電気料金値上げの本質 十字路 6月1日 電力各社による、一般家庭を含む低圧向け電気料金の値上げ申請が認可された。地域によって値上げ幅は異なるが、東京では使用量で変動する料金単価が1~2割、今月から値上げされる。 我が国の電力市場は戦後の地域独占による総括原価方式から2016年には全面自由化したが、一般家庭向けは規制が残り料金改定は経済産業相の認可制となっている。 今般の値上げは昨年来の発電燃料価格の高騰を反映と報道されるが、実はそれで 電気料金値上げの本質
グローバルサウスへの入り口 十字路 5月31日 今回の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の陰の主役は、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)であった。二極化が深まる世界の構造に巻き込まれず、経済成長を実現したいと考える点は各国共通。だが、抱える課題が異なる。 地図で北回帰線以南のインド洋を眺めると、グローバルサウスの具体的なイメージが湧く。東にインドネシア、西にアフリカ大陸、北に中東とインドが位置する新興国群だ。このインド洋に グローバルサウスへの入り口
小売業、過疎地に一段と関与を 十字路 5月30日 国立社会保障・人口問題研究所が4月公表した将来推計人口によると、日本の人口は50年後に現在の約7割、65歳以上人口比率が約4割となる見込みだ。過去20年の人口減少が0.6%だったことを考えれば、想定を超えるスピードで課題が顕在化する可能性があり、食に関しては2点の課題が想定される。 1点目は、流通インフラの維持だ。現在の地方自治体区分を前提とすると、高齢化率40%以上かつ、人口密度が1平方キロメ 小売業、過疎地に一段と関与を
日本買い呼ぶキシダノミクス 十字路 5月26日 日経平均株価は一時3万1000円を超え、約33年ぶりの高値をつけた。消去法的かつ一時的な日本株買いではとの声もあるが、それに止まらない日本株を買う理由が出てきている。 海外投資家は不透明な金融経済情勢が続く中で、保有資産全体に占めるリスク資産のポジションを減らし、キャッシュの比率を高めている。中銀の金融引き締めからのスタンス転換を見込む向きは多いが、確信度は高くない。 確信度の低い投資家は割安投 日本買い呼ぶキシダノミクス
トップ選びが分かつ企業の盛衰 十字路 5月25日 いつの時代も誰が経営トップであるかは企業の継続や発展を大きく左右する。エネルギー価格の高騰やポストコロナ社会の模索、地政学リスクの増大など不確実性が高まる昨今、トップが先見の明を持ち、経営判断できるか否かは、企業の死活問題だ。企業が生み出す雇用と税収を考えると、トップの人選は社会的にも極めて重要なイベントだ。 新しいトップを選ぶ者として、最もふさわしくないのは現任の経営トップだ。まず、自分がなる トップ選びが分かつ企業の盛衰
反ESGの拡大に注意を 十字路 5月24日 米国で広がってきた反ESG(環境・社会・企業統治)運動に注意が必要だ。 今月初め、南部フロリダ州でESG活動を制限する「反ESG法」が成立した。同州の政府や年金基金の行う投資にESG要因の考慮を禁じるなど、ESG投資を封じ込めようとする州法だ。他の保守州でも同様の動きがある。 反ESG運動の高まりで、ESGを重視してきた資産運用会社にも方針転換や慎重姿勢への後退がみられる。2022年12月には米 反ESGの拡大に注意を
将来推計人口から読み取る 十字路 5月23日 国立社会保障・人口問題研究所が4月下旬、5年に1度の将来推計人口を公表した。日本の総人口は、悲観的な出生率の仮定を置いた2006年推計を底に3回にわたり上方修正されている。50年の総人口は06年推計では9515万人だったが、23年推計では1億469万人である。 人口推計は最近の人口動態が続いたケースを数理的に未来へ「投影」したものであり、「予測」ではない。経済社会の今後の構造変化や、賃金が高まれ 将来推計人口から読み取る
サメ肌に学ぶCO2削減 十字路 5月19日 バイオミメティクス(生物模倣)は生物の形、機能などに学び、活用する技術だ。古くはレオナルド・ダ・ヴィンチが鳥の観察から飛行機を構想した。フナクイムシが分泌液で壁を固めながら木を掘り進む姿からシールド工法が着想され、蚊の吸血針から痛くない注射針が生まれた。オナモミの実(ひっつき虫)の形状に学んだ面ファスナーや、ハスの葉のはっ水性をヒントにしたヨーグルトのフタなど身近な製品も多い。 人類の課題である サメ肌に学ぶCO2削減
米債務上限「今回は違う」リスク 十字路 5月18日 米連邦政府の借入限度額を定めた債務上限。達するのは夏ごろという当初の予想が6月上旬に前倒しになり、ワシントンは尻に火がついた感がある。しかし、与野党間のせめぎ合いが過熱している割にはマーケットの方は冷静に見える。グローバルな決済手段の管理者がデフォルト(債務不履行)を招くような無謀な賭けには出まい、という希望的観測かもしれないが、果たして大丈夫だろうか。 今回の対立をオバマ大統領時代の2011年 米債務上限「今回は違う」リスク
投資文化浸透へ株式報酬普及を 十字路 5月17日 日本が「世界で最も悲観的な国」の汚名を返上した。フィデリティが世界17カ国・地域で毎年実施しているウェルビーイング(心身の健康や幸福)に関する調査結果である。この手の国際比較で日本は最下層が指定席だったが、最新調査ではインフレの深刻さとウクライナとの地理的近接を背景に、欧州諸国の悲観度が一気に駆け上がっている。 一方、わが国では官民をあげたウェルビーイング向上の取り組みが2022年から盛んになり 投資文化浸透へ株式報酬普及を