日本経済新聞社

記事利用について
印刷 印刷

HISのクーポンアプリ 韓国・中国語に対応

2016/10/8 6:30
ニュースソース
日経MJ

 エイチ・アイ・エス(HIS)が観光施設の電子クーポン市場を開拓している。名称は「HISクーポン」で、スマートフォン(スマホ)上などでクーポンをもらえる。このジャンルの先駆けとして他社にない公立の動物園なども取り込んでおり、全国約3500にものぼる施設で使える。利用も年100万人超に達する勢いだ。

クーポンの残り枚数と発行時間がカウントダウンされる

クーポンの残り枚数と発行時間がカウントダウンされる

 「横浜・八景島シーパラダイス 最大650円割引」「しろとり動物園200円割引」――。スマホ向けのHISクーポンで検索すると、水族館や美術館などのクーポンがずらりと並ぶ。枚数限定、時間限定で、サイトでは刻々と発行終了までのカウントダウンが進む。

 中には札幌市営の円山動物園など公立施設も。「最初の頃はこれらの施設を口説き落とすのが大変だった」と、新規事業開発室の村松知木室長は漏らす。

 同社がHISクーポンを全国で始めたのは、2011年。当時、スマホに搭載された全地球測位システム(GPS)の位置情報を使って近くの店のクーポンをもらえる仕組みは、飲食店を対象としたものぐらい。観光施設に特化したサービスはほぼ無かった。村松氏は大きな商機を感じ、事業を興すことにした。

 だが、「紙の神話は根強かった」。紙の観光パンフレットをつくるのならいざ知らず、効果もよく分からない電子クーポンなどもってのほかと門前払いされるケースもよくあった。

 村松氏は全国を行脚。旅行の前と後に消費者にアクセスでき、雨天などの状況に応じてクーポンを送れる強みを自治体などにこんこんと説いて回った。現在はクーポンを配信する約3500施設と情報発信のみを行う施設を合わせ、HISクーポンを通じて誘客する施設は1万2千施設にものぼる。

 JTBが昨夏、スマホで入場券を購入し、画面に表示して入場できる「パスミー」を始めている。しかし、他の類似サービスと比べ、HISの掲載施設は群を抜く。「クーポンの種類も多く、家族連れの旅行では節約に大活躍した」などという利用者の声もある。

 掲載施設の多さが利用者を呼び込む好循環を生んでいる。村松氏の調べによると「利用者アンケートでは回答者の8割が当初、HISクーポンを知らなかった」。利用者が検索エンジンに観光施設名を入れると、掲載施設の多さや口コミなどによって上位に表示され、HISクーポンに自然にたどり着いた。

 新たな展開も狙う。3月、異業種と組み、自治体向けに観光客誘致のプロモーションを手掛けるコンソーシアムを立ち上げた。ここでもクーポンの仕組みを活用。連携企業が持つ技術を採り入れ、販促ツールとしての進化を試みる。

 多言語翻訳技術を使って、HISクーポンアプリを韓国語、中国語など閲覧者が使う言語でスムーズに表示できるよう開発している。観光施設は、労せず訪日外国人客にPRできるようになる。

 HISの国内旅行は後発で、取扱高は年600億円足らず。いまだ、1兆円を超えるJTBの約5%にすぎない。そんな中、競争が激しい地方の観光振興支援ビジネスでシェアを奪えるか。地方が関心を寄せる訪日客ビジネスに役立つ仕組みに進化を遂げられるかが問われる。(新沼大)

[日経MJ2016年10月5日付]


本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。