2019年1月21日(月)

シャープを傘下に 鴻海と郭台銘氏の素顔

2016/2/26 18:00 (2016/3/30 17:35更新)
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シャープ本社を訪れた鴻海の郭董事長。首に巻いた黄金色のスカーフは必勝のお守りという(2月5日、大阪市阿倍野区)

シャープ本社を訪れた鴻海の郭董事長。首に巻いた黄金色のスカーフは必勝のお守りという(2月5日、大阪市阿倍野区)

シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ることが決まった。両社が30日、それぞれ取締役会を開いて決めた。4月に正式に調印する見通しだ。売上高が15兆円に迫る巨大企業の鴻海と、それを1代で育て上げた郭台銘(テリー・ゴウ)董事長(会長に相当)の経営スタイルについてまとめた。

■iPhoneやゲーム機生産 ペッパーも

鴻海は電機メーカーの生産を肩代わりする電子機器の受託製造サービス(EMS)の世界最大手。アップルのスマホiPhone(アイフォーン)のほか、ソニーや任天堂の各種ゲーム機や、ソフトバンクグループのヒト型ロボット「ペッパー」なども手掛ける。

鴻海、脱アップル依存狙う 将来の成長に投資(2月5日)

中国子会社の富士康科技集団(フォックスコン)が巨大工場を運営する。

鴻海精密工業の概要(2月25日)

中国四川省にある鴻海グループの工場

中国四川省にある鴻海グループの工場

鴻海の2015年12月期の連結売上高は前の期比6%増の4兆4830億台湾ドル(約14兆8000億円)。郭氏は「今後は10兆台湾ドルの売上高を目指す」と豪語しており、シャープ買収をその起爆剤にしたい考えだ。

鴻海、狙いは技術力 液晶・有機EL 韓国勢を追う(2月26日)

■利益率が低下、新分野に成長力求める

鴻海は主力の生産拠点の中国の人件費上昇などを受けて利益率の低下が目立つ。主力のEMS事業以外にも、通信や自動車部品などに事業領域を広げている。

鴻海、狙いは技術力 液晶・有機EL 韓国勢を追う(2月26日)

ソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」の生産受託も、新たな成長分野に足がかりを築こうとする動きの一環だ。ロボットの生産だけでなく、自らの工場の自動化にも意欲的という。

「ペッパー」の一般販売を発表し、記念写真に納まる(右から)鴻海精密工業の郭台銘董事長、ソフトバンクの孫正義社長、アリババの馬雲会長(千葉県浦安市)

「ペッパー」の一般販売を発表し、記念写真に納まる(右から)鴻海精密工業の郭台銘董事長、ソフトバンクの孫正義社長、アリババの馬雲会長(千葉県浦安市)

■1日16時間、「猛スピード」で働く?

180センチを超える長身に鋭い眼光。郭台銘董事長(テリー・ゴウ、65)は、常に成長に飢えているようなオーラをまとった経営者だ。「即断即決」のスピード経営と交渉能力で米アップルなどの優良顧客を次々と獲得。世界で100万人超の従業員を抱える「鴻海帝国」を一代で築いた。

20代前半で鴻海を設立し、白黒テレビの部品生産をスタート。1990年代末に電子機器の受託製造サービス(EMS)事業に参入し、最大手に上り詰めた。

「鴻海が成長できた最大の要因はスピードだ」と語り、極度のトップダウン型の経営を貫く。1日16時間働く猛烈な仕事ぶりでも知られる。

郭台銘董事長、どんな人 ワンマン経営・スピード重視(2月5日)

シャープ本社での会談を終え、優先交渉の基本合意書を見せる鴻海の郭董事長(2月5日、大阪市阿倍野区)

シャープ本社での会談を終え、優先交渉の基本合意書を見せる鴻海の郭董事長(2月5日、大阪市阿倍野区)

■財産あるが…お金には興味なし?

郭氏への取材を重ねてきた調査・コンサルティング会社、TMR台北科技(台北市)の大槻智洋代表は、次のように分析する。

15兆円企業の鴻海を一代で築いた郭氏は、とてつもない富豪だ。米フォーブス誌によれば、個人資産額は56億米ドル(1米ドル=115円換算で6440億円)で、これはシャープをTOB(株式公開買い付け)で十分買収できる水準だ。

郭氏はお金にさほど興味を持っていない。自分自身が没したらごく一部を除いて福祉に寄付する計画なので、好きなだけ使える。正確に言えば個人資産のほとんどは鴻海グループの企業株なので、それを担保に巨額借り入れを起こせる。

「シャープ買収」 鴻海・郭氏が描く勝利の方程式(2月25日)

堺ディスプレイプロダクトの工場を視察する鴻海の郭董事長(中央)ら(2012年8月)=堺ディスプレイプロダクト提供

堺ディスプレイプロダクトの工場を視察する鴻海の郭董事長(中央)ら(2012年8月)=堺ディスプレイプロダクト提供

■ワンマン経営、あつれきも

力があるだけに強引とも映る郭氏の経営スタイルは、時に周囲とのあつれきも生んできたようだ。

液晶事業参入の際などの幹部やアドバイザーの意見だけでなく、役員会の議決も無視し、自分の決定を絶対とする典型的なワンマン経営者としても知られる。上意下達の軍隊式の経営スタイルにより「後継者が育たないことが最大の経営リスクになりつつある」との指摘も出ている。

郭氏、地元では評価二分 「後継育成にリスク」の声も(2月9日)

2010年には中国の広東省深圳工場で従業員が相次ぎ自殺し、「労務管理が厳しすぎるのでは」などと批判を受けた。12年のシャープとの資本・業務提携の協議では、郭氏が「丸ごと買収することもできる」などと強硬姿勢をのぞかせシャープの不信感を招いた経緯もある。

郭台銘董事長、どんな人 ワンマン経営・スピード重視(2月5日)

台湾・鴻海の中国子会社の工場の作業風景=ロイター

台湾・鴻海の中国子会社の工場の作業風景=ロイター

■郭氏、シャープをどう変える?

まとまるかに見えた12年のシャープへの出資交渉は結局ご破算になったが、学ぶところもあったようだ

郭氏は個人の投資会社によるシャープの大型液晶パネル工場への資本参加を通じ「日本人と付き合うには信頼が大事だと分かってきた」と話す。台湾でいつも見せる強硬姿勢を今回の交渉で抑えているのは前回の反省からだ。

鴻海・郭氏、思い届くか シャープ買収 執念の交渉(2月10日)

シャープの経営権を握る郭氏が、再建へどんな手腕を発揮するのかに注目だ。

鴻海の郭台銘董事長がシャープの工場を訪問した時に掲げられた両社の旗(2012年8月、堺市)

鴻海の郭台銘董事長がシャープの工場を訪問した時に掲げられた両社の旗(2012年8月、堺市)

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