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「赤いウメ」で和歌山の産地活性化(次代の創造手)
和歌山県うめ研究所主任研究員 竹中正好さん(52)

2015/2/5付
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

「これまでない加工品、見いだす」 産学官チームで商品化後押し

 和歌山県みなべ町と隣の田辺市はウメの一大産地で、生産量は国内のほぼ半分を占める。同町には和歌山県が運営するウメに特化した研究施設「うめ研究所」がある。新しい品種の「赤いウメ」を通じて産地の活性化に取り組むのが主任研究員の竹中正好だ。

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 研究所内で異彩を放つのは新品種「露茜(つゆあかね)」の真っ赤な果実だ。一般のウメは木になっている時は緑であるのに対して、外見も中身も赤い。国の果樹研究所がスモモとの掛け合わせで育成した品種だが、生産や加工の技術は発展途上で、竹中は普及の先頭に立つ。

ウメの赤さを追求するうめ研究所の竹中さん(和歌山県みなべ町)

ウメの赤さを追求するうめ研究所の竹中さん(和歌山県みなべ町)

 和歌山の産地の主力品種「南高」の主な用途は梅干しだ。梅干しの消費低迷などが影響し、取り巻く環境は厳しい。露茜について、竹中は「ジャム、ジュレといった新たな活用先がある。赤ワインのような梅酒は十分アピールポイントになる」と力説する。酒造会社などと2015年度中の商品化を目指している。

 出身は和歌山県。大学で農業を学んだ後、農水省に採用となり、県外で働いた。地元が恋しくなったことから、和歌山県職員に転職した。うめ研究所の勤務となったのは07年。日本一の産地の活性化に力を尽くそうと決意した。

 着目したのが09年に品種登録されたばかりの露茜だった。肉質はパサパサで梅干しには向かないが、赤い色素が魅力だった。まず、農家への導入を促す栽培技術の安定に取り組んだ。

 赤みが増すのはどのくらい日に当てた場合か。どの程度剪定(せんてい)するのが着色に有効かなど特徴を引き出すため実験を重ねた。収穫後でも、果実が熟すときに発生するエチレンガスを使うことで、赤い色素(アントシアニン)を増やせることを発見した。

 果実が南高に比べ、約4倍のポリフェノールを含むことも分かった。だが「研究所だけでできることは限られる。加工品の試作などはできない」。生産と加工が一緒に動き出す仕組みをつくろうと、産学官の研究チームを仕掛けた。

 得意分野を持つ機関に協力を求めた。苗木などの育成で徳島県や宮崎県の試験研究機関、機能性評価では近畿大学生物理工学部、果汁を使った加工食品の開発では酒造会社の中野BC(和歌山県海南市)といった具合だ。13年度に農水省の研究事業への採択を受け、15年度まで3年間の共同研究が進む。

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 JA紀州みなべいなみの清川出荷会もメンバーだ。山あいの清川地区はウメの開花、出荷が遅くなる。脱「南高」により、過疎化が進む地域の活性化につなげようと、食品メーカーが関心を寄せる露茜の産地化に着手した。竹中は講演会や講習会を開き、接ぎ木のやり方や剪定の方法などを指南した。清川出荷会の山本茂は「生産量はまだ1トンあまりだが、すでに半分近い農家が取り組んでおり、2~3年で倍に増えそうだ」と期待する。

 竹中は農家や関連産業の支援を念頭に置く。「今、生産量は2トンぐらい。増えれば加工品のアイデア、技術も一気に上がる」とみる。自分の役割について「これまでにない加工品を見いだすこと。赤は海外でも受け、輸出商品としても期待できる」と強調する。赤いウメとの格闘はこれからも続く。=敬称略

(和歌山支局長 土田昌隆)

<ばっくぼーん>仕事でウメの重要性認識
 ウメやかんきつ類の産地である和歌山県の生まれですが、実家は農家ではありません。これといった目的があって大学の農学部に進んだわけではなかったのです。園芸農学科にはかんきつ類の有名な先生の研究室がありましたが、私が選んだのは畜産で、そこで飼料作物の研究をしていました。
 ウメとの接点は「配属されたから」で、最初から関心があったわけではありませんでした。農業改良普及員など県職員として仕事をしながら、特産品としての重要性に気づくことができました。それでもウメとの付き合いは22年。ミカンやカキ、モモに目移りしないということは、面白いと感じているからです。


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