工具・金型卸

工具・金型卸では、主にボルト、ナット、ネジ、座金、リベットなどネジ類や、スパナをはじめレンチ、金づちなど手作業で使う作業工具を扱う工具卸と、金属板の打ち抜きや曲げ加工、金属や樹脂、セラミックス、ガラスなどの成型に使われる金型の卸売業では業態が異なる。ネジ類を扱う卸の市場規模は、東京、神奈川、名古屋、大阪の各地域で組織する卸売業約４００社の協同組合の売上額を合算すると約４５００億円になる。国内で流通するネジ類の金額は経済産業省の工業統計や財務省の貿易統計から推測すると年間８５００億円程度。このうち５０％強（金額ベース）が卸会社経由とみられている。
用途別に見ると、出荷金額ベースで半数以上は自動車産業向けだ。現在ではトップ１０社でシェア３～４割を占めるといわれるネジメーカーと、自動車業界との関係が深まり、東京、名古屋、大阪地域が３大生産拠点。ネジ類も古くは、専業の卸売業者が多数存在したが、今は完成車メーカーや大手自動車部品メーカーとの数百トン単位の直接取引が中心である。(2023/01/09調査)

ネジ流通の大きな変化の１つが、ネジメーカー自身が卸機能の一部を担うようになったことである。自動車関連の大口需要家のニーズにワンストップで応えられるように、付加価値の高い自社製品に加え、自社で生産していないネジ類を同業他社から仕入れたり、安価な輸入品と組み合わせて顧客に納入したりするメーカーが増えている。例えば、自動車の駆動系などに使われる重要な保安部品向けや特殊形状のネジ類などは自社製、内装固定用ネジなどは安価な輸入品という具合だ。それにつれて、従来からのネジ卸は機械部品や工具といった他の製品も扱うようになった。一方で、自動車や一般機械メーカーに工作機械や搬送機械などを卸していた商社や、建築・土木業向けに鉄鋼を扱っていた商社などが、ネジ類までを一括調達・納入することもある。
作業工具卸も専業から、こうした複数品目を扱う商社的機能を持つ企業が育っており、機械卸や機械商社との垣根は次第に崩れつつある。大手はＩＣＴ（情報通信技術）を使った電子調達やインターネット受発注システムを構築している。中でも、工場の生産現場におけるネジ類や作業工具に加えて、消耗品、メンテナンス、修理資材の供給を一括提供できるＭＲＯ（Maintenance Repair and Operations）ビジネスで安定した収入を得る動きが活発化している。(2023/01/09調査)

テクノアソシエはネジ類の流通最大手といわれるが、ネジ単体の売り上げ比率は低下し、ネジ類を含む部品ユニットの開発や、他社に製造委託した製品を顧客に納入するビジネスが中心。２０２２年３月期連結売上高は前の期比１７．７％増の８６０億１９００万円だった。このうち、ネジ類の売り上げは海外分を含めて約３割、２５０億円強。
ネジ類が売上高の８２％を占めるトルク（旧小林産業）の２０２２年１０月期連結売上高は前の期比６．４％増の２０４億７７００万円。新型コロナ禍のなか建築業向けの需要は完全に戻っていないが、価格改定や新物流センター稼働で経費削減に努めた。このほか、ネジ類６５万種類を扱う専門商社にサンコーインダストリー（大阪市）がある。(2023/01/09調査)