春秋 春秋 4月19日 「公職追放」を逃れたのは聖徳太子だけだった。終戦直後、GHQ(連合国軍総司令部)はかねて紙幣の肖像として使われてきた人物を、軍国主義につながるとして一斉に更迭したのである。菅原道真も和気清麻呂も消えるなかで、どうにか生き残ったのが太子だった。 ▼GHQは聖徳太子にも難色を示したが、一万田尚登・日銀総裁の説得でパージを取りやめたという。かの十七条憲法「和をもって尊しとなす」の言葉が決め手になったらし 春秋
春秋 春秋 4月18日 米国への憧れを詞にのせた歌は数多い。40年ほど前には水谷豊さんが「カリフォルニア・コネクション」で●(庵点)いつかは二人で行きたいのさ、と願いを込め、杏里さんは「思いきりアメリカン」で傷心を癒やしてくれた。最近でもDA PUMPがU、S、Aと連呼する。 ▼自由と豊かさ、誰でもフレンドリーに受け入れるおおらかさ。そんな包容力あふれた大国のスタイルが人々をひきつけてきたのだろう。お堅く言えば、民主主義 春秋
春秋 春秋 4月17日 今となってはほとんど忘れ去られているが、1964年の東京五輪のひと月半前、千葉でコレラ騒動があった。外国旅行者とはなんら関係のない1人の工員が死亡した。当時、コレラはまだ恐るべき流行(はや)り病。予防接種の会場には行列ができ、住民はパニックに陥った。 ▼感染源はつかめず、広がり方もわからない。にもかかわらず、厚生省(現厚生労働省)は1週間後に突如として幕引きをはかった。共同通信の記者だった原寿雄氏 春秋
春秋 春秋 4月16日 暑い日に涼をとるうちわは、当然、夏の季語だ。しかし、歴史をひもとくと、やたらパタパタあおぐものではなく、その昔は高貴な人が顔を隠すために用いたという。そういえば高松塚古墳の壁画の女性も、うちわのようなものを手にしているではないか。優美である。 ▼今のような形状や用途で、本格的に普及したのは江戸時代。岐阜や京都、香川などで盛んにつくられた。歌舞伎の人気役者や高名な遊女の姿が描かれ、庶民に親しまれるよ 春秋
春秋 春秋 4月15日 「東洋の大都会といわれるマンモス都市東京」。その片隅にあるこがらしが吹きすさぶ街に、一人の少年がふらりと現れるシーンから物語は幕を開ける。彼を見つめるのは、街の貧しい子どもたち。少年は自らの命を燃やしつくすことになるボクシングとここで出会う。 ▼漫画「あしたのジョー」の連載は「週刊少年マガジン」の1968年1月1日号からスタートした。物語の中で主人公は街の子どもたちのヒーローになり、世界の舞台へ駆 春秋
春秋 春秋 4月14日 「ラピュタの道」と呼ばれる道が、熊本県阿蘇市にある。阿蘇外輪山の絶壁をくねくねと走る狭路である。もともと牧草を運搬する農業用の道だったが、雲の上の天空に浮かぶような姿が評判に。いつの頃からかジブリ映画のタイトルを冠した愛称で観光名所になった。 ▼10年ほど前に訪れた。広大なカルデラを見下ろす絶景に、思わずアクセルを緩めたことを覚えている。再訪を誓ったものの、当面はかないそうもない。2016年の地震 春秋
春秋 春秋 4月13日 居酒屋などでテーブルに着くや、おしぼりと一緒に簡単なつまみが出てくることが多い。枝豆、きんぴら、もろきゅう……。関東でお通し、関西ではつき出しと呼ぶ一品だ。店はこれで席料を取るわけだが、まず何か並べておき、客を落ち着かせる効果も大きいという。 ▼コロナ封じのワクチン接種作戦も、ひょっとしたらこのやり方だろうか。日本で医療従事者向けの接種が始まったのは2月17日だった。そこそこ早い時期に、とりあえず 春秋
春秋 春秋 4月11日 昭和天皇が生涯、敬愛した人物がいた。皇太子時代の1921年の渡英時に歓待してくれた英国王ジョージ5世である。後に、国王から立憲君主の心構えを伝授されたことを、記者会見で述懐した。君主とは孤独な存在だ。含蓄のある言葉が深く心に響いたのだろうか。 ▼それから半世紀余りを経た75年。昭和天皇は皇居でジョージ5世の孫、エリザベス女王と夫のフィリップ殿下を迎えた。女王は離日の際、困難な時代を国民と歩んだ昭和 春秋
春秋 春秋 4月10日 「え~、われわれの方で、めでたいにつけ、悲しいにつけ、酒というものがついてまわるってぇことをいいますが」。左党で知られた10代目の金原亭馬生の噺(はなし)のまくらである。「お酒がなくっちゃ形がつきません。コーヒーってわけにいかない」などと客席をわかせた。 ▼師匠が演じた昭和は遠く、今は新型コロナウイルス第4波への警戒のさなか。歓送迎会など酒席の誘惑は断たねばならないはずである。ところが、厚生労働省 春秋
春秋 春秋 4月9日 ある人は書店に急ぎ、ある人はパソコンやスマホで版元のサイトを開く。漫画好きには待ち遠しくも悲しい日が来た。目当ての作は「進撃の巨人」。30巻を超す単行本の全世界での売り上げは1億部を上回る。その話題作がきょう発売の雑誌で11年余りの連載を終える。 ▼昔なら店頭に行列ができたろうか。今は出版社のサイトが発売日に有料公開し、ファンは国境を越えネットで感想を交換する。世代や趣味の異なる人の関心が見えにく 春秋