五輪開催国で何が起きている? ブラジルの政治混迷

2016/3/31 18:00
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「ジルマ(・ルセフ)大統領は出て行け」と声を張り上げる人々(3月13日、サンパウロ)

「ジルマ(・ルセフ)大統領は出て行け」と声を張り上げる人々(3月13日、サンパウロ)

ブラジルのルセフ大統領率いる連立政権が苦境に立たされている。国営石油会社を舞台にした汚職疑惑の広がりなどで政権批判が強まり、議会ではルセフ氏に対する弾劾手続きも進む。3月29日には最大政党が連立からの離脱を決定。経済でも資源安の影響でマイナス成長に落ち込んでおり、今年8月のリオデジャネイロ五輪開催を前に同国が揺れている。

■300万人がデモ

ブラジルの最大政党、ブラジル民主運動党(PMDB)は29日、首都ブラジリアで幹部会を開き、ルセフ大統領の所属する労働党と組む連立政権からの離脱を決めた。
6人の閣僚や各省庁の幹部も引き揚げる方針だ。議会で弾劾手続きが進むルセフ氏の政権運営は一段と苦しくなる。
政局混迷を受けて、ルセフ氏は31日に米国で始まる核安全保障サミットへの参加見送りを決めた。

ブラジル、最大政党が連立離脱 政権運営一段と苦しく(3月30日)

ブラジルで3月13日、ルセフ政権に抗議するデモが全国各地で行われた。地元メディアによると、少なくとも300万人が参加した。
2011年発足のルセフ政権に対する反政府デモでは過去最大となった。
最大都市サンパウロでは、中心部のパウリスタ大通り周辺に参加者が集結し、道路が埋め尽くされた。

ブラジルで反政府デモ 300万人参加、汚職疑惑拡大に反発(3月14日)

■大統領への弾劾請求

国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職疑惑が広がっている。

ブラジル政府は3月16日、ルラ前大統領を17日付で重要閣僚の一つである官房長官に起用すると発表した。
ルラ氏は国営石油会社を巡る不正献金疑惑で検察当局などの捜査対象になっている。ルセフ大統領は自らの後ろ盾であるルラ氏を入閣させて捜査当局から「隔離」する奇策を繰り出したかたちだ。
議会とのパイプが太いルラ氏の起用でルセフ氏自身も弾劾のリスクを減らしたい思惑もあり、野党や国民は一斉に反発している。

ブラジル、前大統領訴追回避へ奇策 重要閣僚に起用(3月18日)

国営石油会社を舞台とした与党政治家による汚職疑惑への捜査が進むなか、3月17日には議会で大統領に対する弾劾手続きが始まった。
野党関係者は昨年後半、ルセフ氏が2014年10月の大統領選挙前に社会保障関連の予算を正式な手続きなしで執行したとして議会に弾劾を請求した。
すべての手続きが終わるのは最短でも5月末との見方が多い。

ブラジル大統領に退陣圧力 弾劾手続き開始(3月19日)

ルセフ氏は2014年に政府会計を不正に執行したとして、下院議員65人でつくる「特別委員会」で審議中だ。
4月には下院での審議に移る見通しで、3分の2以上の賛成で上院に送られる。
上院の過半数が賛成すればルセフ氏は180日間職務が停止され、再審議を経て弾劾が成立する。

PMDBは閣僚6人が政権から引き揚げる方針だが、テメル副大統領は留任する。

ルセフ氏が罷免された場合、テメル氏が大統領に昇格して18年末までの残りの任期を務める。既にテメル氏は大統領昇格に備えて他党や支持者と政策を検討し始めているとの報道も出ている。

与党がルセフ氏の弾劾を阻止するには下院(議席数は513)の採決で議員の3分の1以上が反対票を投じる必要がある。
地元メディアによるとPMDBの離脱後も下院での与党の議席数は216席となり、阻止できる計算だ。
だが予断を許さない。有力政党PMDBの離脱は他党の連立離れを促す可能性があるからだ。

ブラジル連立維持、瀬戸際 最大政党が離脱(3月31日)

■資源安でマイナス成長

国民の不満は景気の失速にも向けられている。

ブラジルの2015年の実質国内総生産(GDP)は前年比で3.8%減と6年ぶりのマイナス成長だった。
長引く資源安を背景に投資が低迷するなか、企業の人員削減や通貨安に伴う物価上昇で消費が振るわなかった。
2年連続のマイナス成長なら世界恐慌時の1930~31年以来85年ぶり。景気悪化は止まらず、昨年後半以降、大手格付け会社は相次ぎブラジル国債を「投機的」と判断した。

ブラジルの経済不安 資源安で投資低迷(3月12日)

なかでも響いたのが、与党政治家への不正献金疑惑の舞台となった国営石油会社ペトロブラスの投資削減だ。
ブラジル屈指の巨大企業である同社は、15年の投資額を230億ドル(2兆6千億円)と当初計画より50億ドル減らした。

ブラジルGDP、15年は実質3.8%減 6年ぶりマイナス(3月4日)

ブラジルの経済不安を受け、日本企業が現地戦略を見直す動きが広がり始めた。
IHI、日揮、ジャパンマリンユナイテッド(東京・港)の3社は共同で出資するブラジル最大級の造船所から撤退する。新日鉄住金は現地鉄鋼大手の経営再建を支援するため追加出資を迫られる。
ただ、五輪開催を控え、人口も2億人を超えるブラジルは中期的な市場の成長余地が大きい。近年集積した製造業が現地工場からの輸出を伸ばそうとする動きもある。

造船、ブラジル生産撤退 IHIなど資源安で(3月12日)

8月5日にリオ五輪が開幕するブラジル。政治の混迷から抜け出せるか。

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