英国、EU離脱問題の行方
英国で6月23日に行われる欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票に向けて、与党保守党の足並みが乱れ始めた。残留を訴えるキャメロン首相に対し、国民に人気の高いジョンソン・ロンドン市長が離脱支持に回った。国民投票の行方は混沌としてきた。
与党は残留と離脱に分裂
「英国が求める変化を実現する道はただひとつ。EUを出ることだ」。ジョンソン市長は22日付の英紙テレグラフへの寄稿でこう訴え、EUからの離脱支持を表明した。
ジョンソン市長は昨年の総選挙でもキャメロン首相の再選に奔走し、政権を支えてきた。だがここにきて首相とたもとを分かった背景には、次期党首・首相の座を狙う政治事情がある。ジョンソン市長と並び次期党首候補に名前が挙がるオズボーン財務相は、EU残留派だ。政敵に差をつけるためジョンソン氏が勝負に出たとの見方だ。

EU離脱なら貿易協定で不利に
英国はEUの単一市場から出ていくことになり、EUとの間で関税などについて新たな貿易協定を結ぶ必要がある。ノルウェーのように欧州経済領域(EEA)に加盟すれば、EUの外にいながら単一市場のメリットを享受できる。ただしその場合、英国がEUの規則を受け入れる必要があり離脱のメリットは限られる。スイスのようにEU加盟各国と2国間協定を結ぶという選択肢もある。現時点ではどういう扱いになるかは不透明だ。
また英国はEU以外の国々とも自由貿易協定(FTA)などを巡る交渉を新たに始める必要が出てくる。一国では交渉力が大きく低下し、企業の輸出競争力などに不利に働くとみられる。

EU離脱、支持増える
英国では深刻化する難民危機への懸念などから、EU離脱を支持する人が増えており、19日夜には大規模な離脱支持集会がロンドンで開かれた。英調査会社、ユーガブが2月上旬に実施した世論調査では離脱支持が45%と残留支持(36%)を上回った。今後は態度を決めていない約2割の人々の動きがカギを握りそうだ。

英国民投票6月23日に
キャメロン氏は20日、記者団に対し、国民投票は「英国のあり方を決める最も重大な決断になる」と述べた。そのうえで「私の考えは明快だ。改革が進むEUに残ることがより強く、より安全で、より豊かな英国につながる」と語り、国民にEU残留に投票するよう訴えた。
英国民投票6月23日に 首相、EU残留呼びかけ(2月21日)