日経プラス10「フカヨミ」

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規制が追い風 広がるビットコインの輪
木ノ内敏久シニア・エディターに聞く

2016/4/18 11:23
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小谷:仮想通貨「ビットコイン」の取引が再び増え始めています。ビットコインは2009年に誕生したインターネット上での決済取引などに使用される仮想通貨です。一躍注目を集めたものの、2014年にビットコインの取引所「マウントゴックス」が経営破たんし、一時は安全性などのへの懸念が高まりました。しかし、取引量は再び増加傾向にあり、取引の安全性を高めることなどが焦点になっていました。そこで政府は先月、ビットコインなど仮想通貨への規制を盛り込んだ「資金決済法」の改正案を閣議決定し、今の通常国会での成立を目指しています。
 日本経済新聞の木ノ内敏久シニア・エディターに聞きます。ビットコインの取引が再び増えているようですね。

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

木ノ内敏久・シニア・エディター(2016年4月13日放送)

木ノ内敏久・シニア・エディター(2016年4月13日放送)


■半年で取引所での売買5倍に

「マウントボックスの破たん後も世界では順調に取引が拡大していました。日本でもこの半年で取引所での売買量が約5倍に増えています。また、3月に入り投資情報会社のフィスコが取引所ビジネスへの参入を決めるなど日本でも関心が高まってきました」

小谷:なぜ、今、広がりつつあるのでしょうか?

「その答えのヒントになりそうな事例を取材しました。銀座にある回転ずし店では、去年3月にビットコインの決済システムを導入しました。決済の仕組みはまず、店にある端末に支払い用のQRコードを表示します。それを専用のアプリをインストールしたスマートフォンで読み取ります。後は送信するだけとシンプルです。

そこで実際にビットコインを支払いに使っている人は『クレジットカードほどは使わないですけど、使う機会があれば使う』と話していました。また、使い勝手についても、『クレジットカードと同じかそれ以上。海外のものを買う時にドルで買うかクレジットカードで買うか、もう一つの手段としてビットコインで買うというのがある。ビットコインで買う時はすごく楽だ』との感想でした」

■インバウンド(訪日外国人)の利用拡大見込む

「お店が導入を決めた理由も明確でした。『ビットコインのファンは海外に結構いらっしゃるということで、インバウンド需要対策として導入した』とのことでした。ただ、利用は平均月に約2~3組ぐらいとのことで。今のところ『メリットは感じられていませんが、今後に期待』と話していました」

「実際今後の普及のカギは、外国人の利用にかかっています。世界のビットコイン売買の9割を占めるのが、中国人民元による取引です。東京五輪に向け今まで以上に日本でも外国人観光客が増える見通しで、訪日外国人の決済需要をうまく取り込むことが出来るかがポイントになりそうです。さらに扱い店舗を増やすなど企業側の動きとともに重要なのが法整備になると思います」

小谷:法整備ですが、ビットコインへの規制を盛り込んだ法案が閣議決定されたとのことですが、どういった内容でしょうか?

■規制の狙いは資金洗浄の追放

「これまで政府は仮想通貨を単なるモノとみなして法律で規制せず事業者の自主規制に任せてきました。しかし、法案では、不特定多数の間で売買できる電子的に移動可能な『財産的価値』と、法的に定義し、世界初の仮想通貨法の制定を目指しています」

「法案のポイントですが、1つ目が、利用者保護のために仮想通貨と円などの法定通貨との売買を行う取引所に登録制を導入します。利用者が取引所に預けた金銭、仮想通貨の分別管理が義務化されるほか、会計監査が事業者に課せられます。2つ目が、マネーロンダリング(資金洗浄)対策に使う犯罪収益移転防止法で定める特定事業者に取引所を指定した上で、口座開設時の本人確認を徹底します。3つ目が、疑わしい取引の当局への届け出を義務化することです」

小谷:法改正しようとする政府の狙いはどこにあるのでしょうか?

「一番の目的は、先ほども触れましたが、テロ資金に使われたり、マネーロンダリングに悪用されたりするのを防ぐのが狙いです。ビットコインは金融機関を通さず、しかも匿名で使えるので犯罪組織が悪用する恐れがあります。G7でも問題になっており、日本として国際協調のため取り締まりに踏み切ることにしました。もう一つは、利用者保護と新産業の育成です。ビットコインは最近流行の(金融と情報技術を融合した)フィンテックの筆頭格の技術と目されています。今後様々な金融サービスが生まれると期待されています」

小谷:仮想通貨が規制されるということで、取引所やビットコイン利用者からの反発はなかったのでしょうか?

■業者側が規制求める

「反発がないどころか、むしろ、事業者側は歓迎しています。ビットコイン関連の事業者が設立した日本価値記録事業者協会という団体があります。この団体の代表理事は、『過度な規制ではなく最低限のルール作りがなされたバランスの取れた法案』と高く評価しています。今回の規制導入に至る前から、この業界団体は国会議員や関係省庁との話し合いを続けてきました。産業育成の上でも法規制が必要と業界側から規制を働きかけていた側面もあります」

小谷:業界側から率先して規制を求めるというのは、非常に珍しい現象ですね。

「法制化は業者にとっても悪い話ではありません。日本国内では14年のマウントゴックスの破たん以来ビットコインに対して否定的なイメージを持つ人が少なくありませんでした。日本の消費者は政府が何の規制もしないものを安易に信用しない傾向が強いといわれています。法制化により、消費者にある程度安心感を与えられる効果が期待できそうです。行政側の法インフラ整備、それに企業努力の両輪がうまくかみ合うなら、ビットコインは国内でも便利で手軽な決済手段として利用が広がる可能性があります」

日経プラス10のホームページ http://www.bs-j.co.jp/plus10/

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