2019年9月22日(日)

汚染水減らせるか 福島第1の凍土壁、稼働へ

2016/2/16 18:01
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福島第1原発構内に並ぶ処理済みの汚染水をためたタンク(手前)。奥には(右から)4号機、3号機(鉄塔の左)、2号機、1号機が廃炉を待つ(9日、福島県大熊町)

福島第1原発構内に並ぶ処理済みの汚染水をためたタンク(手前)。奥には(右から)4号機、3号機(鉄塔の左)、2号機、1号機が廃炉を待つ(9日、福島県大熊町)

東京電力が福島第1原子力発電所の汚染水対策として計画する「凍土壁」の設置工事が完了、原子力規制委員会は条件付きで稼働を認める方針を示した。規制委は地下水の流れや水位の急変を懸念しており、凍結の完了は今秋以降にずれ込む。地下水流入による汚染水の増加を止めるまでの道のりは依然険しい。

■全長1.5キロに「氷の壁」

原子力規制委員会は15日、東京電力が福島第1原子力発電所の汚染水対策として計画する「凍土壁」の稼働を認める方針を示した。東電は3月にも凍結を始める見通し。
規制委は地下水の流れや水位が急変することを懸念してきたが、段階的に凍結を進めるなどの対策を示したことで容認に転じた。
2015年度中を目指してきた凍結完了は今秋以降にずれ込む。

福島第1原発の凍土壁の冷却液を流す配管(9日)

福島第1原発の凍土壁の冷却液を流す配管(9日)

凍土壁は1~4号機の建屋を囲むように全長1.5キロメートルにわたって土壌を凍らせて壁を築く。建屋に流れ込んで汚染水になる地下水を遮断するのが狙い。
東電は1日に約150~200トンある地下水の流入を半分以下に減らせると見込む。設置工事は14年6月に始まり、今月9日に完了した。

凍土壁、来月にも凍結開始 福島第1、規制委が容認(2月15日)

セ氏マイナス30度の冷却液を地中に流し込み、土壌を凍らせて「氷の壁」を築く設備だ。

福島第1、凍土壁準備が完了 汚染水を抑制(2月10日)

昨年2月に公開された凍土壁工事の現場=4号機の建屋近く、代表撮影

昨年2月に公開された凍土壁工事の現場=4号機の建屋近く、代表撮影

■凍結作業は海側から

原子力規制委員会は凍土壁の稼働に慎重な姿勢を示していた。

規制委は、凍土壁によって建屋周辺に地下水が流れ込まなくなり、地下水の水位が大きく下がることに懸念を示した。
地下水水位が建屋内の汚染水の水位よりも低くなると、建屋から高濃度汚染水が漏れ出る可能性も否定できないという。
汚染水対策では過去に何度も失敗があるだけに、規制委の目は厳しい。

建屋周辺の「凍土壁」 高濃度汚染水漏れ懸念(2015年12月19日)

立ちはだかる汚染水(2月14日)

15日の規制委の検討会で、東電は地下水の流れに大きな影響が出ないよう、下流にあたる海側を優先的に凍結する計画を表明した。
山側は一部を凍らせ、水位などを監視しながら段階的に作業を進める方向。水位が下がれば地中に水を注いで上げるなどし、汚染水漏れを防ぐと東電は説明する。
海側だけだと流入の抑制効果は期待できないものの、海に近い護岸付近の汚染度の高い場所に地下水が到達するのを防げる可能性があるという。
規制委は海側を中心とする凍結を3月にも認可する見通しで、345億円の国費を投じた汚染水対策の柱がようやく稼働する。
ただ東電の計画通りでも完成までには半年以上の期間がかかる。当初計画からはすでに1年の遅れが生じているが、工程はさらにずれ込むことになる。

福島第1原発の凍土壁 凍結作業、海側から(2月16日)

■地下水流入で増える汚染水

福島第1原発では溶け落ちた核燃料を冷やすため、今も毎日約320トンの水を原子炉に注いでおり、新たな汚染水を生む。そこに敷地を流れる地下水が同300トン流れ込み、汚染水を増やしてきた。
東電は汚染水対策として(1)放射性物質を除去する(2)建屋へ流れる地下水の量を減らして汚染水の発生を抑える(3)外部への流出を抑える――の3つを掲げる。

汚染水対策、前進の秋(2015年11月20日)

福島第1原発4号機(奥)の近くにある、地下水をくみ上げる井戸「サブドレン」(2015年8月)

福島第1原発4号機(奥)の近くにある、地下水をくみ上げる井戸「サブドレン」(2015年8月)

東電は、昨年9月に第1原発の建屋周辺にある井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げて、放射性物質を取り除いたうえで近くの海に流す作業を始めた。

くみ上げた水には、事故時に建屋周辺に飛び散った放射性物質が含まれる。浄化装置で濃度を最大約1万分の1に下げ、水質を確認したうえで港湾に放出する。
1~4号機の周辺では土壌を凍らせて地下水の流入を遮る「凍土壁」の工事も進んでおり、これらの対策を組み合わせることで、2016年度には1日100トン未満に減らす計画だ。

福島第1、地下水のくみ上げ開始 浄化して海へ(2015年9月3日)

汚染水の海への流出を防ぐ遮水壁も設置したが、別の問題も生じた。

東京電力は10月26日、福島第1原子力発電所で放射性物質を含む地下水が海に流れ出るのを防ぐため護岸付近に整備していた「海側遮水壁」が完成したと発表した。
東電によると汚染地下水の流出量は1日あたり約400トンから10トン程度に減少する見通しだ。
海側遮水壁は全長780メートル。護岸に沿って約600本の鋼管を垂直に打ち込んで並べ、壁を形成した。

福島第1、海側遮水壁が完成 汚染地下水流出を抑制(2015年10月26日)

鋼管を並べた遮水壁で地下水の流出を防ぐ。左奥は津波の被害を受けた施設(福島県大熊町)

鋼管を並べた遮水壁で地下水の流出を防ぐ。左奥は津波の被害を受けた施設(福島県大熊町)

だが油断はできない。遮水壁によって行き場を失った地下水をくみ上げて浄化してから海に排出しようとしたところ、想定を上回る汚染が見つかった。
一部を大量の放射性物質がある原子炉建屋に戻さざるをえず、結果的に新たな汚染水をつくりだしてしまう。

立ちはだかる汚染水(2月14日)

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