Loading...

エピローグ

次の半世紀へ

スクロール

リニア時代の新幹線と日本

 新幹線が開業50周年というマイルストーンを通過する2014年秋、くしくも次の半世紀の「主役」となるリニア中央新幹線の工事が始まる。2027年の営業開始をめざす品川~名古屋間は40分、45年に延伸される品川~新大阪間は67分で結ばれる計画だ。

 JR東海は22日、リニア新幹線の新型「L0系」車両の走行実験を報道公開した。低速時はタイヤで走行する車両は時速170kmあたりで浮上したが、予想したほどの浮遊感はない。次第に時速500kmの世界へといざなわれる感覚は新幹線とも飛行機とも異なる。車両が浮いていたのを思い出したのは再びタイヤが「着陸」したのを感じた時だった。

 リニア中央新幹線の総工費は9兆円。JR東海は自己資金を投じる方針で、民間企業による投資プロジェクトとしては世界最大級になる。費用対効果は未知数だけに、地下工事の難しさや東海道新幹線との乗客の奪い合いといった負の側面が強調されがちだ。かつて東海道新幹線も開通前に戦艦大和と並ぶ無用の長物との厳しい批判にさらされた。

 しかし、リニア中央新幹線の役割は単に東海道新幹線を機能面で進化させることだけでない。南海トラフ巨大地震などの災害リスクの軽減や、老朽化した設備をメンテナンスするために大動脈の「二重化」は欠かせない。

 50年後に日本の人口は9000万人を割り込むという試算がある。日本経済が過去半世紀と同様に成長すると予想する専門家はいないだろう。JR東海の柘植康英社長は「経済、財政の効率化からいっても、生活都市や地域への集中を求められるようになる」と述べ、一極集中と高成長をけん引した新幹線の役割の変化を認める。来る半世紀、新幹線の車窓の外には、過去半世紀とは異なる風景が広がっている。

取材:原田洋、森園泰寛
制作:鎌田健一郎、河本浩、島地正彦、河西かおり

新幹線イラスト:鈴木信雄

資料提供
東海旅客鉄道、東日本旅客鉄道、西日本旅客鉄道、九州旅客鉄道、東京大学・清水英範教授、東北大学・井上亮准教授

参考文献
「東海道新幹線50年」(須田寛著、交通新聞社)
「新幹線50年の技術史」(曽根悟著、講談社ブルーバックス)
「東海道新幹線ビジュアル大図鑑」(洋泉社MOOK)