「パナマ文書」世界揺るがす - 日本経済新聞
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「パナマ文書」世界揺るがす

(更新)

世界の指導者や著名人らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用していた実態を暴露した「パナマ文書」で、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が日本時間10日、ペーパーカンパニー約21万社の情報などを公開した。4月に資産隠しや課税逃れの疑惑につながる一部の資料を公開した結果、アイスランドのグンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど世界に衝撃を与えた文書。今回の資料公開で、さらに波紋が広がりそうだ。

蓄財や金融取引の「税逃れ」暴く

パナマ文書が明らかにしたのは政治家や富裕層が、税率がゼロか極端に低いタックスヘイブンを使って蓄財や金融取引をしていた実態だ。流出元の法律事務所が設立に関わった21万社の情報が記され、約140人の政治家や官僚の名前が挙がった。
英国のキャメロン首相は亡父が租税回避地に設けたファンドに投資して利益を上げていた。「株やファンドは持っていない」。報道で名前が挙がった直後の説明から一転、4月7日になって過去の投資と、首相就任前に持ち分を売却していた事実を英テレビで認めた。
違法性はないと釈明するが、これまで課税逃れを厳しく追及する急先鋒(せんぽう)だっただけに逆風は収まらず、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を前に政治的立場が大きく揺らぐ。
税逃れ? 次は誰 「パナマ文書」世界揺るがす(4月14日)

プーチン氏・習近平氏の関係者も

中国では習近平国家主席の実姉の夫とされる鄧家貴氏の名前が挙がった。反腐敗を権力闘争の道具としてきただけに、当局は神経をとがらせる。
ネット検索を制限し、微博(ウェイボ)など交流サイト(SNS)の書き込みも削除している。
ロシアのプーチン大統領は友人の関与が指摘された。大統領報道官は米中央情報局(CIA)の関与もほのめかし「事実を捏造(ねつぞう)し、情報を操作している」と否定した。
「租税逃れ」世界揺らす 首脳周辺、資産隠し疑惑(4月6日)

メッシ選手関与? 日本の300人の名前も

民間人ではサッカーのメッシ選手、俳優のジャッキー・チェン氏らの名前が取り沙汰された。
税逃れ? 次は誰 「パナマ文書」世界揺るがす(4月14日)
ICIJに加盟する共同通信によると、パナマ文書には日本在住の個人約300人や大手商社など日本企業約20社の名前が挙がっている。こうした個人・法人が株主や役員として記載された租税回避地の法人は少なくとも270に上るという。
ICIJ、パナマ文書上のペーパーカンパニー名を公開(5月10日)

タックスヘイブンとは

租税回避地とも呼ばれ、法人税などの税率を意図的に低くする国や地域の総称。欧州のモナコ、カリブ海地域の英領ケイマン諸島などが代表的だ。

有力な産業がない国が、低税率で海外資本を集めようとして誕生した。

本国の当局の監視の目が届きにくいため、企業の不正会計、富裕層の節税、犯罪資金の資金洗浄(マネーロンダリング)の温床にもなってきた。
タックスヘイブン 意図的な低税率で企業誘致(2015年9月1日)
大企業や富裕層は会社を設けたりお金を預けたりすることで居住地の高い税金を逃れる。経済協力開発機構(OECD)の推計では、世界で失われる法人税は年最大2400億ドル(約26兆円)。全世界の法人税収の1割にあたる規模で、影響は極めて大きい。
徹底した秘密主義も特徴の一つ。タックスヘイブンに開いた銀行口座や設けた会社の情報は厳格な法律で厳しく守られる。外国の税務当局は納税者が申告しない限り、課税対象所得をつかみにくいのが実情だ。
租税回避地 どこ 旧植民地多く 秘密主義徹底(4月14日)

司法のメスはどこまで

中米パナマの司法当局は4月12日、「パナマ文書」の流出元である法律事務所を家宅捜索した。マネーロンダリング(資金洗浄)など金融犯罪への関与の有無を調べているもようだ。パナマ政府は税逃れに対する国際的な調査への協力を表明した。
パナマ文書「震源地」に捜査の手(4月14日)

「税逃れ」への目は厳しく

富裕層や多国籍企業の課税逃れを助けるビジネスが誕生し、タックスヘイブンを経由する資金の流れはつかみにくくなる一方だった。国家間の税率の差を突いた多国籍企業の課税逃れも増えてきた。ところが2008年の金融危機に伴う各国の財政悪化を背景に、こうした動きに対する世論の目は厳しくなっている。スイスの金融大手UBSによる米国人の脱税ほう助事件や、米スターバックスの節税策が批判を集め、OECDなど先進国は包囲網を築いてきた。

17年から各国の税務当局による定期的な情報交換が始まる。タックスヘイブンの国々も批判を受けて少しずつ情報提供を始めた。個人や企業は外国での金融取引で一段と正確な申告が求められることになる。
租税回避地 どこ 旧植民地多く 秘密主義徹底(4月14日)
オバマ米政権は5日、タックスヘイブン(租税回避地)を巡るパナマ文書問題を受けて、企業や個人の課税逃れ対策を強化する法改正を米議会に提案した。匿名性の高いペーパー企業などの実質的な所有者の報告を義務付け、資産隠しやマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐのが柱だ。
米政府、課税逃れ対策強化の新法案 実質保有者の報告義務付け(5月6日)

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