2019年2月19日(火)

東芝、不適切会計問題を読み解く

2015/7/21 18:00
保存
共有
印刷
その他

21日に開いた会見の冒頭、頭を下げる東芝の田中久雄社長(中)。左は室町正志会長(東京都港区)

21日に開いた会見の冒頭、頭を下げる東芝の田中久雄社長(中)。左は室町正志会長(東京都港区)

東芝は21日、田中久雄社長(64)が辞任し、室町正志会長(65)が社長を兼務する人事を発表した。田中社長や前社長の佐々木則夫副会長(66)ら、取締役16人の半数が同日付で辞任し、前々社長の西田厚聡相談役(71)も辞任する。歴代の社長が3人までも辞任するという結果を招いた不適切会計問題についてまとめた。

■利益操作、累計で1500億円超す

不適切会計問題を調べる第三者委員会(委員長=上田広一・元東京高検検事長)は、20日に調査報告書を東芝に提出。次のように厳しく指摘した。

歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として」不適切な会計処理が行われたと断定。「経営トップらを含めた組織的な関与があった」と責任を厳しく指摘した。利益操作は2008年度から14年度の4~12月期まで計1562億円にのぼる。

東芝、組織的に利益操作 歴代3社長辞任へ(7月21日)

■不適切会計招いた「利益至上主義」

(報告書によると)本体の社長らがカンパニートップや子会社社長と面談する「社長月例」では「チャレンジ」と称した収益改善の目標値を設定。とりわけ佐々木副会長が社長を務めた2011、12年度は過大な目標が示されていた。報告書は「各カンパニーのトップらは目標を必達しなければならないというプレッシャーを強く受けた」と指摘した。

これが不適切会計を助長する要因になったようだ。営業努力では不可能な数字を出すために各カンパニーは来期以降の利益を先取りしたり、当期の費用計上を先送り。その反動で次の期はさらに多額の不適切会計に染まるという泥沼に陥った。

東芝に利益至上主義 「チャレンジ」と称する目標値(7月21日)

■「3日で120億円の利益を」 報告書で見えた無茶な要求

佐々木氏は中間決算の最終月末にあたる12年9月27日の社内会議で、パソコン事業部に「残り3日で120億円の営業利益の改善を強く求めた」とした。翌28日には結果を報告するよう求めたという。

損益改善への行き過ぎた要求は、テレビなどの映像事業や電力事業などでもあったようだ。

テレビなどの映像事業は2007年度以降、海外事業の不振が続き、厳しい収益状況に置かれた。

11年度以降は映像関連の幹部は社長らからたびたび厳しく叱責されるようになる。特に13年に入ると、本社経営陣は映像事業の撤退をちらつかせながら「チャレンジ」の達成を強く求めた。

米子会社のウエスチングハウスが手掛けた発電所建設について、田中社長は経費増加による業績へのマイナス影響を回避するために適切な会計処理を行うよう指導しなかった疑いが持たれている。

公表された東芝の第三者委員会の調査報告書

公表された東芝の第三者委員会の調査報告書

「3日で120億円利益出せ」 東芝、上意下達激しく-第三者委報告書(7月21日)

■2トップの不和も背景に

問題の背景には西田厚聡相談役と佐々木則夫副会長のあつれきもある。

佐々木氏の社長時代には、当時会長だった西田相談役からの予算必達を求めるプレッシャーが強かった。西田氏の影響力に対抗するために、部下に利益のかさ上げを事実上求めたとされる。

田中社長が西田氏を後ろ盾にバトンを受けた後も、佐々木氏に対抗する狙いから収益の維持を絶対視していた。佐々木氏の不適切会計処理の問題点を排除するのではなく、結果的にその手法を踏襲する形となった。

背景に2トップの不和 東芝、西田氏に佐々木氏対抗(7月21日)

東芝の歴代社長。(左から)西田厚聡、田中久雄、佐々木則夫の各氏

東芝の歴代社長。(左から)西田厚聡、田中久雄、佐々木則夫の各氏

■迫られる改革

東芝は同業の日立製作所などに比べて財務基盤が弱く、事業再編も遅れ気味だった。そんな弱みが不適切会計を招いたとの指摘もあり、構造改革も急務だ。

東芝は9日「事業構造改革や保有株式の売却を検討している」とのコメントを発表した。保有資産を順次手放し、2000億円規模の現金を用意する考えだ。

懸案となっている資産の筆頭が原子力事業子会社、米ウエスチングハウス(WH)株の一部だ。米社と水面下で交渉したことがあるが、条件が折り合わなかった。経営環境が厳しい原子力事業の株売却は容易でなく、今後は売り先を広げて交渉に臨むとみられる。

このほかの保有株や不動産も売却対象になる。会計問題で低下する信用力を補うため、主要取引銀行には5000億~6000億円の融資枠設定を打診している。

東芝、構造改革出直し 収益安定へ新事業模索(7月10日)

■投資家の信頼裏切る 課徴金の可能性も

不適切会計は東芝のブランドイメージを大きく傷つけただけでなく、投資家の信頼をも裏切った。改めてその責任を問われる場面も出てきそうだ。

証券取引等監視委員会は行政処分として、同社(東芝)に課徴金を課すよう金融庁に勧告する方針だ。経営陣の損失先送りによる5年間の利益修正額は約1600億円にのぼり、投資家に悪影響を及ぼしたと判断した。

20日以降の本格調査と東芝が8月末に予定する決算の訂正報告書の提出を踏まえ、9月中にも課徴金の勧告に踏み切るとみられる。

東芝、課徴金処分へ 監視委が虚偽記載と判断(7月18日)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報