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4年に一度のうるう年 実は省くこともある

2012/2/29 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊

からすけ 今年は4年に1度のうるう年だから、2月が29日まであるんだよね。1日多いって、何だか得(とく)する気がするなあ。
イチ子お姉さん 今の暦(こよみ)の数え方でうるう年に増えるのは1日だけど、昔の日本では1カ月まるごと増やしていた時代もあったのよ。

■暦と季節のずれを調整

からすけ 1カ月!? 昔はどんな暦を使っていたの?

イチ子 1年が365日の今の暦は、太陽と地球の位置をもとにする太陽暦(たいようれき)で、日本では明治時代のはじめに使い始めたのよ。それまで使っていたのは旧暦(きゅうれき)とも呼ぶ太陰太陽暦(たいいんたいようれき)。太陰は、太陽に対して月のことをいうときの言葉で、太陰太陽暦は月の満ち欠けをもとに、太陽の動きも考えてつくった暦よ。

からすけ どんなふうに日にちを数えるの?

イチ子 月が見えなくなる新月から次の新月までは約29.5日。1カ月が30日の月と29日の月を組み合わせて1年を12カ月としたの。ただ、これだと1年は約354日。太陽と地球の位置で決まる季節は約365日の周期(しゅうき)で変化するから、年々、暦と季節がずれていくわ。このずれを調節するために何年かに一度、うるう月をつくるのよ。

からすけ その年は1年が13カ月になるってこと?

イチ子 そう。19年に7回程度の割合でうるう月を入れるとずれが解消されるそうよ。

からすけ うまく調整していたんだったら、なんで今の太陽暦に変えたんだろう。

イチ子 明治時代になって、太陽暦を使う欧米(おうべい)の国々と付き合うのに日付の違(ちが)いがやっかいになってきたの。それと、財政難(ざいせいなん)だった政府(せいふ)がうるう月の分、お役人たちの給料(きゅうりょう)を余計(よけい)に払(はら)いたくないから暦を変えるのを急いだ、という話もあるわ。

からすけ そうなんだ。じゃあ、太陽暦のうるう年は?

イチ子 太陽暦の1年は地球が太陽を1周する日数だけど、実はぴったり365日じゃなくて、あと6時間ほど余計にかかるの。それが4年たつと24時間分、つまりもう1日分、もとの位置に戻るのに必要だわ。そこで紀元前1世紀に太陽暦を使い始めたローマでは、権力者(けんりょくしゃ)のユリウス・カエサルが4年に1度、1年の日数を1日増やして調整(ちょうせい)するようにしたのよ。

からすけ 2000年以上前にそんなことを考えたんだ。

イチ子 ただ、この調整は完全ではないの。約6時間のずれは、正確にはそれより約11分短くて、4年に1度のうるう年だと、1年あたり約11分の増やしすぎになるわ。そこで、さらに微調整(びちょうせい)が必要になり、16世紀には新ルールができたのよ。

■五輪など重なり好景気?

からすけ 新しいルール?

イチ子 当時のローマのグレゴリウス13世が「400年のうち3回、うるう年を省(はぶ)く」ことにしたのよ。まず「ふつうはうるう年になる西暦(せいれき)の100で割り切れる年はうるう年にしない」という例外をつくり、さらに例外の例外として「400で割り切れる年はうるう年にする」決まりにしたわ。これが今、日本を含(ふく)めて多くの国で使われているグレゴリオ暦よ。

からすけ ほんとに微妙(びみょう)な調整だね。

イチ子 西暦の1800年や1900年はうるう年ではなかったけど、12年前の2000年は、ふつうのうるう年じゃなくて、400年に1度の特別なうるう年だったのよ。

からすけ そんなルールは初めて知ったよ。

イチ子 うるう年は1日多い分、前の年と比べる統計(とうけい)でプラス効果(こうか)が出やすいし、景気が上向く傾向(けいこう)もあるそうよ。夏のオリンピックと4年に1度のアメリカの大統領選(だいとうりょうせん)が重なるから。

からすけ どういう関係があるの?

イチ子 例えばオリンピックの年は家で観戦(かんせん)したい人向けのテレビがたくさん売れるわ。大統領選ではその時の政権(せいけん)が選挙(せんきょ)を有利(ゆうり)に進めるために、人気が出る景気対策(けいきたいさく)を打ち出すことが多いの。ただ2008年のうるう年は、アメリカの投資(とうし)銀行の経営(けいえい)が行き詰(づ)まり、世界的な不況(ふきょう)につながったリーマン・ショックが起きた年。今年はヨーロッパの経済危機(きき)が深刻(しんこく)だから、オリンピックや大統領選がどこまで景気に影響(えいきょう)するかしら。

からすけ 僕が気になるのは誕生日のこと。2月29日生まれの人の年はどう数えるの?

イチ子 音楽バンド「いきものがかり」のボーカルの吉岡聖恵(きよえ)さんや作家の赤川次郎さんが2月29日生まれだけど、みんな、ふつうに年をとっているわ。日本の法律では、年齢(ねんれい)は誕生日(たんじょうび)の前日の24時に増える決まりだから、毎年2月28日の終わりにきちんと1歳年をとるのよ。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話
 時間の長さを計る基準(きじゅん)は2つあります。一つは地球の自転・公転で決まる「自然の時間」、もう一つは極(きわ)めて正確な原子時計が刻む「人工の時間」です。約50年前に原子時計が導入(どうにゅう)されると、「自然の時間」との間にわずかなずれが生じていることがわかりました。潮の満(み)ち干(ひ)によって移動(いどう)する海水と海底との間に摩擦(まさつ)が生じ、地球にブレーキをかける「地球の自転の遅(おく)れ」などが原因で、原子時計よりも遅(おそ)くなるのです。このため、両方の時間を合わせるために、原子時計に1秒の「うるう秒」を挿入(そうにゅう)することがあります。
 ところが、情報化(じょうほうか)が進む現代社会では、コンピューター内部の秒数を変更(へんこう)すると、様々なシステムが誤作動(ごさどう)を起こす可能性も指摘(してき)されています。今年1月、ジュネーブで開いた国連の国際電気通信連合の会議で、「うるう秒」の存続(そんぞく)か廃止(はいし)かについて議論(ぎろん)しましたが、結論(けつろん)は先送りされました。「自然の時間」と「人工の時間」、人類(じんるい)はどちらの時間に合わせていくべきなのでしょうか?
ニュースなテストの答え 問1のA=太陽暦(グレゴリオ暦)、B=明治時代、C=太陰太陽暦、問2=約29.5日

[日本経済新聞朝刊ニュースクール2012年2月25日付]


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