2018年12月11日(火)

天皇・皇后両陛下が訪問 フィリピンの過去と現在

2016/1/26 18:29
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天皇、皇后両陛下が26日から4泊5日の日程でフィリピンを訪問されている。同国は太平洋戦争の激戦地となり、一般市民を含む多くの人命が失われた。70年を経た現在、日本とは友好的な関係を築き、高い経済成長を続けている。

天皇、皇后両陛下は26日午前、羽田空港発の政府専用機でフィリピンに向けて出発された。国交正常化60周年を記念する公式行事などに出席するほか、太平洋戦争の激戦地だった同国で両国の戦没者を慰霊される。

歴代天皇のフィリピン訪問は初めてで、両陛下にとっては皇太子ご夫妻時代の1962年以来、54年ぶりとなる。

両陛下、フィリピンへ出発 両国の戦没者を慰霊へ(1月26日)

両陛下の強い意向で両国の戦没者慰霊も日程に盛り込まれた。国内外で「慰霊の旅」を続けられる両陛下にとって意義深い旅となる。

両陛下 きょうフィリピンへ 親善訪問、戦没者慰霊も(1月26日)

■太平洋戦争の激戦地

1941年12月の開戦に伴い、日本軍は海上交通路の確保などを狙い、米国の植民地だったフィリピンに侵攻。42年1月にマニラを占領するなどした。

米軍は44年から45年にかけてレイテ島やルソン島などに再上陸。マニラ市街戦では日米両軍人を大きく上回る一般市民が犠牲になったとされ、戦火は国土の広範囲に及んだ。

激戦地の証言、憎しみ超えて フィリピンで聞き取り(2015年8月14日)

太平洋戦争において日米の決戦場となったフィリピンの被害は、確実なデータはないが、全土で死者111万人(マニラの市街戦で約10万人)、物的損害は58億ドルを超えるといわれている。

米軍の空襲と砲撃による死者も多いとの見方があるものの、反日ゲリラ討伐、スパイ摘発名目で日本軍が行った市民の虐殺などもあり、戦争は日本がもたらした災厄として深い恨みを残した。

友好築いた「謝罪と寛容」 戦争の悲劇越え将来に希望託す(1月26日)

1958年1~3月に行われた初の遺骨収集後、マニラで開かれた戦没者追悼式(「比島戦跡を偲ぶ~フィリピン戦跡写真集」より)

1958年1~3月に行われた初の遺骨収集後、マニラで開かれた戦没者追悼式(「比島戦跡を偲ぶ~フィリピン戦跡写真集」より)

一つの転機は58年に初めて実施された日本政府による遺骨収集団派遣だった。

外交面では62年11月の皇太子夫妻(現天皇、皇后両陛下)の訪問が大きな反発もなく受け入れられ、両国の親善に弾みをつけた。

友好築いた「謝罪と寛容」 戦争の悲劇越え将来に希望託す(1月26日)

■アキノ大統領、経済成長に手腕

国賓として来日中に講演するフィリピンのアキノ大統領(2015年6月3日、東京都港区)

国賓として来日中に講演するフィリピンのアキノ大統領(2015年6月3日、東京都港区)

「2010年6月の就任以来、年平均で6.3%の高い経済成長を達成してきた。ビジネスが生まれ、雇用が増える好循環ができた」。アキノ大統領は2015年5月1日の演説で自画自賛した。

「アジアの病人」とまで呼ばれた停滞を破った大統領の功績は、汚職撲滅や「たばこ税」導入などの徴税強化による財政再建に強い指導力を発揮し、海外投資家からの視線を一変させたことだ。

比アキノ大統領、残り任期1年 財政再建で成果(2015年5月30日)

三菱東京UFJ銀行は14日、フィリピンの銀行大手セキュリティバンクに20%出資して持ち分法適用会社にすると発表した。

国際通貨基金(IMF)の予想によると、フィリピンの経済成長率は近年6~7%で安定し2017年には減速傾向が続く中国を上回る。

長期的に見ても1億人を超す人口の増加傾向が続く有望市場だ。

邦銀の新興国投資、成長力で選ぶ 中国偏重から転換(1月15日)

外交面では、中国と南シナ海の領有権をめぐり緊張関係にある。

国賓として来日中のフィリピンのアキノ大統領は2015年6月3日午前、第21回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社・日本経済研究センター共催)の特別セッションで講演した。

中国による埋め立てが進む南シナ海情勢について「中国の不法な領有権主張に対し、日本とフィリピンは航行の自由と法の支配を訴えてきた」と述べ、国際社会が協力して中国に対し埋め立ての再考を働きかけるよう求めた。

南シナ海、中国けん制 比大統領「埋め立て再考を」(2015年6月3日)

中国による人工島造成に反発するフィリピンのアキノ大統領は会議途中に発言を求め、激しい口調で「南沙(英語名スプラトリー)諸島で一方的な埋め立てや建設行為がある。いかに相手が強大でもASEANは許してはならない」とまくし立てた。

米中、東南アに「踏み絵」 ASEAN首脳会議、南シナ海で紛糾(2015年11月22日)

ここにきて同国の経済成長にもペースダウンがみられる。

2年前に7%台の高成長を謳歌したフィリピンも一時の勢いはない。比政府が11月26日発表した7~9月期の成長率は6%。1~3月期の5%、4~6月期の5.8%は上回ったものの、2015年通年の政府目標(7~8%)の達成は困難な状況。

東南アジア、鈍い景気回復 7~9月横ばい4.2%成長(2015年11月27日)

フィリピン株相場がさえない。

米国の利上げや中国の景気減速を受け、海外投資家の売り越し基調が続いている。今年5月の大統領選挙の結果次第で国の経済政策が変わる可能性があり、投資家は積極的には動きづらい。

フィリピン 大統領選にらみ戻り鈍く(1月6日)

フィリピンの好調な消費にも陰りが見える(2015年7月、マニラの商業施設)=写真 小谷裕美

フィリピンの好調な消費にも陰りが見える(2015年7月、マニラの商業施設)=写真 小谷裕美

■5月に大統領選

フィリピンの大統領は任期が6年で再選が禁じられており、経済や外交で成果を残したアキノ大統領は退陣しなくてはならない。

比大統領選、三つどもえ 有力候補出そろう(2015年9月18日)

有力候補は3人に絞られており、女性上院議員、グレース・ポー氏が支持率でリードする。

ポー上院議員のほか、アキノ大統領が後継指名したマヌエル・ロハス前内務・自治相、地方で根強く支持されるジェジョマル・ビナイ副大統領だ。

フィリピン大統領選、ポー氏リード 立候補締め切り(2015年10月16日)

だが昨年末、有力候補だったポー氏が出馬資格を取り消された。

フィリピン選挙管理委員会は12月1日、2016年5月の大統領選挙に出馬していた女性上院議員、グレース・ポー氏の出馬資格を取り消したと発表した。

米国暮らしが長く、フィリピン在住期間が規定に足りなかったためだ。ポー氏は無所属ながら世論調査の1番人気なだけに選挙戦の情勢に影響が出そうだ。

比大統領選の有力候補が資格停止 ポー上院議員(2015年12月2日)

2016年5月のフィリピン大統領選挙の出馬資格を取り消されたグレース・ポー上院議員の弁護士は12月23日、選挙管理委員会の決定を不服として最高裁判所に提訴することを明らかにした。

最高裁が選管の決定を差し止めれば、大統領選に復帰することができる。

ポー氏、大統領選出馬資格巡り提訴(2015年12月24日)

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