2019年1月24日(木)

イラン制裁解除、世界に光と影

2016/1/18 18:00
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米欧など6カ国はイランに科してきた経済制裁の解除に着手した。貿易や投資の活性化が期待される一方で、石油市場に流れ込むイラン産原油は価格を一段の下落に追い込みかねない。

■イランの核開発疑惑と核合意

イランの核開発は02年8月、反体制派が暴露して分かった。

イランは03年にいったんウラン濃縮停止を約束したが、06年に再開。原子力発電などの平和利用が目的だと主張したものの、軍事利用を懸念する国連や欧米が相次いで制裁を科した。

(イラン核合意は)イランが核兵器を開発することを防ぐために、欧米など6カ国が2015年7月にイランと結んだ合意。

イランがウラン濃縮に使う遠心分離機を現状の3分の1以下に減らすことなどで核開発能力を大幅に抑え、欧米と国連はイランの合意履行を条件に、経済制裁を停止、解除する内容。

イラン核合意とは(1月18日)

■イラン、合意を履行

イランは14日、西部アラクにあり核兵器原料の生産が懸念されている重水炉の炉心を撤去したと発表した。

核兵器に転用可能なプルトニウムの製造ができなくなることを意味し、イランの合意履行の焦点の一つだった。

(これに先立ち)イランは核合意に沿って、ウラン濃縮に使う遠心分離機の撤去を開始。低濃縮ウランをロシアに運び出した。

イラン制裁解除へ最終段階 IAEA、核開発巡り検証(1月16日)

■核設備縮小を確認 制裁解除に着手

国際原子力機関(IAEA)は16日、イランがウランを濃縮する遠心分離機を大幅に減らしたことなどを確認したと発表した。

IAEA、イランの核設備縮小を確認 米欧は制裁解除へ(1月17日)

イランと米欧など6カ国は16日夜(日本時間17日午前)、核開発問題を巡る最終合意の履行を宣言した。

16日、ウィーンで、対イラン制裁の解除を宣言し、笑顔を見せるイランのザリフ外相(右)と欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表=共同

16日、ウィーンで、対イラン制裁の解除を宣言し、笑顔を見せるイランのザリフ外相(右)と欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表=共同

米国や欧州連合(EU)はイランに科してきた経済制裁を解除する手続きに着手した。

イラン制裁解除へ、米欧など6カ国 核合意履行受け(1月18日)

オバマ米大統領は17日、ホワイトハウスで演説し「イランは核兵器を手にすることはなくなり、米国や世界はより安全になった」と強調した。

オバマ氏は400以上の個人・団体を対イラン制裁対象から解除、イランの海外資産約1千億ドル(約12兆円)が凍結解除される見込みだ。

米大統領、イランに硬軟両様 核合意履行受け演説(1月18日)

日本政府も米欧と足並みをそろえ対イラン制裁解除に踏み切る。2年超の貿易保険契約を禁じる規制を撤廃。日本企業による石油・ガス分野の新規投資を認める。投資協定の2月署名に向けた調整も進め、企業進出に向けた環境整備を急ぐ。

日本も制裁解除「速やかに」、足並みそろえる(1月18日)

■イラン市場争奪戦に号砲

制裁解除はイラン市場をめぐる競争の始まりを告げる号砲だ。

同国の石油・ガス資源へ向ける外国企業の視線は熱い。

したたかなのはアジアから欧州に至る経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国。習近平国家主席がいち早くイランに乗り込む。

イラン制裁解除、光と影 米と37年間対立(1月18日)

イラン投資へ環境整備急ぐ 政府、協定大筋合意へ(2015年10月10日) 

イランは人口約7800万人と中東屈指の市場でもある。自動車や家電、医療機器などへの潜在的な需要は大きい。質の高い日用品を望む声も強く、様々な分野で日本企業にも商機がうまれそうだ。

イラン制裁解除へ最終段階 IAEA、核開発巡り検証(1月16日)

日産自動車はスズキ、マツダなどと2015年10月の岸田文雄外相のイラン訪問に同行。制裁解除をにらみ、部品メーカーなどと輸出再開に向けた調達・配送体制の調整を進めてきた。いすゞ自動車も小型トラックなどの輸出再開を検討している。

日本企業、投資に意欲 イラン制裁解除へ(1月18日)

■石油市場に流れ込むイラン産原油

一方、制裁解除によって石油市場に流れ込むイラン産原油は価格を一段の下落に追い込みかねない。

イラン制裁解除、光と影 米と37年間対立(1月18日)

米、外交成果アピール イラン制裁 解除へ(1月18日)

イランは経済制裁の解除後、速やかに原油輸出を拡大し市場に全面的に復帰する方針だ。

制裁で輸出量は約110万バレルに落ち込んだ。これを米欧が制裁を科す前の水準に回復させる構えだ。

イランのザンギャネ石油相は「原油輸出は制裁解除直後に日量50万バレル、6カ月後には100万バレル増えるだろう」と重ねて強調した。

8000万人市場に企業が熱視線 インフラなど近代化需要(1月18日)

17日のニューヨーク市場で原油先物相場が続落した。指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、期近物)は時間外取引で一時1バレル28.36ドルをつけ、およそ12年ぶりの安値を更新した。

イランの核開発問題を巡る最終合意の履行が正式に宣言され、石油輸出国機構(OPEC)の協調減産が見込みにくいなかで、改めてイラン産原油の増加が需給の緩みにつながると懸念されている。

NY原油、安値更新 時間外取引で一時28ドル台(1月18日)

■中東安定への一歩となるか?

国際社会にとって目前の脅威は過激派組織「イスラム国」(IS)だ。そのためにはシリア内戦の収拾が必要であり、アサド政権に影響力を持つイランの関与が欠かせない。イランの国際社会復帰はこれに道を開く。

反作用もまた、大きい。スンニ派の盟主、サウジアラビアは米欧とイランの接近を苦々しくみている。シリアやイエメンの内戦はサウジとイランがそれぞれ支援する勢力による代理戦争でもある。

ペルシャ湾の緊張緩和を促すことが国際社会の次の責務である。

イラン制裁解除、光と影 米と37年間対立(1月18日)

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