEスチール入社式で社長のあいさつを聞く女性の新入社員ら(東京都千代田区)

JFEスチール入社式で社長のあいさつを聞く女性の新入社員ら(東京都千代田区)

 しかし女性社員を敬遠していては、女性活躍は進まない。JFEスチールは新入社員に指導・助言役のメンターを配置、管理者層にコーチング研修をする対策を始めた。男性の職場というイメージが強い鉄鋼業界だが、新卒女性は増えている。4月入社の新入社員の14%が女性で、事務系に限れば4割に上る。

 ダイバーシティ推進室の社員が女性社員とその男性上司に個別に面談。「双方の意見をくみ取り共有化して、より円滑なコミュニケーションの実現を目指す」

■女性同士も働きづらく

 職場のコミュニケーションギャップは異性間だけではない。日経電子版の調査では、同性である女性よりも、異性である男性との方が働きやすいと答えた女性の割合は40.6%。女性とが働きやすいとしたのは7.5%にとどまった。

 「男社会の中で働くには男性相手の方が仕事がしやすい」(48歳)といった現実的な意見のほか、「子どもがいても徹夜が当たり前のような女性が、自分並みのハードワークを押しつけてくる」(49歳)など、モーレツ型の女性管理職への抵抗感を挙げる人もいた。

 女性登用を進める企業ほど、女性同士の上司と部下とのコミュニケーションが重要になってきている。

打ち合わせする坂ノ上潤子さん(中)(東京都江東区の第一生命保険)

打ち合わせする坂ノ上潤子さん(中)(東京都江東区の第一生命保険)

 「私は知識がないので助けてほしい」。第一生命保険の坂ノ上潤子さん(41)は4月に団体保険課長に就任すると、真っ先に年上の女性の部下に頼んだ。異動して仕事の内容が変わり、素直に経験豊富な部下に頼ることが重要だと考えた。

 坂ノ上さんの約60人の部下は全て女性。キャリア志向が強い人もいれば家庭とのバランスを重視する人もいる。同じ女性でも多様な価値観を持つ相手とよい関係をどう築くかが課題だ。上司から相手の懐に飛び込むことを大切だと考える坂ノ上さん。自席にはほとんどおらず、いつも部下の机を巡り話し込む。「他愛のない会話でも『わかる、わかる』といった共感があれば信頼が深まる」と話す。

 第一生命の今春の新任管理職の約半数が女性。管理職全体では19.5%を占める。営業職の9割以上、内勤でも6割が女性だ。

 管理職の能力に性差はない。それでも、人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室長の柏崎美樹さん(43)は「女性部下の方が女性上司を見る目が厳しいかもしれない」と話す。自分だったらと置き換えられるため「私ならもっとできるのに」とハードルが高くなる傾向があるという。

 「男性の部下は上司の指示だと仕事と割り切って動いてくれるケースも多い」(柏崎さん)。女性には、なぜこの仕事が必要なのか、自分のキャリアにどんなプラスになるのかを説明した方がよいという。柏崎さんは面談の際に部下から恋愛相談を受けることがある。「女性の場合は上司と部下という縦の関係でなく、フラットな関係を築くことが仕事にもプラスに働く」と柏崎さんは強調する。

 では女性と仕事をすることに苦手意識を持つ人が職場にいたらどうするか。

■多様性を認め合う職場に

 脳の感性の男女差について研究している感性アナリストの黒川伊保子さんによると、男性職場で信頼を得るには「まず結論から説明し、『要点は3つです』と話のポイントを数字で示す工夫が必要」。女性は結論を説明する前に延々と経緯を述べる傾向があるが、結果がすべてと考える男性には、言い訳や愚痴に聞こえてしまうという。一方で女性には相手の言葉を反復することで、共感を示す。

 ダイバーシティーとは多様であることを意味する。男性中心の画一的な価値観になりがちな風土を変え、性別にとらわれず、多様さを認め合う職場へと脱皮していくために、互いの価値観を衝突を恐れずにぶつけ合う――。女性社員の増加を、そんな試みを進めるチャンスと捉えたい。

(生活情報部次長 武類祥子、田中裕介、庄司容子)


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