2019年5月20日(月)

日経プラス10「フカヨミ」

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北海道新幹線 課題を抱えての「出発進行」
原孝二地方部担当部長に聞く

2016/4/4 10:00
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■在来線との共用区間、最高速度に制限

小谷:北海道の長年の悲願であった新幹線が、ついに北の大地に到達しました。北海道新幹線開業で何が変わるのか。今日は観光への起爆剤として期待がかかる一方、課題も多いといわれる北海道新幹線を分析します。まずは簡単に開業までの経緯を振り返ります。
1973年、北海道新幹線の整備計画が決まりました。そして、国鉄が分割民営化された翌年の88年には青森と北海道を海底で結ぶ青函トンネルが開業しました。その後、様々な情勢の変化によって足踏みを余儀なくされてきましたが、42年あまりの時を経て2016年3月26日、ついに開業を迎えました。
 日本経済新聞の原孝二地方部担当部長に聞きます。原さんは開業翌日の3月27日、実際に北海道新幹線に乗車されたそうですが、いかがでしたか。

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

原孝二地方部担当部長(2016年3月29日放送)

原孝二地方部担当部長(2016年3月29日放送)


「今回開業した、新青森から新函館北斗までの区間に乗りました。この区間は全長149キロあり、うち82キロが在来線、貨物との共用区間になります。この部分は最高速度が140キロに制限されています。新幹線なのに意外に早くないな、トンネル部分も意外に長いな、という印象でした。乗車率は開業当日が61%、翌日には37%まで下がってしまいました」

■乗車率向上に「4時間の壁」

小谷:開業翌日に37%というのは、低い乗車率ですね。

「そうですね、昨年開業した北陸新幹線は開業3日間の平均が48%だったので、それに比べると低い数字になります。しかし、JR北海道(北海道旅客鉄道)はもともと26%を想定しており、そういった意味では想定内といえると思います」

小谷:なぜ、想定乗車率がそんなに低いのでしょうか。

「飛行機と比べた場合の利便性をまだ打ち出せていないからです。一般に、飛行機ではなく鉄道を利用する目安として『4時間の壁』があるとされています。4時間を切ると飛行機ではなく新幹線を使うといわれますが、北海道新幹線の場合は、東京から新函館北斗駅まで4時間2分と、わずかながら4時間を切ることができませんでした」

「もう一つ、飛行機の場合、函館は空港と駅の間がバスで20分程度と近く、利便性が高いといえます。人気のある温泉街、湯の川温泉も空港のすぐ近くです。一方、北海道新幹線は新函館北斗という駅に止まります。そこから函館駅に行くには、はこだてライナーという在来線に乗り換えて約20分かかります。もちろん、短時間で乗り換えられるようになってはいますが、東京からの合計時間を考えると、4時間半ほどかかってしまいます」

「JR北海道はできるだけ早く3時間台に短縮したい考えですが、4時間をわずかに切る程度でしたら飛行機の方が利便性は高く、利用者を奪うことは難しいのではないかと思われます」

■割高な料金 背景に青函トンネル問題

小谷:新幹線と飛行機、料金面での競争はどうでしょうか。

「新幹線は2万2690円、飛行機は3万7890円です。これだけ見ると新幹線がだいぶ安いように見えますが、パックツアーや様々な割引料金を使用すると同じ程度になります。そうすると、利便性が高い飛行機の方が強いといえるのではないかと思います」


小谷:なぜ、北海道新幹線の料金は割高なのでしょうか。

「一番のネックは、世界最長の海底トンネルである青函トンネルの問題です。青函トンネルを含む、新幹線と在来線、貨物との共用区間は、3本のレールが並ぶ『三線軌条』という仕組みになっています。これは、新幹線が外側のレールを使い、貨物列車などは内側のレールを使うという、非常に特殊な形態です」

「こうした新しい運用をしているため、安全のためのシステム投資にまずお金がかかります。また、青函トンネル自体はずいぶん前に開業しているので、維持管理のための費用がかかります。その結果、向こう3年間は年間50億円の赤字が見込まれています」

■北海道・東北の観光連携に活路

小谷:それが料金にも上乗せされているということですね。乗車率を増やすための打開策は何かありますか。

「東京圏との結びつきという意味では、まだ厳しいものがありますが、函館と青森、北海道の南側と東北の北側を結ぶといった、観光面での連携が一つのカギになる可能性はあります。その連携効果を最大限に生かそうと積極的に取り組んでいるのが青森県です」

「函館を訪れる外国人観光客は年間約35万人です。この数字は東北6県の合計に匹敵します。青森県は新幹線を生かしながら、函館を訪れた外国人観光客の誘致に力を入れる考えです。実際、新幹線開業日の3月26日に青森県の三内丸山遺跡を訪れてみますと、以前よりもかなり外国人客が増えているな、という印象でした」

「北海道新幹線は札幌までの延伸が2030年度末と言われています。それまでは今の体制が続くわけですから、青森と函館を中心とした、北海道と東北の観光連携による集客拡大が不可欠だと思います」

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