三菱自動車が燃費データ不正 遠のく信頼回復

2016/4/22 17:59
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燃費試験の不正行為について謝罪する三菱自動車の相川哲郎社長(中央)=20日、国交省

燃費試験の不正行為について謝罪する三菱自動車の相川哲郎社長(中央)=20日、国交省

三菱自動車が軽自動車4車種の燃費試験に使うデータを恣意的に改ざんしていたことを明らかにした。同社は2000年以降にリコール(回収・無償修理)隠しが相次いで発覚、経営危機に直面した。近年、業績は回復に向かっているが、消費者の信頼を取り戻すのは一段と難しくなった

■日産の指摘で発覚

三菱自動車の相川哲郎社長は20日、国土交通省で記者会見し、同社が生産する軽自動車4車種で燃費試験時に、燃費を実際より良く見せるためにデータを改ざんする不正が行われていたと発表した。
相川社長は「お客さまと関係者に深くおわびする」と陳謝した。
三菱自の「eKワゴン」など2車種と、同社が受託生産し日産自動車が販売する「デイズ」など2車種が対象。いずれも2013年6月に発売。2016年3月末までに計62万5000台を販売した。

三菱自、燃費5~10%不正に上乗せ 軽4車種62万台(4月20日)

三菱自動車の「eKワゴン」(右)と日産自動車の「DAYZ」(2013年5月、岡山県倉敷市の三菱自動車水島製作所)

三菱自動車の「eKワゴン」(右)と日産自動車の「DAYZ」(2013年5月、岡山県倉敷市の三菱自動車水島製作所)

タイヤの抵抗や空気抵抗の数値を操作し実際より燃費が良くなるよう届け出ていた。
実際の燃費は届け出数値より5~10%悪くなる可能性があるという。三菱自のeKワゴンの場合、販売中の車の燃費性能はガソリン1リットルあたり30.4キロメートルと公表していた。同3キロメートルほど水増ししていたことになる。
不正の詳細は調査中だが、担当部署の当時の部長が「自分が指示した」と話しているという。

三菱自、燃費5~10%不正に上乗せ 軽4車種62万台(4月20日)

三菱自の不正は、軽自動車の開発・生産で提携する日産の指摘で発覚した。
次期車の開発を担うことになった日産が参考とするため、2015年秋に三菱自が開発した従来車種の燃費を測定したところ、国交省に届け出た値との乖離(かいり)が判明。自浄作用が働いていなかったといえる。

日産の指摘で発覚 過去にもリコール隠し、体質変わらず(4月21日)

名古屋製作所に立ち入り検査に入る国交省の担当者(21日、愛知県岡崎市)

名古屋製作所に立ち入り検査に入る国交省の担当者(21日、愛知県岡崎市)

国土交通省は21日午前、前日に続き開発部門のある同社名古屋製作所(愛知県岡崎市)を道路運送車両法に基づき立ち入り検査した。同社がどのような走行実験を実施していたのか社内の資料を詳しく調べるとともに、関係者からも事情を聴く。
同省は、三菱自に対し27日までに詳細を調査し報告するよう指示している。不正が行われた経緯などを調べ、行政処分も検討する。

三菱自に立ち入り検査 国交省、燃費不正解明へ(4月21日)

■激しい軽のシェア争い

国内の軽自動車は価格や税金の安さなどを背景に2015年度の車名別新車販売では上位10車種のうち6車種を軽が占めるほどの人気だ。
ただ、競争は激しい。ダイハツ工業、スズキのトップ2などに比べて企業体力に劣る三菱自に焦りがあったとの見方が出ている。

三菱自不正、影響拡大も 海外向け車両も調査(4月21日)

ダイハツ工業の「ミライース」やスズキの「アルト」など、燃料1リットルあたりの走行距離が30キロメートル台後半で競争を繰り広げている。
ある販売店幹部は「ガソリン価格が一時に比べて下がったとはいえ、エコカー減税もあり、消費者は燃費の良さには敏感だ」と話す。

軽、激しいシェア争い(4月22日)

■「リコール隠し」で経営危機に

同社をめぐっては2000年と04年に「リコール隠し問題」が発覚し、信頼を大きく失った経緯がある。

三菱自、過去の教訓生かせず 苦悩の色浮かべ社長陳謝(4月21日)

三菱重工の自動車部門が分離して1970年に発足した三菱自動車は、90年代に多目的レジャー車(RV)「パジェロ」のヒットなどで成長。2000年には独ダイムラークライスラー(現ダイムラー)から3割の出資を受け傘下に入った。
だが同年、トラックが脱輪・死傷事故を起こし組織的なリコール(回収・無償修理)隠しが発覚。04年には新たなリコール隠しも明るみに出た。
ダイムラーは三菱自の商用車事業を買収し「三菱ふそうトラック・バス」として傘下に置いたが、乗用車事業での提携は解消。三菱自は経営危機が深まった。

ダイムラーに代わり支援に乗りだしたのが三菱グループ3社。04~05年に総額6000億円規模の優先株を引き受けた。05年には三菱商事出身の益子修社長が就任し再生を目指してきた。

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自動車業界では大手と中堅の戦略の違いが鮮明になりつつある。
トヨタや独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)などの大手は世界販売を年1千万台前後まで伸ばし、なお生産拠点の拡大競争を続ける。
世界販売120万台の三菱自などは戦略の強弱を付けざるを得ない。すべての地域で展開するよりも得意分野に絞り込む戦略を急ぐ。

中堅車メーカー、進む選択と集中 三菱自、米生産撤退を発表(2015年7月28日)

三菱自はリコール隠し問題による経営危機を脱し、14年に16年ぶりに復配していた。今回の不正問題が経営に与える影響は大きく、企業体質が再び厳しく問われる。

三菱自、燃費5~10%不正に上乗せ 軽4車種62万台(4月20日)

過去の教訓が生かされなかった理由を問う質問に、相川社長は「コンプライアンスを浸透させようとやってきたが、社員一人ひとりに浸透できなかった」と言葉を絞りだした。

三菱自、過去の教訓生かせず 苦悩の色浮かべ社長陳謝(4月21日)

販売店への影響も必至(三菱自の都内販売店、左がeKワゴン)

販売店への影響も必至(三菱自の都内販売店、左がeKワゴン)

■消費者に怒り

三菱自動車の販売店では21日朝から従業員が顧客への説明に追われた。不正が明らかになった「eK」シリーズを注文した顧客に連絡をとり、納車できなくなったことを謝罪した。
愛知県に住む自営業の男性(42)は「スズキなど他社のクルマも検討したが、価格が安く燃費もさほど見劣りしなかったので購入を決めた」と語り、「ごまかされていたのかと思うと腹が立つ。下取り価格などに影響が出た場合は、誰が責任を取ってくれるのか」と怒りをあらわにしていた。

顧客「ごまかされた」怒りあらわ 謝罪に追われる販売店(4月22日)

高市早苗総務相は22日の閣議後の記者会見で、三菱自動車の燃費試験データ改ざん問題を巡り、燃費が良い車の税負担を減らすエコカー減税の減税額が変わった場合、三菱自が差額を負担するのが「当然だと思う」と述べた。
「買った方は当然エコカーであると信じて買ったので、遡って税負担される必要はない」と購入者に負担を求めない考えを示した。

三菱自動車のエコカー減税差額負担、総務相「当然」(4月22日)

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