2019年7月19日(金)

熊本を支援、自治体・企業が教訓生かす

2016/4/19 18:00
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熊本市への支援物資をトラックに積む仙台市職員(16日)

熊本市への支援物資をトラックに積む仙台市職員(16日)

熊本県を中心に相次ぐ地震で、企業や自治体の間で被災地への支援の輪が広がっている。全国の自治体が医療や水道復旧を担う職員を送り込んでいるほか、鳥取県や沖縄県などが災害派遣医療チーム(DMAT)、東京都や岐阜市などは水道職員を派遣した。被災地のニーズを把握してから支援に動いて混乱を防ぐなど、各地の自治体が経験した震災で得た教訓も生かしている。

■北海道

北海道や札幌市などの自治体は物資を送ったほか、医療チームも派遣した。自動変速機や無段変速機を製造するトヨタ自動車北海道(苫小牧市)は、週内は残業や休日出勤を取りやめて生産量を減らす。

北海道電力は九州電力から16日に応援要請を受け、18人の要員を九州に派遣。停電状態を解消し、早期の電力供給につなげる。最大出力400キロワットの発電機車4台と、高所作業車4台なども船で九州に向けて派遣した。

熊本地震、道内にも影響 車部品など出荷停止(4月19日)

支援物資提供を発表する秋元克広札幌市長(18日、札幌市)
(18日、札幌市)

支援物資提供を発表する秋元克広札幌市長(18日、札幌市)
(18日、札幌市)

■東 北

東北電力は九州電力からの要請を受け、1台で100世帯分の電気をまかなう発電機を積んだ車両5台を熊本県に派遣した。停電の復旧に取り組むため、電柱など高所で作業するハシゴを積んだ車5台と応援要員41人も熊本に向かった。

宮城県は18日、情報収集や物資の配布支援にあたる職員4人を送り出した。まず1週間滞在し、その後は交代しながら職員を常駐させる。村井嘉浩知事は同日の記者会見で「宮城県には東日本大震災を経験した多くの職員がいる。中長期的には必要に応じて、派遣要員を増やす」と語った。

福島県も同日、静岡県と共同で計10人を派遣することを決めた。熊本県嘉島町で被害状況の把握や避難所運営の支援、物資受け入れの調整を担う。内堀雅雄知事は定例記者会見で「支援物資の提供については、現地が求めるものが何かを見極めながら進める」と述べた。福島市は米や水、簡易トイレなどを送った。

仙台市は熊本市に粉ミルク300キロなどをトラックに積んで発送した。物資誘導などのため職員2人も派遣している。

トヨタ自動車東日本はアイシン九州(熊本市)などの関連工場が被災して部品の確保が難しくなり、宮城と岩手の主力工場を停止する。土曜出勤などで生産の遅れを挽回する方針だが、復旧が遅れれば影響拡大が懸念される。

東北の官民、熊本に人員や物資 地震被災地を支援(4月19日)

■北関東

群馬県と前橋市、高崎市は避難者の健康チェックや避難所の衛生対策のため、24人の保健師を21日から順次派遣する。水などの物資も茨城県守谷市、石岡市、栃木県栃木市、矢板市、前橋市、高崎市などが相次いで提供を決めた。

栃木県と群馬県は災害派遣医療チーム(DMAT)の隊員を、それぞれ4人と7人送った。医師や看護師、調整担当などからなるチームで、それぞれ現地の救助活動と連携して、被災者の診療・治療に当たる。

プロスポーツチームも支援に動いている。宇都宮市に本拠を置く栃木サッカークラブ(SC)は預金口座で募金を受け付け始めたほか、4月24日と5月8日に同市で開く試合の会場で義援金を募る。ザスパクサツ群馬(前橋市)も16日の前橋市の試合で約37万円の義援金を集めて、被災地に送った。

北関東、保健師派遣や物資提供 熊本地震で(4月19日)

■新 潟

新潟県や県内企業も被災地支援を拡大させている。県は保健師らを被災地へ派遣する準備を始めたほか、飲料水や乾燥備蓄米(アルファ米)などの物資を順次、発送する。

亀田製菓などの食品メーカーもおかゆや米菓などを送り始めた。中越地震などの震災経験も生かし、被災地の復旧・復興を支援する。

新潟の官民、熊本地震で支援拡大 飲料水や備蓄米発送(4月19日)

■長 野

長野県など県内自治体が被災地支援で連携する。長野県は18日、飲料水や保存食などの応援物資を熊本市に送った。県内の各自治体から報告を受け、提供できる物資の種類や量の取りまとめも急ぐ。今後、地域ごとに分けて物資を送る。

長野県内では自動車関連を中心に、取引先の生産停止の余波で企業に影響が広がる可能性がある。ハイブリッド車向けにセンサーを供給する多摩川精機(飯田市)は「今日明日は通常通り操業しているが、生産調整が必要になるかもしれない」(総務部)と危惧する。

長野の自治体、熊本地震の被災地支援で連携(4月19日)

■千 葉

千葉県の災害派遣医療チーム(DMAT)や災害派遣精神医療チーム(DPAT)は現地で支援活動を開始。県は簡易トイレなど非常用設備の発送も始めた。千葉市も飲料水、タオルなどの支援物資を送った。被災地からの追加要請にも応じられるよう、準備を整えている。

千葉の自治体、熊本へ医療チーム派遣 水道復旧要員も準備(4月19日)

■埼 玉

埼玉県は医師や看護師らを現地に派遣。住民から義援金を募ったり、水や簡易トイレなどの食糧・物資を送り届ける動きも活発化している。

「熊本地震の義援金をお願いします」。18日夕、大宮駅西口で、埼玉県の「コバトン」や深谷市の「ふっかちゃん」など県内を中心に10体以上のキャラクターが集まり、通行人に募金を呼びかけた。

西武鉄道は17日、池袋駅(東京・豊島)で予定していたレストラン仕様の観光列車の出発式を中止した。同日の列車の到着地に近い横瀬駅(埼玉県横瀬町)での歓迎イベントは利用客に楽しんでもらうため予定通り実施したが、出発式は「熊本県での地震で大きな被害が出ていることに配慮して自粛した」という。

埼玉の自治体や企業、熊本地震で支援の輪 義援金や物資(4月19日)

大宮駅西口では埼玉県内のキャラクターが募金活動を実施した(さいたま市)

大宮駅西口では埼玉県内のキャラクターが募金活動を実施した(さいたま市)

■神奈川

 神奈川県は18日、黒岩祐治知事を本部長とする災害対策支援本部を立ち上げた。黒岩知事は「東日本大震災では古着などの物資をどんどん送った結果、現地に積まれたままになるなど、皆さんの思いを生かし切れなかったケースがあった」と指摘。「どんな支援ができるのかを洗い出し、声がかかった瞬間に動き出せるようにしておくなど的確な支援をしたい」との考えを示した。

神奈川県、心のケアへ熊本に医療チーム派遣(4月19日)

■東 京

東京都は18日、簡易トイレ2000個を熊本県に送ったほか、同日までに総勢50人規模の医療チームを現地に派遣した。東京23区長でつくる特別区長会は熊本市の支援要請を踏まえ、各区がそれぞれ食料品や生活用品などを発送し、義援金の受け付けも始めた。

熊本市内の断水に対応するため、市内の井戸の復旧を支援する水道関連の職員10人が17日夜に東京を出発。18日朝には給水袋1万個を熊本市に送った。下水道の復旧を手助けする職員14人も19日、現地に向かう。

東京都、熊本へ医療・給水で職員派遣 簡易トイレ2000個発送(4月19日)

備蓄倉庫からトラックに積み込んだ支援物資(東京都荒川区)

備蓄倉庫からトラックに積み込んだ支援物資(東京都荒川区)

■中 部

東海旅客鉄道(JR東海)は九州新幹線の復旧支援に技術者6人を派遣し、資材や機材も提供した。絶縁体の「がいし」など電力向け設備部品を生産する日本ガイシは九州向けを最優先とする緊急出荷態勢を敷いた。

熊本工場が被災した中央可鍛工業は約10人の社員を送り込み、18日から復旧作業を始めた。スズケンは糖尿病治療薬などを生産する子会社の三和化学研究所の熊本工場(熊本県宇土市)にトラックで約42トン分の水や食料、生活用品を送った。

カレー専門店「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋はガスや水道などが止まり、一部店舗で営業できない状況だ。ユニーグループ・ホールディングス傘下で衣料品専門店のパレモは入居している商業施設の営業再開の見通しがたたず、6店を再開できない状況だ。

中部企業が熊本地震で復旧支援(4月19日)

■静 岡

TOKAIグループは18日、熊本県益城町役場に自社商品の宅配水「うるのん」500ミリリットルペットボトルを1万2000本届けた。19日には県の災害対策本部に1万9200本を届ける予定だ。

家庭紙製造のイデシギョー(富士市)は震災支援でティッシュペーパー6000箱分やウエットティッシュ、ペットボトル入りの水を熊本に無償で送る。19日に支援物資を積んだトラックが出発し、20~21日に到着予定だ。ティッシュペーパーや水が不足している熊本で活用してもらう。

静岡の企業、調達先確保や被災者支援 熊本地震で(4月19日)

■北 陸

アルミサッシなどを生産するYKKAPの九州製造所(熊本県八代市)では18日、設備点検のためすべての生産ラインを停止した。15日の午後から順次復旧していたが、16日未明にも強い地震が起きたことから再び停止。同社は「余震の状況を見ながら再稼働の時期を見極めていく」とした。

自治体の間では、水や非常食の送付以外でも被災地支援の動きが広がってきた。福井県鯖江市は、インターネット上で不特定多数から小口の資金を集めるクラウドファンディングを活用する。

富山県は18日、被災者の心のケアなどにあたる医療チーム「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」を熊本赤十字病院に派遣した。精神科の医師や看護師ら4人で構成しており、今後避難所や病院で活動する。

熊本地震、北陸企業に影響広がる 現地営業停止など(4月19日)

富山県は被災者の心のケアをする医療チームを派遣した(18日、富山市)

富山県は被災者の心のケアをする医療チームを派遣した(18日、富山市)

■近 畿

ダイハツ工業は18日、軽自動車などを生産する大分工場(大分県中津市)と、エンジンを生産する久留米工場(福岡県久留米市)の稼働を22日まで休止すると発表した。

堀場製作所は部品を生産する堀場エステックの阿蘇工場(熊本県西原村)で高圧受電設備が破損し、設備に通電できず、生産が再開できない状況が続く。18日には工場の設備の点検などを実施した。

関西電力は電源車や高所作業車など車両36台と、支援要員73人を九州電力に派遣。大阪ガスは日本ガス協会の要請を受けて熊本県へ約600人の応援隊を派遣する。18日時点で約500人が出発した。

熊本地震、企業活動の正常化には時間 ダイハツなど関西企業(4月19日)

大阪ガスは18日、中国自動車道加西SAで復旧隊の出陣式を開いた

大阪ガスは18日、中国自動車道加西SAで復旧隊の出陣式を開いた

■中 国

被災して通帳や印鑑がない預金者に対応し、山口フィナンシャルグループ傘下の北九州銀行は通帳や印鑑がなくても払い戻しに応じる。被災した中小企業には事業再建に向けた特別融資を開始。自宅が損壊した被災者には家財や自動車の購入資金に充てる災害復旧ローンも始めた。

マツダは22日まで通常通り生産する。防府工場(山口県防府市)の一部ラインを除き昼夜2直体制で生産している。九州にも部品メーカーがあり、生産への影響を見極める。

熊本地震、中国地方企業への影響拡大 物流、現地で集配中止(4月19日)

九州に最も近い山口県は九州・山口9県災害時応援協定に基づき、毛布・ビニールシート・タオル約7千枚、給水車6台、動物用ケージ、犬猫の餌を送った。併せて九州知事会の要請を受け、熊本県御船町に職員派遣を決めた。

被災建築物・宅地危険度判定士を派遣したのは岡山県だ。岡山、倉敷両市と共同で計10人が現地で活動を始める。島根県も同様に職員6人を現地に向かわせた。

東日本大震災の教訓を生かす動きもある。鳥取県は電気を供給できるプラグインハイブリッド(PHV)車1台を派遣。職員の移動のほか避難所で被災者の携帯機器の充電などに活用する。

熊本地震、中国地方の自治体が支援本格化(4月19日)

鳥取県は支援対策本部を立ち上げた(鳥取市)

鳥取県は支援対策本部を立ち上げた(鳥取市)

■四 国

愛媛県内では九州に近い八幡浜市で16日に震度5弱を観測。県は熊本地震関連の情報を一元管理する災害警戒本部を設置し、四国電力伊方原子力発電所(伊方町)への影響や熊本県への支援状況を把握する体制を整えた。

四国から現地に進出している企業の影響も拡大している。子会社が熊本県内で14店を運営するホームセンターのDCMダイキ(松山市)は、熊本市の3店舗が15日から営業を休止。1店はいったん営業を再開したが、16日未明の地震で再び休業に追い込まれた。

熊本地震、四国自治体が支援を本格化 救助・医療班、現地に(4月19日)

四国地方整備局は遠隔操作できる油圧ショベルを派遣

四国地方整備局は遠隔操作できる油圧ショベルを派遣

■九 州

熊本県の生乳生産は全国3位を誇るが、酪農家は被害が大きかった県北東部の阿蘇地方周辺に集中している。牛舎や加工施設が損壊し一部で生乳の出荷が止まっている。全国シェア1位のトマトなど青果物にも影響が出ているが、流通は徐々に回復に向かっている。

陸路で養殖のブリやタイを関東などへ出荷する東町漁業協同組合(鹿児島県長島町)は地震を受け、一部区間でフェリーを利用するなどで対応。生産者も流通網維持に試行錯誤している。インフラが復旧し、小売店の営業や市民生活が正常化するまでは、食品流通も混乱が続きそうだ。

熊本地震、阿蘇の酪農に打撃深刻 青果流通は徐々に回復(4月19日)

九州・沖縄の食品スーパーでは、物流混乱などによる品薄を受け、熊本県産の一部商品の仕入れ先を他の地域に切り替える動きが出ている。ディスカウントストアでは商品の購入数に制限をかけるなどの例もある。

沖縄県を地盤とするスーパー大手のサンエーは、ゴボウやタマネギ、いちごなど熊本県産の生鮮品の産地を切り替えて販売。地震の影響で熊本県からの物流に支障が出ているためだ。熊本県内の工場で製造している納豆やゼリーなどでも欠品が出ており、「他の商品への切り替えを検討している」(同社)という。

一部の企業では購入点数に制限をかける動きも。ディスカウントストアのMrMaxは16日未明の本震を受け、同日朝から飲料水やカップ麺などの商品で1人あたりの購入点数を制限した。JR九州ドラッグイレブンも「店長の判断で、飲料水に関して購入制限をかけている店舗がある」(経営企画部)という。

九州・沖縄の小売り、食品調達を熊本産から変更の動き(4月19日)

熊本県外でも飲料水などの品薄が続いている(福岡市のマックスバリュ博多祇園店)

熊本県外でも飲料水などの品薄が続いている(福岡市のマックスバリュ博多祇園店)

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