資本主義の行方を考える 活字の海で 6月25日 日本経済の先行きが、見えにくくなっている。もし資本主義そのものがうまく機能していないとすれば、原因は何か。そんな疑問と向き合う著作が、相次いで出版された。 水野和夫法政大教授の『次なる100年』(2022年2月、東洋経済新報社)は多数の古典を引きながら、中世と近代をへて生まれた今のグローバル資本主義がどのようなメカニズムで動いているのかを解き明かす。 約1千ページの本書を貫く主張はシンプルだ。日 資本主義の行方を考える
集英社「ノンノ」・講談社「ヴィヴィ」… 活字の海で 6月18日 集英社、小学館、講談社の出版大手3社は、雑誌の編集システム共通化に乗り出した。編集作業を標準化して効率を高めるとともに、3社で業務提携してコンテンツを生かした新サービス創出を長期目標に掲げた。雑誌の低迷が続く中、ライバルが協力して新たな収益モデルを築く。 集英社が開発した総合誌面制作プラットフォーム「MDAM(エムダム)」を小学館、講談社がすでに導入した。ほかにも光文社、主婦と生活社、世界文化社 集英社「ノンノ」・講談社「ヴィヴィ」…
生誕100周年で全集完結 活字の海で 6月11日 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんは2021年11月に亡くなったが、22年5月に生誕100年となった。著作刊行が相次ぎ、同月末には全25巻の『瀬戸内寂聴全集』(新潮社)が完結。敬愛した文学者の系譜に名を連ねた。 「全集を作ってちょうだい。それを見ないと死ねない」。全集の編集を担当した同社出版部の桜井京子副部長は14年、そう切り出された。胆のうがんの手術後のことだ。01~02年には第1期として、それまでの 生誕100周年で全集完結
歴史的な円安を読む 活字の海で 5月28日 外国為替市場で円安が進み、円相場は5月にかけて一時1ドル=131円台と20年ぶりの水準に下落した。円安は経済にプラスというのが常識だったが、今回は資源高も重なり、「悪い円安論」が勢いを増している。 『円安が日本を滅ぼす』(野口悠紀雄著、中央公論新社、2022年5月)は「円安政策こそが日本経済衰退の基本原因」と唱え「中国工業化への対処の誤り」を指摘する。技術革新で差別化を図るべきだったのに、価格で 歴史的な円安を読む
小説『ユリシーズ』刊行100年 活字の海で 5月21日 20世紀アイルランドの文豪ジェイムズ・ジョイスの長編小説『ユリシーズ』が刊行100年を迎え、記念論集の出版やオンラインイベントが相次いでいる。現代的な視点での読み直しや、研究者の分かりやすい解説によって、難解で知られる歴史的傑作が読者にとって身近なものになることが期待される。 『ユリシーズ』はユダヤ系移民のさえない中年男性で広告取りのブルームを中心に、当時英国領だったアイルランドのダブリンでの1 小説『ユリシーズ』刊行100年
コロナ禍の好調ガイド本 活字の海で 5月14日 コロナ禍で国内外とも旅行のハードルが高いなか、異世界を旅する気分を演出する本が目立っている。自宅にいながら知的好奇心を満たし、わくわく感や旅情を味わえるところにニーズがあるようだ。 なかでも2月刊行の『地球の歩き方 ムー』(学研プラス)が6刷11万部を突破する異例の売れ行きとなっている。定番ガイド「地球の歩き方」と、超常現象や怪奇伝説の専門誌「月刊ムー」がコラボした。地球の歩き方のフォーマットに コロナ禍の好調ガイド本
子供向け絵本・雑誌で復刊 活字の海で 5月7日 絵本などの子ども向け書籍で、老舗出版社がかつての定番を復刊させている。少子化でも堅調が続く児童書は近年、参入する出版社が多かった。選択肢は増える半面、どれを選ぶべきか迷いも生じる。親にとって、自らも読んだことのある定番本の安心感は大きい。 創業70年を迎えた福音館書店は4月、東京子ども図書館(東京・中野)との共同企画で絵本8冊セットを復刊した。谷川俊太郎作・長野重一写真の『よるのびょういん』に、 子供向け絵本・雑誌で復刊
企業のあり方を問い直す 活字の海で 4月30日 持続可能な社会を実現するために企業が担う役割は大きい。「パーパス」と呼ばれる存在意義を自らに問い、打ち出す。株主第一主義から、幅広いステークホルダーのための経営への移行が企業に求められている。 『会社法は誰のためにあるのか』(岩波書店、2021年12月)は、著者である上村達男・早稲田大学名誉教授の長年の問題意識の集大成だ。上村氏は「株式というモノを配当や株価のような財産権を中心にみるのか、議決権 企業のあり方を問い直す
『伊藤整日記』が完結 活字の海で 4月23日 『伊藤整日記』(全8巻・平凡社)が完結した。1905年(明治38年)生まれの伊藤は詩人としてデビュー後、小説や評論に活動の軸を転じて翻訳も手掛けた。戦後文壇の代表的な存在だ。訳書『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ文書とされた「チャタレイ裁判」でも注目を集めた。 日記は47歳の1952年から、64歳で死去する69年までの18年間ほぼ途切れなく続く。これは伊藤が流行作家として名を馳(は)せ、明治の文 『伊藤整日記』が完結
書評サイト発のシェア型書店 活字の海で 4月16日 多数の書店や出版社がひしめく東京・神田神保町で3月、シェア型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS(パサージュ バイ オールレビューズ)」が開店した。小説家や書評家が棚を借り、それぞれの選書を並べて販売する。電子書籍や電子商取引(EC)の台頭でリアルの本や書店の需要に陰りが見える中、本の新しい紹介・販売の仕方として注目されている。 「著者自身が本屋になることで、本をロングセラーに戻し 書評サイト発のシェア型書店