iPhoneに有機EL採用 パネル産業が変わる

2015/11/26 18:00
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米アップルがスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」の表示装置として有機ELパネルを採用する。スマホの技術をけん引するアップルが有機ELを採用することで、パネル産業の世界市場は勢力図が変化しそうだ。

■18年発売予定の新モデルに搭載

(アップルは)従来の液晶パネルに加え、鮮明な画像と省電力が特長の有機ELを搭載する製品を3年後に発売する計画。
アップルは数年前から有機ELの画質やコストの研究を進め、液晶に比べたメリットが今後、多くなるとの判断に傾いた。
iPhoneは世界出荷が年間2億台を超え、全量に搭載するパネルを確保するのは難しい。派生ブランドを用意するなどして一部のiPhoneで有機ELを採用し、液晶を搭載した製品と並行して販売する案が有力だ。

アップル、iPhoneに有機EL 韓国LG増産投資(11月26日)

■有機ELとは

電圧をかけると、ホタルのように自ら光る有機化合物でできた電子材料。スマートフォン(スマホ)やテレビのディスプレーのほか、照明などに利用されつつある。
液晶テレビに使う液晶パネルの場合、画面の後ろから発光ダイオード(LED)などの光源を点灯させ、その光がカラーフィルターなどを通って画像となる。これに対し、有機ELは、自ら光る材料を使っているので、背面に光源はいらない。
その分、薄く、軽くできる。光源を常時、光らせておく必要がなく、消費電力も抑えられる。

有機ELの長所は、色鮮やかで、素早い動きもくっきり映し出す画質。曲げやすいことも特徴の一つだ。
有機ELってどんなもの? 自ら光る電子材料、光源いらず(3月9日)
有機ELは発光量や省電力の性能が経年劣化しやすいという技術的な課題を抱える。アップルはパネルメーカーやパネル製造装置メーカーと技術面の協議を始めている。今後1年程度で弱点を改善し、安定的に供給を受けられるかを見極める。

アップル、iPhoneに有機EL 韓国LG増産投資(11月26日)

■韓国2社が主力供給元になるか

アップルの通達を受け、韓国LGディスプレーは韓国北西部の坡州(パジュ)にある主力工場に日本円換算で数千億円を投じて有機ELパネルの大規模生産ラインを新設する方針。
これとは別に韓国南部の亀尾(グミ)でも1000億円超を投じて小規模ラインの計画を公表済みだ。

現在、スマホ向けの有機ELパネルを安定的に量産するのは韓国サムスン電子に限られる。
LGはテレビ向け有機ELで量産実績がある。韓国2社は生産技術を蓄積しており、アップル向けの多くを供給する公算が大きい。
アップル、iPhoneに有機EL 韓国LG増産投資(11月26日)

韓国・忠清南道にあるサムスンディスプレーの有機ELパネル工場

韓国・忠清南道にあるサムスンディスプレーの有機ELパネル工場

■日本勢、開発を加速

(iPhone用パネルの)有機ELへの転換が始まれば、経営再建中のシャープ、売上高の3割程度をアップル向けに依存するジャパンディスプレイ両社への影響も避けられない。
アップル、iPhoneに有機EL 韓国LG増産投資(11月26日)

スマホ用で先行するサムスン電子、巨額投資を決断するLGディスプレーの韓国2社を追うのがジャパンディスプレイ(JDI)だ。
有機EL 量産競争 アップル、iPhoneに採用(11月26日)
(JDIは)官民ファンド産業革新機構の主導で日立製作所とソニー、東芝の中小型液晶事業を統合し2012年4月に事業を開始した。14年3月に株式を上場した。
ジャパンディスプレイとは(2014年10月19日)

「有機ELの研究開発費を従来と比べて積み増す」。9日のJDIの決算発表記者会見で、有賀修二社長は今期のコスト増加要因についてこう説明した。アップルの動きを見越し、JDIは布石を打ち始めている。
JDIのほかソニーとパナソニック、産業革新機構が出資するJOLED(東京・千代田)は石川県川北町に来春、有機ELパネルの研究開発拠点を新設する方針。
同社でタブレット向けの技術を手掛ける一方、JDI本体でスマホ向けの技術を開発。両社の成果を合わせて低コストで安定した量産ができる技術の開発を急ぐ考えだ。
スマホ向け液晶パネルが売上高の8割を占めるJDIにとって、現状で量産のメドが立たない有機ELパネルに市場が移行すれば経営基盤を揺るがしかねない。
かつて「液晶の次は液晶」としていたシャープも影響を受けそうだ。
iPhoneへの搭載が始まる18年以降、勢力図は変わるのか。「技術で勝つ」と言い続けてきたJDIの真価が問われる。
有機EL 量産競争 アップル、iPhoneに採用(11月26日)
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