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乗客数景気指標

強まった日本経済との相関関係

スクロール

輸送人員量と経済指標の関連性

輸送人員:東海旅客鉄道資料による。1万人未満切り捨て
GDP:内閣府「国民経済計算」を基に作成。1964~79年度は1990年基準、1980~93年度は2000年基準、1994~2013年度は2005年基準
円相場:東京市場、スポット、17時時点
日経平均株価:225種 日次終値の年度平均値

過去50年の日本経済を巡る主な出来事

乗客数は景気指標~強まった日本経済との関係

 東海道新幹線は半世紀で20億kmを疾走し、55億人を運んだ。1964年の東京五輪、70年の大阪万博、75年の山陽新幹線の全線開業などを経て、旅客需要は順調に伸びた。65~70年のいざなぎ景気を演出する基盤となり、高度成長期の日本人の足元を支えた。

 64年度に約1100万人だった年間の輸送人員は右肩上がりに伸び10年足らずで1億人(73年度)を突破。ただ、77年度から86年度までは9000万人台で低迷した。日本国有鉄道(国鉄)が巨額の赤字を垂れ流し、設備投資が滞ったことが需要を足踏みさせた。あこがれの「夢の超特急」は社会に定着する一方で、徐々に輝きを失っていった。

 国鉄が分割民営化して以降、新型車両の投入を柱にして輸送力を増強していくことで輸送人員は再び成長カーブを描く。東海旅客鉄道(JR東海)は91年、新幹線に関する鉄道施設(車両除く)を約5兆円で取得した。バブル経済が終わりを告げる中、新幹線関連の債務の金利は最大6%超に設定された。

 新幹線の旅客需要は景気の波に左右されやすく、他の景気指標と強い相関関係があると言われてきた。国内総生産(GDP)、為替、日経平均株価の水準と見比べると、80年代以降は特にGDPと似た曲線を描いている。

 為替は1985年のプラザ合意直後の急激な円高期を除けば、円高・円安とそれに続く緩やかな旅客需要の減少と増加を示しているように見える。日経平均株価はバブル経済の膨張と崩壊の時期に旅客需要の動きと乖離したが、2000年代後半は似た軌跡を描いている。

 交通経済論が専門の一橋大学の山内弘隆教授は「交通機関の需要は沿線人口と発着地点の経済活動などに依存する。東海道新幹線は経済活動との関連性が特に強い」と分析する。

 東海道新幹線は出張の足として欠かせず、ビジネス利用が6~7割を占めるといわれる。2001年に携帯電話やパソコンからチケットを予約できる「エクスプレス予約」が始まり、09年から無線LANサービスの利用が可能になった。今や新幹線は「高速移動するオフィス」だ。

 ただ、日本経済との強い相関関係は新幹線にとって弱みにもなる。最近では08年のリーマン・ショックの影響で乗客数は落ち込んだ。

 日本経済が低成長時代に突入し、新幹線が新たな需要を創出するのは容易でない。JR東海がリニア中央新幹線の建設に挑むのも、高速鉄道の付加価値を高めて新たな需要の創出を狙っているからだ。一橋大の山内教授は「新しい交通手段による需要は新たな『誘発需要』と既存交通機関の『転換需要』に分かれる。リニア中央新幹線による誘発需要は小さくないが、利用者の大半は東海道新幹線からの転換需要だろう」と予測している。

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