冒険続けた音楽家人生 速水健朗氏が選ぶ3冊 2月25日 1960年代のヒッピーやロック時代にはっぴいえんどで台頭した細野。以後、ソロなどの活動のなかで、彼が常に気にしてきたのは米ルーツ音楽や昔のハリウッド映画音楽、エキゾチックやトロピカルなど非主流の音楽たちだった。 本書はYMO世代ではない書き手が、本人及び周辺取材、文献から書いた細野の評伝であり、同時代を駆け抜けたミュージシャンたちの記録。 売れ線からも距離を持った細野が、いかにYMOを結成し、時 冒険続けた音楽家人生 速水健朗氏が選ぶ3冊
三姉妹が織りなす物語 北上次郎氏が選ぶ3冊 2月25日 三人屋とは、同じ店であるのに朝昼晩で業態が変わる店のことだ。経営するのが美人三姉妹なので、そう呼ばれている。午前中に喫茶店を営むのが三女の朝日。昼間の讃岐うどん屋は次女のまひる。夜のスナックを仕切るのは長女の夜月。 この三姉妹の話は、前作『三人屋』で描かれていて、今回はその続編だが、ここから読み始めても問題なし。このところ業態が少し崩れて、朝はサンドイッチを売る形態に変化。さらに、昼のうどん屋は 三姉妹が織りなす物語 北上次郎氏が選ぶ3冊
パレスチナの今伝える 竹内薫氏が選ぶ3冊 2月25日 のっけから、ピリピリとした国境検問のシーンがあり、読者は、ただならぬ雰囲気の世界に引きずり込まれる。 パレスチナ自治区とその周辺の取材で著者が遭遇したのは、デモに参加しただけで銃弾で足を破壊され、空爆や自爆テロで負傷し、国境なき医師団の病院に担ぎ込まれる人々だ。 火傷の治療のために3Dプリンターでフェイスマスクを作ったり、ゲーム機のようなバーチャル画像の技術で痛みを和らげる工夫があったり、先端医 パレスチナの今伝える 竹内薫氏が選ぶ3冊
特務 リチャード・J・サミュエルズ著 2月20日 また、やられてしまった。近現代の日本政治史をめぐる死角を、外国人研究者に照射されてしまったのである。もとより、本書の著者が様々に参照し引用するように、多くの優れた日本人研究者が、これまでも日本のインテリジェンスをテーマにしてきた。しかし、戦前と戦後にわたって、しかも、非日本人にも理解可能な分析上の整理を施した上で、広く日本政治や国際関係と結びつけての分析は、稀有(けう)であろう。 サミュエルズ教 特務 リチャード・J・サミュエルズ著
顔の考古学 設楽博己著 2月20日 土偶の顔、埴輪(はにわ)の顔、土器にヘラで刻まれた顔。遺跡から掘り出される品々には、顔を表したものがよくある。顔は、人間どうしのコミュニケーションを生み出す源で、社会生活の根本なのだ。だが、遺跡から出てきた「顔」を、これまでの考古学は上手に料理できないできた。物の輪郭や厚みや技術を観察して意味を引き出す生真面目な手法には長(た)けているが、そんなものでは対処できないほどの情報にあふれ、こちらの心 顔の考古学 設楽博己著
ミルクマン アンナ・バーンズ著 2月20日 実に珍しい小説体験だ。まず語り手の個人技がすごい。言葉の私物化ではないかというくらいの芸当でツッコミにツッコミを重ね、ほぼ一人漫才状態。80%くらいはこちらもニヤニヤしながら読む。でも、内容は恐ろしい。何しろこの女性は脅迫され、毒を盛られ、銃まで突きつけられるのだから。 筋から言えば、これはストーカー譚(たん)だ。主人公は「ミルクマン(牛乳配達人)」と呼ばれる人物につきまとわれる。ふと気づくと背 ミルクマン アンナ・バーンズ著
「共食」の社会史 原田信男著 2月20日 自然界で弱い存在だった人間。連帯することで生き残るため、共食することを選ぶ。その共食を通して、日本史を描いた本である。 日本では、同じものを食べることで集団の連帯感を養ってきた。法的な手続きの際も、共食の場が設けられる。例えば室町時代の1394年、荘園領主と百姓の間で耕作面積と地主と耕作者を確認する大検注が行われた。その際に開く饗宴(きょうえん)の費用は、領主側に属する地主が負担している。 共食 「共食」の社会史 原田信男著
マザリング 中村佑子著 2月20日 日本では、女性活躍推進の掛け声を受けて、男女共に仕事と育児の両立が目指され、実際に出産後も就業を継続する女性が増えている。性別役割分業が、女性のキャリア形成と経済的自立を阻んできたことを考えれば、女性の社会進出は高く評価されるべきである。 こうしたいかにも「正しい」主張に対して、本書では次のような見解が示される。「母の社会復帰を促し、母の個人としての人権を訴え、母の役割を父や他人と分担させ、そう マザリング 中村佑子著
「僕のコーチはがんの妻」藤井満さん 2月20日 2017年夏、20年近く連れ添った妻・玲子さんにがんが発覚した。少しでも家事の負担を減らそうと、妻に料理を習い始める。慣れない台所仕事に悪戦苦闘しつつ、ともに病と闘う日々をつづった。がんは進行し、玲子さんは18年9月に亡くなった。教わったレシピは約150品に上った。 20年1月まで新聞社に勤め、取材に飛び回った。家事はほぼ任せっきり。「レシピ本を読んでも『塩少々』『食べやすい大きさに切る』の意味 「僕のコーチはがんの妻」藤井満さん
不自由と貧困の独裁 中沢孝夫氏が選ぶ3冊 2月18日 副題「独裁政治の歴史と変貌」のほうが内容に即している。「権威」というのは、従っている側(大衆)が、その対象を自主的に尊敬(信従)しており、弾圧という暴力装置で従っているわけではない。天皇制はその典型だ。 本書の権威主義は、自由で公正な選挙によらない、個人や政党あるいは宗教や氏族などが軍隊や警察力によって支配している国(や地域)のことだ。それでも住民が豊かだったらまだよいが、多くは不自由と貧困の中 不自由と貧困の独裁 中沢孝夫氏が選ぶ3冊