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シス・カンパニー「グッドバイ」 哀感あふれるラブロマンス

2013/12/20 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 夕刊

シス・カンパニーの新シリーズ「日本文学シアター」の第1弾は、太宰治の未完小説に着想を得て北村想が書いたラブロマンス「グッドバイ」。昭和のレトロ的な雰囲気が漂う中、叙情的で哀感にあふれながらウイットもある。小劇場系の寺十吾(じつなしさとる)が演出、懐かしいぬくもりを感じさせる。

大学で哲学とミステリー文学を教える黄村(こうむら)先生(段田安則)には愛人が8人いる。愛人整理の必要に迫られ、助手の渡山(柄本佑)の提案で女性秘書、理七(りな)(蒼井優)を雇った。美人の彼女と結婚すると言って愛人との関係を清算するたくらみだ。太宰の原作にある設定を巧みに生かした。

後は、太宰のほかの作品から引用したり、屋台の飲み屋が出てくる大衆的な情感など北村らしい味付けの世界となっている。黄村と理七が交わす屋台の会話に、屋台の主人(半海一晃)、太宰もどきの男(高橋克実)、流しの女(山崎ハコ)が加わって屈曲のある人生模様がつづられる。

段田が演じる黄村は、どこまでまじめで、どこまでふざけているのか、虚々実々の演技で舞台に弾みが出る。これを受ける蒼井とのコンビはぼけと突っ込み漫才の体。死別した前妻を忘れられない黄村の真摯な思いにほだされて、実は助手の婚約者という立場から、黄村が気になっていく変化を見事に演じている。今回は河内弁を話すなど、こわいもの知らずに挑戦していく蒼井の姿勢がたのもしい。高橋のおとぼけぶりも面白い。

舞台美術(松井るみ)は漫画チックな趣向。屋台などはリアルだが、背景の電柱や塀は白描の粗い線で表現され、1コマ漫画のセリフが夜空に浮かぶ。最後は北村のロマン主義的資質が花を咲かせる。28日まで、シアタートラム。

(文化部 河野孝)


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