ジョブ型が変える人材育成 中外時評 4月14日 社内の各ポストの職務を明確にし、こなす能力を持った人材を選んで配置するジョブ型の人事制度。順送り人事や年功賃金を改めることができるとして、日本企業の関心が高まっている。 もっともコスト抑制はジョブ型制度の一側面にすぎない。制度の主眼は、実力主義の徹底で社員間の競争を活発にすることにある。人材育成の刷新につなげたい。 KDDIはジョブ型制度を2021年度から管理職に導入した。一般社員も対象とするた ジョブ型が変える人材育成
「大きすぎる政府」の危うさ 中外時評 4月7日 万人の要求を満たす真の共産主義は、ソ連にもまだ存在しない。その費用を賄えるのは米国だけだ――。ソ連の指導者スターリンはかつて冗談交じりに語ったという。 米ジャーナリストのアーサー・クロックが半世紀前のコラムに記した逸話である。スターリンが存命なら、いまの米国が繰り出す巨額の財政出動をどう評しただろう。 バイデン米大統領が打ち出した1.9兆ドルの経済対策と2.3兆ドルの成長戦略は「バイデン砲」と呼 「大きすぎる政府」の危うさ
加速する欧州のデジタル戦略 中外時評 3月31日 菅義偉政権のデジタルトランスフォーメンション(DX)政策は、新型コロナウイルスの感染対策と総務省幹部らの会食問題によってかき消されつつあるように見える。しかし、欧州では矢継ぎ早に政策が打ち出されている。 まず2020年2月、欧州連合(EU)の欧州委員会がデジタル戦略を打ち出した。この戦略を具体化するため、21年3月に欧州委員会は「デジタルコンパス」という目標を設定した。 他国を追いかけるのではな 加速する欧州のデジタル戦略
アジア発ユニコーンの真価 中外時評 3月24日 「ドーン・デリバリー(夜明け配達)などの革新に、調達する資金を投じて長期成長の土台を築く」。3月11日に米ニューヨーク証券取引所に上場した韓国ネット通販大手のクーパン。キム・ボムソク最高経営責任者(CEO)は、その直前の米経済番組のインタビューでこう語った。 「夜明け配達」とは、深夜0時までに注文すれば翌朝午前7時に商品が届くネット通販のこと。クーパンはこの対象を「数百万の商品に対応させ、韓国全 アジア発ユニコーンの真価
政治家は身内にこそ厳しく 中外時評 3月17日 バイデン米大統領が就任後初めて取材に応じたメディアは「ピープル」だった。芸能人の熱愛や破局といったゴシップが主な売りの週刊誌である。お堅い高級紙で難しい政策論を語るよりも、政治色が希薄なメディアで笑顔を振りまき、「いい人」ぶる方が支持率アップに効果的なのは万国共通の政治法則だ。 ただ、内容はやや意外なものだった。庶民向けの雑誌相手に、家族の仲のよさを強調しつつも、その一方でけじめが必要と力説した 政治家は身内にこそ厳しく
シベリア融解がはらむ危機 中外時評 3月10日 2月19日、ロシア・シベリア極北にある液化天然ガス(LNG)の積み出し港、サベッタに同国の砕氷型LNG船が到着した。氷に覆われた北極海を航行し、中国・江蘇省との往復航海を終えた。 この地から欧州に向かう航路は1年を通して航行可能だが、アジアに向かうには氷が薄い7月から11月までが限界だった。それが今回初めて真冬に成功した。 この事業は日本企業も縁が深い。プラント建設は日揮ホールディングスが手掛け シベリア融解がはらむ危機
多様性生かす基盤はあるか 中外時評 3月3日 日本と世界がどれだけずれているか。それが明白になったのが、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の辞任劇だろう。 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などの発言が、国内外から批判されて辞任した。だが問題は決して一個人の話ではない。 発言があった場で、止める人はいなかった。自民党からは擁護する声も出た。「いつものこと」と聞き流し、結果的に容認してしまう。そんな空気感は日本 多様性生かす基盤はあるか
データセンターの地政学 中外時評 2月24日 新型コロナウイルス流行を受けたステイホームの実践で、在宅勤務や学校の遠隔授業が進み始めた。多少の不満もあるが、音楽や映画、スポーツ観戦も在宅で楽しめるようになっている。なかなか進まなかった遠隔医療にも前進がみられる。都心の職場に行く回数が減り、郊外へ引っ越す人も増えているという。 そして自宅の通信環境の改善のために、多くの人が少なからぬ投資をするようになった。通信速度、安全な接続、集中できる環境 データセンターの地政学
雇用と賃金、二兎を追え 中外時評 2月17日 コロナ禍による先行きの不透明さから今年の賃上げは減速しそうだ。労務行政研究所が上場企業の労働組合幹部や人事・労務担当部長らに実施した調査では、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率は1.73%と、2013年以来8年ぶりに2%に届かない見通しだ。 電機メーカーの労組で構成する電機連合はベアに相当する賃金改善の統一要求を、上部団体の金属労協が掲げる「月3千円以上」より低い 雇用と賃金、二兎を追え
米国の中国パージは危うい 中外時評 2月10日 「黄色い恐怖の寓話(ぐうわ)」という短編小説がある。米作家のマーク・トウェインが100年以上前に執筆した。西洋人を「チョウ」、東洋人を「ハチ」に見立て、2つの文明の行く末をほのめかしたことで知られる。 チョウは蜜づくりと殺りくの技にたけ、王者として君臨していた。広大なハチの帝国を制するのを拒まれたため、脅威論をあおって力ずくで抑え込みにかかる。いつしか抵抗する者はなくなり、つかの間の平和が訪れた 米国の中国パージは危うい