東洋ゴムに激震 免震ゴム偽装問題

東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装問題は、山本卓司社長ら代表取締役3人を含む生え抜きの取締役5人全員が引責辞任する事態に発展した。同社の主力は自動車用タイヤの生産・販売で、建物を地震の揺れから守る免震ゴムは経営多角化の一環で生まれた事業だ。同社をめぐっては、学校などで使う断熱パネルの耐火性能を偽装したことが2007年に問題となり、当時の社長が引責辞任している。2つの偽装は同じ構図との指摘もあり、教訓は生きなかった形だ。今回、社外取締役や社外監査役が経営陣に引責を迫ったとされるが、その背景には経営陣の判断の甘さと変わらぬ企業風土への危機感があった。


そもそも免震ゴムとは?
製品は「高減衰ゴム系積層ゴム支承」(免震ゴム)で、建築物の基礎部分に免震材料として使われている。

地震時のエネルギーを吸収して建物の揺れを少なくする機能があり、品質確保のため、建築基準法は全製品について国交相の認定を受けることを義務付けている。
国交省は認定の要件として、建築物1棟ごとに免震性能を計算し、基準値を1割以上下回ることがないよう求めている。

データ改ざんで「認定」取得
東洋ゴムの開発担当者は納期のプレッシャーから試作品のデータを改ざんしたとされ、少なくとも06~11年に計3回、大臣認定を不正に取得していた。
偽装申告、揺らぐ大臣認定 審査厳格化を検討(6月6日)社外調査チーム、経営陣の甘さ批判
弁護士らで構成する社外調査チームの最終報告書が22日に公表され、経営陣が問題の公表や出荷停止を遅らせていた経緯やデータ改ざんの実態が明かされた。

偽装に関係した人数は4月の中間報告書の段階から増えて合計4人になった。開発部門だけでなく品質保証の担当者1人も含まれていた。顧客からのクレームを避けるため、製品ごとの性能の違いを小さくするよう数値を書き換えていた。
調査チームの小林英明弁護士は経営陣の不適切な対応や企業風土を強く批判した。

性能基準を満たさないか、データがないため性能を判定できない同社の免震ゴムを使った病院やマンション、自治体の庁舎などは全国で154棟に上ることが判明している。免震性能を確保するための交換や改修も大きな課題だ。
07年の断熱パネル偽装、教訓は…
不祥事は今回だけではない。07年には断熱パネルの耐火性能偽装で当時の社長が辞任。13年には米国の価格カルテル事件で約120億円の罰金を米司法省から科された。
このため、ガバナンス強化に向けて外部の「監視の目」を増やしてきた経緯がある。例えば、社外監査役には企業法務に明るく、日本弁護士連合会常務理事の経験もある辰野久夫弁護士らが名を連ねる。今回はそれが一定の役割を果たした。
社外主導で異例の経営刷新 東洋ゴム、代表取締役3人辞任へ(6月19日)代表取締役3人全員が辞任する異例の事態に至ったのは、社外の取締役や監査役が厳しい対応を迫ったためとされる。
耐震ゴムも断熱パネルも、事業規模は主力のタイヤに比べようもない「傍流」の事業。開発などの体制が十分とはいえない多角化分野でひそかに偽装が行われ、経営陣の当事者意識を欠く対応があらわになった。同じ構図の不祥事に「社外の目」は厳しかったというわけだ。
